【ゲームレビュー】神様を描かないことで信仰を描く「ラジィ 古の伝説」
PS4「ラジィ 古の伝説」をクリア!
開発会社はインドのプネーが拠点で、インドの伝承や神話を世界に知ってもらいたいとある。なのに神様が登場しない。このゲームはどういうことなんだろう。
舞台は中世インド。弟を悪魔にさらわれた女性ラジィが、「ヴィシュヌ」「ドゥルガー」「シヴァ」神からさずかった武器で戦う。
カメラの視点は高めで、ずっと主人公を見守る神々の会話が流れ、インドの観光地にある壁絵や切り絵、彫刻によって神様は描かれてはいる。
ずっと神を意識させる演出にしながら、姿を見せない。武器やアイテムは直接渡されるのではなく「お慈悲」の形で置かれている。(武器に特殊効果を宿らせる「お慈悲スキルツリー」のわかりづらさは、全アクションゲームの中でも有数なのでぜひ見て困ってほしい。)
不勉強で的外れなことを言ってるかもしれんが、直接神の姿を描くのはよくない、ということだろうか。そのかわり、絵画の前に立つとヴィシュヌ神が全部解説してくれる。
プレイステーション版では神々の解説を飛ばさずに全部聞くとトロフィーを獲得できる。作り手が、敵を倒すよりそっちが重要と考えているということだ。
美しいビジュアルと音楽、そして、ほかに似たものがないところが美点。
ハスの葉を飛び移るジャンプアクション、クジャクの恩返しイベント、巨大な仏像、きらきら光る砂の粒子まで表現した砂漠。美しい場面が続く。
最初は登場人物が英語をしゃべるのが、ハリウッド映画の日本みたいなウソッぽさで物足りないなあと思ったけど、そこは広く売るための判断なのだろう。
ボスの数は少ないけどインパクトはある。「臓器からすまし汁を作ってやる」は2021年ベスト罵りワード。断食でもしてなさい、の返しもいい。
「食ってやる!」だとありがちな脅し文句にすぎないけど、調理法が決まってるのか! 人を食ってきたから具体的な料理名がすぐ出てくるのかもしれない。
ラジィは弟を追って、悪霊を退け、崩れ落ちる崖っぷちをトゥームレイダーばりにかけぬける。
見守る神々の会話も聞こえるけど、いちばん助けが必要そうなボスとの死闘になると神々が無口になる。
それでもラジィの信仰はゆるがない。ピンチのときに助けてくれなかったから神様なんかいないとは思わない。信仰が揺るがない。
これ以上は絶対進めない、詰みます!というところまで行って、弟の名を叫んでひざを付いてあきらめかけたところで、神様のお慈悲に気づく。
ゲームは気軽に神や悪魔を出してきた。
「回復の泉」の前に立つと天使が出てくるし、魔法を詠唱するとイフリートとかハデスとかが、ウーバーイーツより早く駆けつけてくれる。シヴァ神だってファイナルファンタジーの常連で、敵全体に冷気ダメージを与えて帰っていった。
だけど、このゲームは現実と同じで、見えるものは悪いものばかりでも、善の神の存在を信じて進まないといけない。神様の姿が見えないことで、現実の信仰のかたちに近くなっている。