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【読書記録】屋台もない。うどんもない。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に出てくる豆腐が気になる!

生きた動物を飼うことがステータスになっている1990年代の未来。
人間のふりをした高性能アンドロイドを排除して賞金でペットを飼おう、あわよくば馬のような大型の生き物を飼いたいと願うバウンティハンター、リック。

彼が持っている機械は、ウソ発見器の進化版のようなもので、相手の顔に器具をつけて、いくつかの質問をして本物の人間かどうかを識別できる。
しかし、新型アンドロイドはその機械で判別できるかどうかも不明。前任の賞金稼ぎは見抜けずに撃たれてしまった。


その一方で、ひと気のないアパートでひとりぼっちで生きてきたイジドアというもうひとりの登場人物がいる。逃走してきたアンドロイドと仲良くしたくて、とっておきの天然食品をプレゼントして、人工生命たちと交流していく。

アクションと駆け引きで楽しめるリックとは対照的に、イジドアのサイドは孤独で、こちらのほうが2000年以降を予言している。
人間社会では役立たずの「ピンボケ」評価を受けた彼が、同じ建物のテレビ番組の音を聞いて、誰かが引っ越してきたんだ、友達ができるかもしれない、ひとりぼっちから抜け出せるかも、と喜ぶいじらしさ。

2020年代にも、生命がなくてもプログラミングどうりに反応してくれるキャラクターや、漫画に描かれたインクでしかない人に救われる人はいる。そこに命があることを望んでない。カードに描かれた絵でもいい。
イジドアを孤独から救ってくれた、命のないものたちを奪いに賞金稼ぎは足どりを追ってくる。


気になったのが、イジドアがふるまう料理の中に「豆腐」があったこと。
映画版「ブレードランナー」に日本描写があるのは知ってたけど、映画版とは関係ない日本要素が顔を出す。

「メタルギアソリッド」を手掛けた小島秀夫氏のSFゲーム「ポリスノーツ」で、未来は日本食ブームで「おでん」が出てきたのを思い出した。

「リスを飼いたい」の会話のやりとりでは「デトロイト:ビカムヒューマン」で大量のハトと生活していたアンドロイドを連想した。
偉大な作品は、のちのいろんなものに繋がっている。


「電気羊」原作には「ブレードランナー」に出てくる有名な屋台もない。うどんもない。アジア系らしい人物もいない。いちばん日本をイメージするのが、お隣のアンドロイドにおすそ分けした「豆腐」。
「その白いものは何?」と聞かれていたけど、読んでるこっちも聞きたい。自然物が死に絶えた社会で、豆じゃなくて豆腐あるの? 調味料なし?単独?冷ややっこ?

一丁の豆腐から、アジア的描写をふくらませて、その世界観はサイバーパンクと呼ばれ、ファイナルファンタジー7ら現代のゲームに影響を与えたのか。全ては豆腐から始まったのか。そんなことも考えた。

最後に「ヒキガエル」が出てくるのも、ヒキガエルの体液にはたしか幻覚を見せる要素があるらしいし、いつの間にか現実ではなくなっているというメタファーか?
・・・とか、いろんなところに考えることがある。 ムンクの叫びを鑑賞する場面も好きだなぁ。出てくるもの全てに存在感があって、どこからでも考察がふくらむ。誰を主人公にしてもスピンオフが作れそう。

こんな魅力的な原作を、なんで大幅に変えて(しかも制作費がかかりそうな方向にアレンジして)映像化したんだ。読んだあとのほうが謎がいっぱいだ。


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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。