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「傾聴」という罠

すぐに寄り添う

「お財布が無い。」
「通帳が無い。」
ない、ない、な~い!

「どうしたんですか?」
「一緒に探しましょう。」
な~んて言っても、認知症グループホームでは、入居者個人が金銭を持つことは原則禁止。
通帳も、財布も部屋にあるはずがない。

なので、まず驚く。
「まじでぇ~!」
「探してもないんやぁ。
かなんなぁ。」と。

で、いつか出てくることを他の人も巻き込んで笑いにする。
「その内、きっとどっかから出てくるで。
だってな、探してる時って見つかれへんやんかぁ。
でもな、忘れたころに、ど~でもえぇ時に出てくる時あるやん。」

たいていの人がこの経験をしてるので、他の入居者さんも
「そう、そう。」となる。
で、ジ・エンド( *´艸`)

「うん、うん」と延々と話しを聞く

話しを聞けば聞くほど、情緒不安定。
「もう20分も聴いて…。」なんてこともある。

べったり傍にいて、相手の気がすむまで話しを聴く。
それって、正直つまんない。

なので私は「あ、そうか。」で終わらせる。
「ほな、好きにしたらえぇやん。」
「・・・(ムカァー)!」
追いかけてきても、知らん顔。
そしたら「プイっ」てそっぽ向いて部屋に閉じこもる。
ベランダに行って外を眺めてる。
感情をどうにかしようと一人になる。

「話しを聴いてほしいと思ってるんじゃないかな。」と職員に言われることも。
「じゃぁ、話し聞いてあげたら?」と言うと渋い顔してる。
「怒らせたら、お風呂入ってくれなくなりますよ。」て職員に言われることも。
でも私、どこの施設行っても「入浴拒否」って言われる人の入浴介助ばっかりなんですけど。

で、しばらく一人の時間をすごした人は、5分もしない内にやってくる。
「スッキリした?」と声をかけると、「うん」とうなずく。

相手の方が上手(うわて)なんです

「傾聴しなきゃ」って真面目な介護職員は思うみたい。
でもさ、相手の方が私たちを見てる時間、長いんです。
よ~く観察されてるんです。
言葉や態度に出さないだけで。

彼らにとったら「ここで生きるために、どうしたらいいか。」っていう逃げ場所が無い状態。
介護職員は勤務が終われば別の社会へ行ける。
休んだり辞めることだってできる。
でも入居している人たちは、そうじゃない。

だから、よく見てるし聴いてる。
「この人は、どうしたら(少しでも)自分の思い通りになるんだろう。」って。
「相互理解」は介護職員なんかより、ずうぅと上手(うわて)♫

#未来のためにできること

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