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深圳から香港へ遊びに行った話②

「深圳から香港へ遊びに行った話①」のつづき。

 香港は急な坂道が多く、その街のあちらこちらに魅力的な路面店があった。夫は骨董が好きなので、古い陶磁器を扱う店を見つけると、英語だか中国語だか、とにかく片言の外国語で店主と話しこみ、何枚かの皿を購入した。私は骨董の店が苦手なので、その間、近くをぶらぶらして過ごした。

 浮かれた私たち夫婦は、香港の記念にとお揃いのボールペンを買った。たぶん1本100円くらいの。中年夫婦とは思えないささやかさ(笑)。私たちはまだ新婚だった。

香港で記念に買ったボールペン。

 ノープランの旅ながら、「せっかくだから特別なことを」と夕食はホテルのイタリアンレストランに入った。が、席についてから帰りの電車の時刻が迫っていることに気づき、急いで料理を出してもらうことになってしまった。夫とふたり、親切なサービスマンに恐縮し、慣れないアルコールを飲み、緊張しながら食事をしたのも微笑ましい思い出だ。

 香港については、地名も何ひとつ覚えていない。
でも、幸せな思い出のように思われるのは、夫との旅だったからにほかならない。ガイド本も持たず、思いつきで歩き回った一日。共に焦り、緊張し、心を躍らせた思い出。香港を思うと、あの頃の夫の愛しさがよみがえる。

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