落ち込んで 梅雨の合間に 見える塔 青空見つつ 明るい兆し
恋は猫でもいいのかなとふと思った。最近失恋を味わった木戸は、相当ショックだったようで、いまだ落ち込んでいてる木戸にとっては、目の前を通り過ぎる黒い猫を見て、そんなことを考えてしまう。
いつもなら車で移動するのに今日は気晴らしに歩いていていた。こんな時ではないと歩くことがないだろうと、今歩いているのは西高野街道である。堺市から河内長野市にかけて存在している昔から存在していた古い街道だ。
「天気もいいし河内長野駅まで歩こうか」木戸は梅雨の晴れ間で天気が良かったので、朝早くから西高野街道を歩いている。間もなくゴールの河内長野駅に向かう途中のこと、ふと目の前に大きな塔のようなものが見える。
「なんだろう?」車でこの近くを通ることはあっても気づかなかったもの。どのくらいの高さがあるのだろうか、上のほうは銀色をしていて何かが詰まっているようにごちゃごちゃしているように見える。
「こんなところに展望台なんてあるわけないしな」やがて塔の敷地の前に来たら、中に入れないが、会社名の表示がある。それから調べたらどうやらこれは無線のアンテナのようだ。
木戸はもう一度塔を見上げる。そびえたつという言葉にふさわしい塔をみあげると木戸は無意識に五七五七七の音を口ずさんだ。
「落ち込んで 梅雨の合間に 見える塔 青空見つつ 明るい兆し(おちこんで つゆのあいまに みえるとう あおぞらみつつ あかるいきざし)
なんてね、ハハハハ!」
久しぶりに笑いがこみ上げる木戸。車が行きかう音は聞こえるが、周囲に誰もいなかったのが幸いした。
「空を見上げていると気持ちがすっきりした。そろそろ立ち直らないとな」木戸は塔の周囲に見える鮮明な青空を見ていると、少しだけショックから立ち直れそうな気がした。
そんな木戸の様子を不思議そうに見つめていたのは、先ほどとは違う猫である。ちなみにこの猫はキジトラの文様をしていた。
今回は趣向を変えて、こちら小牧幸助さんのシロクマ文芸部という企画に参加しました。
そしてテーマは本日投稿した記事をモチーフにしています。
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