私が死んだ時、一番たくさん泣いてくれるのは弟かもしれない

食欲がない。そんな中、母とスーパーで端から端まで「これは?」「食べない」「これは?」「食べない」と繰り返しながら確認した。

そうしたら、私は「アイス」と「サンドイッチ」なら「食べたい!」と思うことに気がついた。

アイスとサンドイッチが好きなのだった。

好き嫌いなく育った。お弁当を残したことはないし、嫌いな食べ物も「嫌い」と言いながら食べるようにしてた。

そしたら好きなものが分からなくなった。

いや、サツマイモとか、プリンとか、好きなはずなのに、今はあまり食べたくない。食欲が湧かないのだから、好き嫌い以前の問題だな。

今の私は、アイスとサンドイッチが好きなのだ。

夕食後、夕食は惣菜コーナーで買った春巻きとお肉と野菜の炒め物、ほうれん草のお浸しとかぼちゃの煮物だった。ほうれん草とお肉を少し食べて、アイスを食べることにした。

アイスは2種類買ってくれた。練乳バーと、チョコバナナ。どちらもボックスアイスだ。

私は練乳バーが食べたかった。

だけど練乳バーはガリガリ君のように氷アイスだった。中に練乳が入っていてとっても甘くて美味しい。しかし食べたら確実に寒いのだ。

チョコバナナアイスもそりゃ寒くなる。でもこちらはミルク系アイスなので、氷アイスに比べキンキン具合が異なる。

「仕方ない、チョコバナナにしよ〜」

そう言った私の横で、弟が言った。

「じゃ、おれ練乳バーにしよ。ひと口あげるよ。」


弟は優しい。優しいって言葉で表現し切れないほど優しい。

「嬉しい!ありがとう!チョコバナナひと口あげるよ!」

「納豆食べたからいいよ」


休職中、家の中でささやかな仕事としてまず、風呂洗いを担当することになった。今までは弟が部活で疲れていても文句も言わずにやってくれていた。

私がお湯を抜いて、抜け切るのを待つ間に弟がやってきた。

「?」

「お湯抜いてくれたんだね。ありがとー」

以前に、休職中の風呂洗いは私の仕事にするね!と伝えていた。

弟は知っていたはずだった。

そして、お風呂洗いを開始する。お風呂の底をゴシゴシと洗っているとまた弟が顔を出す。

「大丈夫?」

「大丈夫よ!」

「👍」

2度も様子を見にきてくれた。私は貧血と低血圧と栄養不足で先週3回倒れているし、今日も立ちくらみで倒れているから。

お風呂洗い後、放置されていた空箱を無理に重ねて運ぼうとすると、弟が真っ先に駆けつけて半分持ってくれた。

弟は、優しくて、よく気がついて、寒いと言う私にお湯を沸かしてくれて、共通で好きなゲームの話を楽しくする。

ありがとうとハグをする。ありがとうと頭を撫でる。

そうすると嬉しそうにしてくれるから、怖い反抗期がなくて良かったと思った。

ニコニコした顔がとっても可愛いのだ。


父と、母と、年の近い妹には、「私が死んだらどうする?」と聞いた。

でもこの弟には聞けない。聞いてはいけないとわかる。

想像させてもいけない。

姉が死ぬ可能性のある人生を歩ませたくない。

不安は少ない方がいい。

あの子は優しい子だから。

どうすれば良かったんだろうって、たくさんたくさん泣くだろう。

性格だって変わってしまうかもしれない。

あの子は優しい子だから。

愛する弟。


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