無意識なうちにレイシストな日本人

 私は今現在、ニュージーランドで日本食のレストランで働きながら暮らしております。コロナ禍以前は日本からの観光客を相手にすることもそれなりにあったわけですが(今現在はもちろん皆無です)、海外旅行に来る日本人によくありがちな、残念な特徴があることを薄々感じておりました。そしてそれが、日本人のレイシズムなどに対する理解の低さの原因にもなっているのではないかとも思っておりました。本稿では、そうした傾向のうち比較的頻繁に見受けられることについて書いております。

 なお、もちろんのこと海外旅行をする日本人全員に当てはまるという話ではなく、こういう傾向があったりするよ、ぐらいの話なのでその辺ご留意いただきながら読んでいただきたいと思います。

いきなり日本語で話しかけてくる

 これが一番多いかと思われます。

 百歩譲って、私たちがスタッフどうしで日本語で会話しているのを聞いたり見たりして確信を持ってそうしているのならまだわかります。が、こちらとしても目の前にいるアジア人と思しきお客さんが日本人かどうかわからない、向こうも同じ状況にあるのにもかかわらず、日本食のレストランであるということと、こちらの顔を見ただけでいきなり日本語で話しかけてくる人は意外と多いです。こちらがとりあえず英語で挨拶をしているのにそうしてくる人も結構いたりします。

 そうした場合、私や他の日本人スタッフが対応していた場合は、まあこれも百歩譲って良いとしたいところですが、こちらの気分としては極端な例えをすると、道端で中国人にいきなり中国語で話しかけられたときと同じ気分になります。

 そういう日本人観光客の人たちはおそらく”海外であろうがなんだろうが日本食レストランでは日本人が働いていて、日本語が通じる”という前提のもと訪れるのだと思いますが、それを前提とすること自体が大きな間違いです。私の働いている場所はたまたま日本人スタッフが多いのですが、もちろん時期によっては日本人でないスタッフが働いていることもありますし、何より他の日本食レストランなどは日本人の方が少ない、またはほぼいないような場所も多いです。そうした日本語のわからないアジア人がスタッフをしている場所でいきなり店員に日本語で話しかけると何が起きるかと言うと、とりあえず話しかけた本人が恥ずかしい思いをします。そして店員はコイツ何言ってんだ、となります。要するに時間の無駄が発生します。

 そしてこの行動の何が問題かというと、先程も述べましたが外見と先入観に囚われている、ということです。見た目で日本人と決めつけてしまっているということと、自分が海外にいるということを忘れようとしていることです。

  東アジア人を外見で確実に見分けられる自信があるのなら問題ないかと思いますが、果たして日本人や中国人や韓国人や台湾人などを顔だけで確実に判断できる人などいるのでしょうか。また絶対日本人だよな、みたいな顔だとしてもその人がニュージーランドで生まれてニュージーランドで育ったために日本語なんかひとつもわからない、などという事情をその外見からどのようにして判断できるでしょうか。これは想像力の欠如から起きる問題であると思います。普段日本でしか暮らしておらず、様々なバックグラウンドを持った様々な人種の人たちと触れ合う機会が少ないと、そのような人たちが現実に存在するということをすぐさま想像できないのではないかと思います。

 そして、どんな事情があって海外旅行に来てまで日本食を食べに来るかは人それぞれかとは思いますが、日本でない英語圏の国にいる以上、使うべき言語は英語です。もし自分の英語に自信が無くてそのような行動を取っているとしたら、自信が無いなりに、まず簡単な英語でそこのスタッフが日本人かどうか訪ねるというワンステップを挟んで、日本人であれば日本語に切り替える、そうでない場合は自分でなんとかするのがスジじゃないでしょうか。

何かと特別扱いしてもらおうとする

 いきなり日本語で話しかけてくるのはまあちょっとイラッとするぐらいだとして、こっちは稀に見る例ではありますがもう相手したくなくなるぐらいイラッとします。

 具体的にどういうことかというと、こちらが日本人だとわかった瞬間にメニューに無いものを聞いてきたり頼もうとしたり、大盛り無料でできないか、とかそういう無茶振りを急にしてくる場合です。百歩譲って、スタッフが日本人かどうか関係なく訪れた店全部でそういうことをしているならまあそういう人なんだと思うことにしようと思います。が、そうじゃないでしょう、きっと。海外で日本人に出会って、なんか日本語も通じるし他の場所では勝手がわからないけどここならわがまま言っても大丈夫だろう、みたいなことでなんだかんだ言うんでしょう。

 こういうことをする人に出会うと、ダメな方の同族意識みたいなのをひしひしと感じます。お前何のために海外旅行してるんだよ、って言ってやりたくなります。個人的には海外旅行って、異文化を生身で体験してそこに暮らす人々の生活を垣間見ながらそれを理解し、自分との差異や共通する部分を認識して楽しむべき部分は楽しむことだと思っているので、こういう自分が威張れる人にしか威張れないような人はそれこそ東武ワールドスクウェアとか東京ドイツ村とかハウステンボスに行って異文化を見た気になったらいいんじゃないでしょうか。海外にあるお店のターゲットは基本的に現地の方々であり、また世界各国からの観光客もある程度の割合で含まれており、日本人観光客はそのうちの微々たる割合に過ぎません。そこで特別扱いする筋合いはありません。

まとめ

 上記以外にも思い当たる部分は様々ありますが、とりあえず上記のようなことをすると、現地の人々に後で笑われたりします。そうして、日本人観光客って結構恥ずかしいことするよね、という評判が立つようになります。

 重要なのは、海外旅行中は常に自分が海外にいるという自覚を持つことです。海外に於いては、日本人は日本人という括りでしかなく、ある日本人が非常識な行いをして、また別の場所で他の日本人がそうした行いを重ねていくと、日本人全体の評判が悪くなっていきます。そうすると、現地の方々はあまり日本人を相手にしたがらなくなります。飲食店のスタッフが英語で何か質問をしているのに、その内容がわからずオーダーを繰り返すだけ、みたいなアホみたいな光景もよく見かけます。"Have here or take away?"という質問に対して、質問の後半しか理解せずに"No"とだけ応えている日本人もよく見かけます。コミニュケーションの取れない人間を相手にするのは、世界中どこであろうが疲れるものです。

 コロナ禍が収まっていざ海外旅行を楽しもうと思っている方は、上記のようなことに気をつけて過ごされるとお互いにストレスを感じずに過ごすことができるかと思います。そのためにもまず、必要最低限のコミニュケーションができる程度の言語力は今のうちに養っておいたほうが良いかと思います。というか、当たり前のことです。かしこ。

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