ひとつまみの鰹節と、忘れられないお味噌汁。「3代目ときやま商店」(青山一丁目)
よく行くフランス料理店のシェフに勧められて、気になっていた「3代目ときやま商店」。
父島の、後味がほんのり甘く感じる塩をおみやげに持って行ったら「調味料が好きならここ好きかも」と勧められたのがきっかけ。
全国からよりすぐりのレアな調味料を集めたというこちらのお店。青山一丁目という立地にしては渋すぎる名前だ。しかもフレンチシェフおすすめとあり、もう絶対やってくれそうなお店。
調味料屋さんだけど、おむすびとかお弁当も売っているらしい。美味いに違いない。
ひとりで行ったら散財しまくって帰ってこれないのが目に見えていたので、ストッパーになってくれそうな友人とふたりで行くことにした。
友人も「おにぎりじゃなくて、おむすびって言うところがもう絶対やってくれる気しかしない」と快諾してくれた。私たちの勘は間違えていなかった。
この友人は先月、「牛乳4本入る冷蔵庫が欲しい」と一人暮らしのマンションに350ℓ冷蔵庫を導入した、筋金入りの牛乳好き。
そして「鰹節を削りたい」とふるさと納税で鰹節削り機を探していた。初めて行く調味料屋さんにいっしょに行くには彼女以外に考えられなかった。
外観撮るの忘れちゃったけど、お店に入るなり店員さんから「牛乳入荷したのですが…」と試飲を勧められた時の、彼女のニヤケた顔が忘れられない。一本1000円するレアな牛乳を即座に購入していた。
で、おむすびを購入。レジ前にお味噌汁もあったから一緒に買った。
この味噌汁、味噌+店で削った鰹節だけでつくられていた。鰹節。なんという偶然だろう。
お店の人いわく、鰹節はほかの出汁と違って、お湯をそそぐだけですぐに旨味が出るらしい。出汁の美味しさを伝えたくてこのお店ができたんだとか。この一言が最強の旨味だったのは言うまでもない。
ふたりでいただきます、をして口に運ぶ。
おむすびをひと口。膜のようにピタッとくっついた海苔をかみ切って米ごと口にいれる。キュッとむすばれた塩気の効いたお米が、口のなかでほろほろほころんでいく。
おむすびの文字のごとく、口のなかでほどけていく感じ。わたしのおばあちゃんのおむすび以来の衝撃かもしれない。
おむすび以上に衝撃的だったのがお味噌汁だった。お味噌と鰹節、スプーンですくった豆腐に、お湯を注ぐだけのシンプルな味噌汁。
ほんのひとつまみの鰹節の旨味が、口のなかでふわっと花開くように広がる。お豆腐も、豆乳のコクがしっかりあって味噌の塩気とうまく調和している。
なんというか、これまで当たり前すぎて飲み物のようにすすっていたことが申し訳なくなるくらいに感動してしまった。お味噌汁って、こんなにシンプルで美味しいものだったんだ。
はぁ…とため息をつきながら、ふたりで時間をかけて大切にいただく。おむすびとお味噌汁で、500円くらい。500円で買えるしあわせ。なにより、こういう瞬間をいっしょに堪能できる友人がいることが嬉しい。この子と来て大正解だったと思った瞬間だった。
あまりにも美味しくて、追加で鰹節入りの玉子焼きと豆花を注文してしまった。友人はお味噌汁のお代わりと焼き芋を注文していた。
お味噌汁にこんなに感動する日がくるなんて。わたしまで鰹節削り節機が欲しくなってきた。
もちろん調味料も買ったんだけど、あまりにも美味しすぎて2人とも爆買いしていた。友人も全然ストッパーにならなかった。狭い店内のはずなのに、ひとつひとつを観るのが楽しすぎて3時間くらい長居してしまった。
島ざらめは沖永良部島のもので、都内ではここにしかないらしい。ベジブロスは野菜出汁。おかゆに入れても美味しかった。カレー粉は福岡の魁!カレー塾のものらしい。
クッキーはお店でふたりで試食して、あまりの美味しさに2人して同じものを買った。ホロホロサクサクの食感がたまらない。実はこのとき胃腸炎であんまり食べられなかったんだけど、3日で完食してしまった。たまにはこんな爆買いも悪くない。
1週間しか経っていないのに、もうあのお味噌汁が恋しい。次はいつ行こう。
3代目ときやま商店
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