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(連載小説)パーク〜小さなお話6

公園からの帰り道
滅多に寄らない小さなスーパーで
適当に選んだお弁当。

おカズとご飯が半々の量の
ごく普通のお弁当を前に
私は激しい後悔に襲われた。
それは、さっきから全くお弁当に
手を付ける気にもなれない程に。

小さな公園の帰り道で
満たされた気持ちは
まるでウソのように色を変えた。

原因は至極シンプル。

不覚にもレジでお箸を貰ってしまい
いつもは断るのに(基本家で食べるので不要)
本当に何の気なしに
あっ、はい、、要ります。と
言ったそばから激しく後悔。

すぐさまに
割り箸から紐付けされて 
ままよと現れた、苦い記憶。

本当は甘くてルンルンだったはずの
過ぎた恋、遠く飛ばしたはずなのに、、。

せめて割り箸が
コンビニとかの透明の袋のだったら
良かったんだ。

立ち寄ったスーパーは昔ながらの
紙の仕様の割り箸袋で
お弁当と一緒にテーブルの上に並べ
そうして、じっと見据えて動けない。

紙の箸袋は駄目だ。
もう、これはトリガーだ。

思い出される閉じた箱
切なく開く、不本意なままに。

いつも外食のたび、折り紙のように
箸袋で何かしら形作り
それは綺麗に折れた箸置きだったり
高度な技術を要するまでになった
箸袋で作るウサギだったり鶴だったり

外食のたび
私より食事を終えるのが少し早く
目の前でちまちまと箸袋で遊びを始める
少し、というかかなり風変わりな
私の恋人、過去に無邪気に笑う人。

初めは、食事の遅い私を待つ間
そうしていつしか私の気を惹く為に
(私が子供のように喜ぶと思ったのかは
定かでないが)

紙の箸袋で工作もどきをする彼を
不思議な人だとただ眺めていた。

全ての事にマイペースな彼
きっと私は我慢していた。

幼子のように無邪気と捉え
それすらも魅力と思えていたはずの

それは、全然何でもない日だったのに
ちまちまと箸袋を折る彼の姿が
全ての嫌だった部分とピタリと
重なってしまった、あの日。

確か何か珍しく真剣な話をしていたと思う。

優柔不断な彼は
とかく判断が遅い。

言葉に詰まり、悩む様子重い空気
茶化して和ませようとしたんだと思う。

うん、そうだよね、そうだよねぇ、、。
え~と、うん、そうその、、。

刻、遡ってんの?超えてんの!?
と錯覚するぐらい長考の末
彼の口から続いて出たのは言葉ではなく
うじうじしながら動かしていた指先で
習慣のように折ってしまっていた
箸袋の何か、オブジェ的なもの。

うん、まぁ、、えっと。
あ、、見て!出来た。

再び言うが、和ませようとしたんだと
いや、しかし場の空気を読めなさ過ぎる
逆効果な彼の不器用さは
私の悲鳴のような怒りを生んで

いつも肝心な事、届かない
目の前に居るはずの彼の
何も分からなくなってしまった。 

もうさぁ、何なの?
何なんだろうな〜、いつもいつも。
本当ゴメン、もう色々分かんない、、。

別れよう、ウチら。

紙の箸袋に罪は無く
無邪気で無頓着な彼にも
ひょっとしてそんなに非は無くて

でも、積もり積もった
ヨレヨレのしょうもない出来事たちが
束になって、塊になって
心、重く沈む海底(うなぞこ)
息継ぎをしたくてもがき
顔、浮かべた水面(みなも)

全てを押し流すように
終わりにしたくなったんだ。

一体どちらが悪いのか
知らなくていた、閉ざしていた
果たして悪いのは
私だろうか?彼だったのか?

苦い気持ち込み上げて
何の罪もない箸袋から、こんなにも
哀しい記憶蘇る。

いつもの小さな公園の
白いボール、華麗に描く様を
思い描いても拭い切れないなんて

帰り道の弾むような気持ち、返して。

滅多に行かないあのスーパーに
何で寄ってしまったんだろう。

後悔と共にじわじわと
脳裏に浮かんだ、情けない彼の顔
嫌いになって別れたはずの
なのに
なんて眩しい顔してくれてんの!?

7に続く。


































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