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『SES企業お断り』の転職者様へ。自社開発のデメリットも知っておこう。


現SES営業・採用担当で元自社製品開発エンジニアのみねむーです。
転職DBを日々見ていると、”自己PR”等に以下の様な事を書かれている方を見かけます。

◆『携わったシステムの行く末を見届けられないまま他案件にアサインされることに不満を持っています』
◆『プロジェクトごとにメンバーが変わる事にストレスを感じています』
◆『腰を落ち着けて自社開発できる会社に行きたいと思います』
◆『SES事業を行う会社には将来性が見えません』
◆『SES企業からのスカウトはお断りしております』

総じて、これらの記述の後に書かれているワードは
【自社開発(自社製品開発)の会社を希望します】です。
特に、20代の方に多い印象を受けます。

そのお気持ち、よく分かります。私も20代後半で通ってきた道ですから。

このnoteでは【脱・SES!】【脱・客先常駐!】だけで転職しようとしている方に向けて、「まぁまぁ、ちょっと経験者の話も聞きなさいよ」という思いで綴ります。ご自身のキャリアを考える一助にして頂ければ幸いです。

SESのデメリットは自社開発で解決できる?

※長文となってしまいましたので、途中で飽きた方や結論だけ見たい方は【まとめ】までスクロールしてください^^;

私は、新卒から5年ほどSESで働き、自社製品開発のアプリケーションベンダに転職しました。B2Cをやりたいと思っていましたが、B2Bの事業を担当することになりました(B2B2Cだったので、まぁいっか、と)
過去のキャリアの中では最長の7年間、銀行向けプロダクトを担当させて頂きました。ここで得た経験が私のベースとなっているのは事実です。

ところで、SESのデメリットって何でしょう?私の経験と、転職者の皆さんが思われるものと合わせて考えると、以下の様なものかなと思います。

①顧客ありきのビジネス、顧客の状況に左右される
②帰属意識の欠如
③マージンビジネスなので給料が安い
④プロジェクトごとにメンバーが変わるストレス
⑤プロジェクトごとに顧客が変わり、勤務地が変わる不便さ
⑥身に着けたいスキルが身につかない
⑦上流工程等、経験したい工程に関われない

ひとつひとつ、コメントしていきます。

①顧客ありきのビジネス、顧客の状況に左右される

そもそも「顧客がいないビジネス」も「顧客の影響を受けないビジネス」も存在しないのですが、何故か【脱・SES!】すると顧客の影響を受けないと思いこむ方がいらっしゃいます。

SES企業のビジネスはB2Bですので、顧客は企業です。”プロジェクトが凍結した”とか”予算が削られた”とかで、エンジニアの契約が終了することはあります。ですが、それはプライムベンダーも同じ。むしろエンドユーザの方が容赦ないこともあります。

自社サービス・アプリならば顧客に左右されることはない・・・そんなわけないでしょう。B2Bのサービスならば、SESのB2Bと同じことは起こり得ます。B2Cならば、相手はコンシューマですから、景気に影響を受けるのはB2Bと同じですし、競合のより良いサービスが登場すれば乗り換えられることもあります。

実際に世の中に無かった画期的なサービスをローンチした!と話題になった企業が、様々な要因から伸びず、大量解雇を行ったケースもあります。
あらゆるサービス・アプリにはライフサイクルと競合の存在があります。いずれにせよ、あらゆるサービス・アプリは顧客の意思決定に左右されるということは念頭に置くべきです。


②帰属意識の欠如

これは本人の意識の問題が大きな要因ではないでしょうか。

◆「会社の看板を背負ってるんだ」
◆「会社の顔として客先に出向いているんだ」
◆「より良い会社作りのために今は稼ごう・顧客と信頼関係を作ろう」

こういう意識を持っている人には、【帰属意識の欠如】など起こりえないと思います。

同時に、矛盾するようですが、【帰属意識を持つことってそんなに重要?】とも思います。企業帰属意識は日本特有の考え方です。
実際に、外資系IT企業の出身者とお話しすると「みねむーさんは、いつまで今の会社にいらっしゃいます?」などと聞かれることがあります。
企業は属するものではなく、【お互いに利があって協力し合っている】という考え方をされているようです(だからいくつかの外資系コンサルでは最上位役職を【パートナー】って呼ぶのかな、と思ったり)

【自社を誇れない】という方もいると思います。ですが、それは【SESだから誇れない】のではなく、その会社特有の問題であるように思うのです。

帰属意識の問題でもう1つ言われることが【仲間意識】の問題です。

◆「同じ会社の人たちなのに、知らない人が多い」
◆「会った事が無い人が多い」

ところで、あなたにとっての【仲間】ってどんな定義ですか?

自社開発の企業であっても、協力会社としてSES企業のエンジニアや、フリーランスエンジニアをアサインする事は多々あります。
これらの人は【仲間】ではないのでしょうか。【仲間】だというならば、今あなたがSESエンジニアとしてアサインしている顧客のプロパーや他社もまた、【仲間】として見てくれていると思いますよ、と言いたいです。

私は【一緒に目的を達成する】方を【仲間】と考えています。【仲間】を持つ主体を【自分】とするのか【会社】とするのか、どちらでしょうか。

③マージンビジネスなので給料が安い

これは【会社によっては、SESエンジニアの方が高い】がアンサーです。私が知るある企業では、平均年収1,000万円オーバーの会社もあります。
SESで給与が高くなる企業、低くなる企業の傾向を以下に挙げます(あくまで経験則、肌感による推測です)

▽給与が高い会社
◆役員が少ない(社長以外にいない)
◆営業、バックオフィスの全社員比率が低い
◆オフィス、福利厚生にお金をかけていない
◆エンジニア達の技術レベルやビジネススキルが高い
◆採用は厳選する
給与が低い会社
◆役員が多い(社長+複数名)
◆営業、バックオフィスの全社員比率が高い
◆オフィス、福利厚生にお金をかけていない
◆エンジニア達の技術レベル・ビジネススキルが低い、或いは偏っている
◆新卒・未経験を含めて大量採用する

【社長がエンジニア】の様な会社は、【求める技術レベルは高いが、エンジニアへの報酬は重要視する】傾向が強いことが多いようです。

バックオフィスもエンジニア給与に影響をえます。SES事業の場合、エンジニア一人一人の単価によって計上された売上のうち、バックオフィスの給与に回る分が多くなればなるほど、エンジニアへの報酬は低くなります。

一方、自社製品開発の会社では、バックオフィスがSES企業よりも厚い事が考えられます。セールス、カスタマーサポート、広報、企画など・・・自社製品が売れなければ会社が成り立ちません。故に売上のうちエンジニアの人件費に回る比率は低くなります。

結局どれだけサービス・アプリが売れているか?に左右されるということです。SESは実力があり、それが認められれば給与に影響しますが、自社製品開発の場合は、エンジニアの実力は関係ありません。

つまり、異なるビジネスモデルである以上【自社製品開発のエンジニアより、SESエンジニアの方がは給与が低い】とは言い切れないのです。
※実際に、弊社のSESエンジニアより、顧客である自社製品開発ベンダーの、同年代のプロパーの方が給与が低いというケースも事実としてあります。

④プロジェクトごとにメンバーが変わるストレス

◆せっかく素晴らしい上司・先輩に巡り合えたのに数か月でそれぞれ違うプロジェクトに異動になってしまった・・・
◆後輩を指導し、成長を実感している途上で別プロジェクトに異動することになってしまった・・・

こういったケースは確かに、SESならではの悩みだと思います。
一方で【メンバーが変わらないリスク】も考えてみて欲しいと思います。

◆ハラスメント気味の上司のチーム・部署に配属された
◆不仲の同僚と同じプロジェクトを進めている

この様なケースがあなたの身に起きた時【違うチーム・部署に行きたい!(行って欲しい!)】って考えませんか?
大手企業であれば、属人化を避けるためのローテーションによる異動はあると思います。しかし中小企業や、スタートアップだったらどうでしょう?

必ずしも【メンバーが頻繁に変わることがデメリット】とは言い切れないのではないのでしょうか

実際に、私の過去の勤め先では、近年になってメンタルを悪くし、休職せざるを得なくなった方もいました。
「そういう人はSES企業でもいるでしょ!」
と言えばそうなのですが、プロジェクトから離脱させたとき、ストレス元の人物が同じ社内にいるのと、いないのとでは大きな差があると思います。

また、様々な人たちと一緒に仕事をすることで、多様な考え方やノウハウを吸収できることもあります。更に人脈が形成でき、それこそ自社の【仲間】を増やすことにもなります。

⑤プロジェクトごとに顧客が変わり、勤務地が変わる不便さ

これまでの①~④については、【会社による】【考え方次第】なところがあると思います。しかしこの⑤については、【会社による】【考え方次第】が全く適用されないデメリットであると考えています。

長期に渡っての常駐ならば関係ありませんが、数か月~1年程度で常駐先が変わる方も多くいらっしゃいます。私の知っている元SESエンジニアには、横浜から足柄まで通勤した方や、埼玉から川崎まで通勤した方もいらっしゃいました。

このデメリットを【勤務地が変わって心機一転ですね】とか、考え方どうこうでは言えないものがあると考えています。住宅を購入する場合もあるでしょうし、ご家族にも少なからず影響があるでしょう。

もちろん、自社開発企業も移転の可能性などがありますが、1~2年程度で移転するような企業はいないでしょう。
弊社では、お住まいと常駐先の移動距離を考慮し、アサインを見送るケースがありますが、そんなことを全く考えもしないSIerやSES企業は多いと思います。

⑥身に着けたいスキルが身につかない

◆「Rubyやりたいです!」
◆「Pythonやりたいです!」
◆「Goやりたいです!」

この様な【プログラム言語や開発環境、IT技術を指定する】方も転職者の中にはいらっしゃいます。こういった希望が通りやすいのは、自社製品開発の企業であることは否めません。
【このプログラム言語の開発がしたいんだ!】という確固たる意志を持つ方は、SESをやめた方が良いでしょう。

でも一旦考えてみてください。

あなたがITエンジニアを続けるのは、そのプログラム言語を使った開発がしたいからですか?

プログラム言語はあくまでも【プログラムを作るための手段】です。手段と目的をはき違えていないでしょうか
プログラム言語の選定は、作ろうとするアプリケーションの目的、環境等を総合的に判断し、適したものを選びます。
【このプログラム言語を使いたいから、こういうアプリを作ろう!】というケースはまず無いでしょう。プログラム言語を限定することで、携われるサービス・アプリを絞るのは、非常にもったいないと思います。

SESエンジニアは、プログラム言語は選べないかもしれません。
しかし、多種多様なプログラム言語、ミドルウェア、パッケージソフト等に触れる機会を作れます。場合によっては、アプリケーション開発のみならず、サーバ構築等の経験も積めるでしょう。AWSとAzureとOracle Cloudの全てを経験する・・・そういう可能性もあります(実際に弊社でもAWSとOracle Cloudの構築や移行プロジェクトを立て続けに経験したエンジニアがいたりします)

毎年、フルスタックエンジニアを目指しています!という方がSES企業を選んで応募してくることも、事実としてあります。

余談として、自社製品を開発する企業には、【その企業特有のプログラム言語や技術】【その企業でしか通用しない技術】が存在することも覚えておいてください。

⑦上流工程等、経験したい工程に関われない

【こういうサービスを作ろう!】という企画レベルまで考えると、SES企業は手が出せません。顧客やコンサルタント、プライムベンダーの担当領域のためです。その点、自社製品開発の企業は、自社で企画をします。

しかし、このフェーズにエンジニアが関わるのか?は懐疑的です。

私がかつて務めた企業では、企画は企画職で行い、要件定義を一緒に進める形を取りました。企画段階で関われるエンジニアは、部門のトップレベルくらいでしょう。あるいはスタートアップ企業くらいでしょうか。

要件定義フェーズ以降は、というと、これはSES企業でも関わるケースはあります。

SIの世界では、多くのプロジェクトで人手が足りていません。有識者は重宝され、セカンダリ・サーダリのSES企業であっても要件定義フェーズから入ることがあります。また、同時に、サービスイン作業も任されることだってあります(大抵サービスをスタートさせる時は、間違いがあっては大変なことになるので複数名で対応します)

SESだから上流工程やサービスインに関われない・・・という事にはならないのです。エンジニアの実力とクライアントの状況次第で、あらゆる工程に参画することは可能と考えています。

SESのデメリット?まとめ

①顧客ありきのビジネス、顧客の状況に左右される
⇒SESだけのデメリットではない。影響度合いは自社製品開発の方が大きいことも!

②帰属意識の欠如
⇒本人の意識次第かつ、そもそもそんなに必要ですか?

③マージンビジネスなので給料が安い
⇒SESの方が給料が高いこともある。会社の役員数やバックオフィス比率なども考慮してみよう!

④プロジェクトごとにメンバーが変わるストレス
⇒場合によってはメリットにもなる。上司・メンバーが変わらないことがストレスになる場合も!

⑤プロジェクトごとに顧客が変わり、勤務地が変わる不便さ
⇒SES最大のデメリット。自社開発企業は移転が無い限り勤務地は変わらない。

⑥身に着けたいスキルが身につかない
⇒何のためにそのスキルが必要か?に立ち返ることが大事!多様なスキルを身につけた方が良いことも!

⑦上流工程等、経験したい工程に関われない
⇒SESだからこそ、あらゆる工程に関われることも!

【脱・SES!】すべき人

私が考える【脱・SES!】して自社開発の世界に飛び込むべき人の特徴は以下の様な方です。

1.カルチャーがマッチする企業がある
2.給与が低くてもやりたい仕事がある
3.どんな人とでも一緒にやっていける自信がある
4.その企業に行くことで自身の目的を果たすことができる
5.職人気質ではない・コミュ力がある

COVID-19の影響でIT業界の中には、積極採用を継続する企業と、様子見をする企業で二極化しました。「積極採用する企業の方が好調ってことじゃん!安定しているってことじゃん!」と考えるのは早計です。

リーマンショックの際には、翌年度に影響が出ました。SIerやSES企業がこのような事態に弱いのは事実ですが、自社開発なら強いかと言えばそうでもありません。今年、うまく転職が成功したからと言って、来年もその会社でご自身の希望通りに働き続けられるかどうかは別の話なのです。

【その企業のビジネスのターゲットは誰か?】
【その企業のビジネスが発展するイメージはできているか?】

を考え、そして上記の5点を参考にして頂き、良い転職をされることを願っています。


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