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#これが私の移住生活 case5.南三陸で「くらしに彩りを」 太田裕

いずれは町での起業を視野に入れて
2022年4月に南三陸町にIターン

夫の「野菜を育てたい」という夢を叶えるために、最初は山形県から岩手県に移住していたんです。岩手県に2年暮らしてみて、夢が膨らみ、「自分の理想の農業ができる場所を探したい」と、私の地元(多賀城市)に近い、宮城県沿岸で移住先を探していたんです。そんなとき、南三陸創業支援プログラムGAUDIEを知りました。夫も私もいずれは起業したいと思っていたので、起業について学べる良い機会だと思って、夫婦で一緒に参加しました。参加当初は南三陸町に移住するか迷っていたんですが、プログラム中に町のことを教えてもらったり、町で起業されている方を紹介してもらったりしたことで、いつの間にか「南三陸に行こう」という気持ちになっていました。移住についてまだ決め切れていなかった夫に「楽しそうだよ、行こうよ」って言うくらいに気づいたら行きたくなっていました(笑) 町の方の人柄に触れて、町内を回ってみたことで、移住した後のことがイメージしやすくなったというのは、大きなきっかけだったのかもしれません。

南三陸創業支援プログラムGAUDIEの最終報告会。
自分の夢を考えて組み立てていく時間を楽しめました。

地域おこし協力隊として、さんさん市場の店長に就任
パートさんや生産者さんに助けられる日々

南三陸町に引っ越してから仕事は探そうと思っていたんですが、南三陸町移住・定住支援センターの方から、『「さんさん市場」で地域おこし協力隊の募集が出ていますよ』と教えてもらったんです。募集内容を見たら、私が以前勤めていた仕事と業務が似ていたので、今までの経験を活かせそうだなと感じました。さんさん市場は、町内・周辺地域の生産者の方の商品を取り扱うので、町のことや人を知れそうだなと思ったのが、応募したきっかけです。
南三陸に引っ越しした次の日から地域おこし協力隊として、さんさん市場の店長に就任しました。ただ、最初の出勤日がGW真っ只中だったんですよ。さんさん市場は南三陸さんさん商店街の中にある店舗で、休日は特に観光客の方で混み合うんですよね。だから、レジもたくさんのお客さんが並ぶし、カフェの注文も引っ切りなしで、引き継ぎする間もなく、仕事をしながら覚えていくって感じでした。ラッキーなことに、私が以前の職場で使っていたソフトクリームの機械と同じ機械を使っていたので、ソフトクリームの注文はすぐに対応できました(笑) 働き始めから今もずっと、さんさん市場のパートさんや納品にくる生産者さん、さんさん商店街の他店舗の方から本当に助けていただいています。皆さんのおかげで、徐々に慣れていきましたね。

さんさん市場のスタッフさん。
本当に皆さん優しくて、いつも助けられています!

生産者さんとのかかわりを
さらに広げていくため奮闘中

さんさん市場は、生産者さんや出荷者さんが直接納品に来てくださる方が多いんですよね。朝イチで来る方もいれば、土日だけ来る方もいて、人によって納品のペースが違うんですが、勤めていくうちに傾向をつかんできました。皆さん本当にいつも気さくに接してくださって。何気ない話からビジネスの話までしていただいて、勉強になることも多いです。町内で農業に勤めてる夫も出荷者として納品に来ることがあるんですが、町の農家の方から良くしてもらっているようで、本当にありがたいです。
私も店長として、商談に行かせてもらったり、出張のイベントも経験させてもらったり、いろんな経験をさせていただいています。おかげ様で新しい出荷者さんを10団体開拓できました。今後も生産者さんとのかかわりを広げていきたいですし、南三陸の土地や食材や人の知識をさらに深めていき、皆さんの力になれるよう頑張りたいと思います。

こんなに大きなブロッコリーを見るのは初めて!
生産者さんとの会話は、いつも楽しく勉強になることばかりです。

夫が育てた野菜を美味しく食べてもらえる
海が見えるカフェを開くことが夢

山形で公務員をやっていたとき、夫も私も休みなく働いていたんです。休みの日は、出かける元気さえもなくて家で倒れたように寝ているみたいな感じでした。ふと「定年までこの過ごし方でいいのかな?」と考えたときに、「好きなことしよう!」と思ったんです。「夫が野菜を作るから、その野菜を美味しく食べられるカフェを作りたいな」と思ったのが20代半ばの頃です。
そこから、経営の勉強を始めましたね。夫との普段の会話でも経営者同士の話し方を意識したり、プライベートでも農地やカフェを視察に行ったりしました。
私は、ただご飯を食べるだけじゃなくて、ゆったりと時間を過ごせる、海が見えるカフェを作りたい、ってずっと思っていたんです。いつかこの町で、夢を叶えたいですね。夫も地元の農家の方から畑を貸してもらったり、仕事でも農業をさせてもらったり。南三陸に移住してから、お互いの実現したい未来に少しずつ進んでいる気がして、忙しくも楽しく過ごしています。

南三陸で夫が初めて作ったお米を収穫!
夫もいろんな方に支えてもらって、楽しそうに農業をしています。

画家としての一面も
休日は個展に向けて作品制作することも

私は美術科のある仙台の宮城野高校に進学、その後は山形市の東北芸術工科大学、同大学大学院と油彩を専攻しました。今でも、油絵と銅版画を制作していて、定期的に個展やグループ展に参加しています。作品を作ることをやめたくないんですよね。普段、いろいろなことを考えることが多いんですが、作っているときは無になれるんです。雑念がなくなって、集中して作品作りに向き合えるので、今後もそういう時間を大切にしていきたいと思っています。ゆくゆくは自分が開いたカフェで絵のワークショップを開いたり、自分の作品だけでなく、他の作家さんの商品や作品を並べたり。文化や芸術的なことにも触れられる場所を作れたらいいなぁ、と思っています。

南三陸の隣の気仙沼のカフェで個展を開かせてもらいました。
いつかこういう空間を自分が作れたらいいなぁと思っています。

趣味はタロット占い
初めての町内のイベントに占いの館として出店

私も夫も占いをすることが趣味なんです。私はタロット占い、夫は手相占いをやっています。うちにお友達が遊びに来た時は、お茶を飲んで話しながら私がお友達にネイルして、乾かしている時間に夫が手相占いして、その後私がタロットして…なんてことも(笑) 今年の秋に行われた町内イベント、ひころマルシェには、夫婦で占いの館を出店しました。夫と占い師の格好をして出店したんですが、予想以上にたくさんの方に来ていただいて、一時は予約待ちになりました。私たちの好きなことを、こんな風に楽しんでもらえるなんて嬉しいなぁと思いました。少しでも皆さまの力になれるよう寄り添える存在になれるといいですね。

町内のイベントでは怪しい占い師の装いで占いの館をオープン。
普段とまったく違う雰囲気に私だって気づかない方も笑

南三陸で「くらしに彩りを」

年をとって人生を振り返った時に、自分の思い出がいろんな色で彩られているといいなって思うんです。私にとってはワクワクや楽しいといった気持ちがくらしに彩りを与えてくれるんですよね。南三陸への移住が決まった時には新しい生活へのワクワク感でいっぱいでした。自分の夢につながっているさんさん市場での店長としての仕事も、絵を描くことも、誰かの未来を占うことも、同じ自分なんだけど全然違う色って感じがするんです。人との関わりが増えることで色が変わっていったり、新しいことに触れられると色が増えていったり。移住してまだ1年経っていないんですけど、今振り返っただけでもここでの生活は彩り豊かだなぁと感じています。何十年後に自分の人生を振り返った時、南三陸でのくらしの記憶が、今よりももっとたくさんの彩りで満ちていたらいいですね。