feiyong mumei

なんでもない日常を綴っていきます。主に福岡。

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〈はじめに〉思い出を記録してこなかったことへの後悔

 私は若い頃から思い出のものを残すことに興味がなく、写真はほとんど手元に残っていない。スマートフォンで手軽に綺麗な写真を撮れるようになっても、めったに撮ることはなく、飲食店で料理にスマホを向ける友人がいても、なぜ撮るのか理解できなかった。日記なども、書き終わっては未練なく捨ててしまう。  しかし、そんな私も40代後半になり、「写真を撮っておけば良かった」「なぜ、あの町のことをもっと知ろうと思わなかったのだろう」などと後悔するようになった。  特に後悔しているのは、中国に住んで

    • 2024年1月10日(水)『PERFECT DAYS』を観た

      先週のことだけど、久しぶりに映画館で映画を観た。 役所広司さんの『PERFECT DAYS』だ。 役所さん演じる平山は、東京の公衆トイレを掃除する男性。 毎朝、日の昇る前から近所の人が道を掃く竹箒の音で目覚め、顔を洗い、髭を整え、アパートの前にある自動販売機で缶コーヒーを買って車に乗り、仕事へ行く。 車中で楽しむカセットテープの音楽。仕事終わりの銭湯。夜は読書をしながら眠りにつく。 週末に出かける小料理屋には、好きなママがいる。 ほとんどセリフはなく、独りの豊かさをずっと

      • 2023年8月4日(金)19時04分の大濠公園

         今夜は夫が会食に出かけているので、夜に散歩に出た。すると、この大濠公園。最近の美しさ、どういうこと!?!?!? トンボがたくさん飛び回っていて、でも人にはぶつからないので不思議だった。  父に報告事があって連絡していたところ、わざわざ言わなくてもいいようなイラっとさせるだけの返信がきた。悪気はないのだろう。傷つけるほどのコメントでもない。でも、散歩中しばらく嫌な気分になってしまった。  私も誰かにこんなことをしないように気をつけよう。帰宅してもビールを美味しく味わえなかった

        • 2023年8月3日(木)12時09分の鳥飼

           近所のカフェで仕事の作業をしようと出かけて、カフェのある場所へ階段を上りながら見上げた空が鮮やかだった。この時、気温36度。湿度はそれほど高くなくて、不快でもなかった。  カフェはお客さんも少なくて、作業がはかどった。 自宅にいると、あれやこれやと気になって、仕事も家事も捗らない。理想ばかりに突っ走る自分の焦燥感に駆られたあげく、すべてが面倒になって寝てしまうというのが、いつもの落ちだ。実は、中国に住んでいた時もこんな調子で、ちっとも中国語を勉強しなかった。  自宅をカ

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        〈はじめに〉思い出を記録してこなかったことへの後悔

          2023年8月1日(火)8時47分の大濠公園

           茶道教室の場所の予約をしに行く際、歩きながら見た水面があまりにも綺麗だったので、急いでいたけど、写真を撮った。刻々と水の色は変わっていく。こういう景色に出会えるのは幸運だ。  あまり冴えない日々だけれど、できることからストレッチやトレーニングを始めた。筋肉痛はちょっと嬉しいし、少しずつ柔軟性がアップしているのも嬉しい。

          2023年8月1日(火)8時47分の大濠公園

          2023年6月17日(土)18時02分の大濠公園日本庭園

           この日は茶道の稽古だった。仕事に追われている最中、しかも3週間ぶりの稽古で、お点前の手順も作法も忘れまくっていた。いつもここへ稽古に来ると、日常のあれこれを忘れて過ごせるのに、この日は全然ダメだった。それほど心が乱れていた。  そして、今日ようやく仕事が落ち着いた。やっと心配事のない生活に戻る。  ひとつの仕事は大きな病院のリーフレット制作だった。看護部長に取材をし、原稿を提案し、打合せを重ねた。いつも穏やかで、方針も判断もわかりやすく伝えてくれて、ただでさえ看護師とい

          2023年6月17日(土)18時02分の大濠公園日本庭園

          2023年5月17日(水)16時00分の薬院

           最近、気づいたことがある。自分が感じた印象と現実にギャップがあるようなのだ。取材の仕事で、どうしても話が弾まない(と思った)人がいた。私をよく思っていないのだろうと思い込んだ。取材が終わってからも「ちゃんと話を聞き取れたのだろうか」と落ち込んだ。でも、録音した音声データを聞き直してみると、その人は、とても感じよく話してくれているのだ。何度も笑いながら、一生懸命話そうとしてくれているのが聞き取れた。  私はなぜ、この人の善意や好意を受け取れなかったのだろう。残念だし、失礼だ

          2023年5月17日(水)16時00分の薬院

          2023年4月13日(木)18時3分の近所の猫

           夕食にインドカレーを食べようと外へ出たところ、近所の猫が塀の上にいるのを見つけた。いつも同じお店でごはんをもらっている地域猫。お店の前でごはん待ちをしている姿が近所で有名だ。  なかなかの老猫なので、高い塀の上にいるのは珍しいと思ってカメラを向けた。全然気づかない。スマホのカメラの「カシャ」音でようやく振り向き、私の顔を見て「にゃ」と鳴いた。  この猫に会って7年になる。目が合うたびに鳴くので、彼(彼女?)の口の中をいつも真正面から見ている気がする。一体なんと鳴いている

          2023年4月13日(木)18時3分の近所の猫

          津軽のこと

           2018年12月に母方の祖父が90代で亡くなった。祖父の家は津軽で代々続くりんご農家で、その家業を守り抜いた祖父は、ただただ穏やかで優しい人だった。  その1年ほど前から私は心身の調子を崩し、うっすらと「死んでしまいたい」と思いながら暮らしていた。医師によれば抑うつ状態だということで、占いの類にもたびたび頼ってしまった。  祖父がもう長くないかもしれないと言われていた頃、「津軽に行くといいですよ」と言ったのは、ある霊能者だ。  ゆかりのある土地のものにふれたり、食べた

          津軽のこと

          2023年4月3日(月)18時29分の大濠公園

           夕食の支度をする気力がなくて、仕事から帰ってきた夫と外食に出かけた。「せめてもの運動に」と大濠公園を歩いてから店へ行く。  マジックアワーだ。水面がブルーとグレーに分かれていて、とても綺麗だったのだが、目で見たようにはスマホのカメラには写らない。  例えばプロが撮った写真には、その人の「いいな、と思った瞬間」が写っていると思う。私もその瞬間を残したいのに、なんだか違う。「肉眼に近いレンズがあるんだよ」と夫が教えてくれた。

          2023年4月3日(月)18時29分の大濠公園

          2023年4月1日(土)の熊本市現代美術館「坂口恭平日記」

           4月1日。朝から快晴の土曜日。昼前から夫と一緒に熊本へ行った。目的は、熊本市現代美術館の「坂口恭平日記」。この展覧会に行くのはすでに2度目で、今日は坂口恭平さんと前野健太さんのライブがあるということで再び訪れた。  ちなみに私は、坂口さんも前野さんも、いずれの音楽活動にも詳しくはない。昨年末、ひょんなことから坂口恭平さんご本人のお話を聞く機会に恵まれ、それから猛烈にファンになってしまった者である。    坂口恭平さんのパステル画は、見るたびに「走馬灯に出てくる光景みたいだ」

          2023年4月1日(土)の熊本市現代美術館「坂口恭平日記」

          深圳から香港へ遊びに行った話②

           香港は急な坂道が多く、その街のあちらこちらに魅力的な路面店があった。夫は骨董が好きなので、古い陶磁器を扱う店を見つけると、英語だか中国語だか、とにかく片言の外国語で店主と話しこみ、何枚かの皿を購入した。私は骨董の店が苦手なので、その間、近くをぶらぶらして過ごした。  浮かれた私たち夫婦は、香港の記念にとお揃いのボールペンを買った。たぶん1本100円くらいの。中年夫婦とは思えないささやかさ(笑)。私たちはまだ新婚だった。  ノープランの旅ながら、「せっかくだから特別なこと

          深圳から香港へ遊びに行った話②

          深圳から香港へ遊びに行った話①

           夫の仕事の関係で、深圳で過ごすこともあり、せっかくだからと香港まで足をのばした。香港で一泊したかったけれど、ホテルの部屋は狭く、そして宿泊料は高かった。なので、深圳のシェラトンに前泊して、朝早く香港へ向かうことにした。ひさしぶりのハイクラスホテルで、その清潔感や洗練されたサービスにふれ、夫と共に感激した。  そして翌朝、深圳から香港へ。どうやって行ったのだか夫まかせだったので全くわかっていないのだが、たぶん、福田口岸だったと思う。とにかく大混雑とスタッフの怒号の中でイミグレ

          深圳から香港へ遊びに行った話①

          蘇州の思い出③

           蘇州にも、スターバックスコーヒーの店舗がたくさんあった。中国語が話せない私にとって英語のメニューはありがたかったし、店員さんの接客もスタバらしく、やや親切だった。なんとか指差しで注文して、受け取る時にはちょっと緊張したが、何度も店舗を利用した。  当時、日本から仕事を依頼してくれる人が何人かいて、ノートPCを広げてスタバで仕事をした。とても心が休まる時間だった。仕事量はあまりなかったけれど、いつも一人ぼっちだった私は日本の仕事とつながっていることで救われ、また日本でも馴染

          蘇州の思い出③

          2023年2月23日(祝)15時29分の宮若市

           夫と福岡県宮若市にあるギャラリーに行った。宮若市に行くのはたぶん初めて。ギャラリーにはクリーム色の猫がいて、客が来るたびに体を寄せて挨拶していた(郵便の配達員さんにも)。そのギャラリーがある古民家の屋根裏で生まれた猫だという。久しぶりに猫にさわった。可愛かった。川の土手には菜の花が咲いていて、春はもうすぐそこに来ているのを感じた。  帰りのバスで電動車椅子の男性が乗ってきて、バス運転手の女性が、乗り降りを手伝っていた。力仕事だった。若い男性などは手伝いに立てばいいのにと思

          2023年2月23日(祝)15時29分の宮若市

          蘇州の思い出②

           私の住んでいた街にはほとんど日本人がいなかったので、夫が仕事に行っている平日はいつも一人で過ごしていた。はじめは乗り物に一人で乗れず、歩いて買い物に出かけていたが、しばらくするとICカードを使えるようになって、バスや地下鉄で移動できるようになった。  バスの運賃は、ほとんど何処まで乗っても一律で、日本円にして10円とか20円とかだったと思う。目的を持たず、知らない行き先のバスに乗って出かけたこともあった。スマートフォンさえあれば帰れなくなることもなく、暮らしながらにして、毎

          蘇州の思い出②