見出し画像

リーダーは弱みを見せるべき?

先日、学びデザイン株式会社の荒木さんとの、リーダー育成について対談がNewsPicksで記事になりました。リーダーに求められている能力や、最近のリーダーの苦労についてしみじみと内容の濃い話ができた対談でしたので、ぜひ読んでみて頂けたらと思います。

今回は、対談のこぼれ話として、上司と部下とのコミュニケーションをどう円滑にできるかという話題について、記事には入りきらなかったことを書いてみたいと思います。


部下とのコミュニケーションに行き詰る上司

対談のなかでも少しだけ触れられているのですが、ここ数年のリモートワークの影響もあって、最近の上司は、部下とうまくコミュニケーションが取れなくて、孤立している人も多くいます。上から無理難題も降りてくるうえ、部下には残業をあまりさせられない。また、ハラスメントに対する企業の意識も高まっていて、部下との接し方も分からず板挟みになってしまっている人もいるのではないでしょうか。

そういう辛そうな上司の姿をみて、管理職になりたくない。という若手が増えてきているのも無理はないかなと思います。

こういう状態になると、部下と上司の関係はどんどん希薄になるばかりで、部下は余計なことを言って注意されたり、仕事を振られるのを避けるため、報告も滞りがちで、上司はチームの実態がどんどん見えなくなっていくという負のスパイラルが進んでいきます。

そこで、上司と部下とがもっと近しい関係をつくる方法として、上司が部下にあえて弱みを見せるという手法が世界では広がっています。Vulnerability (ヴァルネラビリティ)と言って、米国ではトレーニングも盛んに行われており、スタンフォード大学のスティーヴン・マーフィ重松教授の書籍は有名で、私も教授に教えていただきました。

上司も人間なので、正直に弱みを部下に見せることでコミュニケーションが円滑に進む場合もあります。トップダウンの文化が強いアメリカの場合は特に有効だと思います。しかし、日本においては、弱みを見せるということはなかなか難しいように思います。

管理職として最初にぶつかった壁

私自身、20年前に初めて管理職になったとき、毎日肩に力が入りまくっていました。メンバーの半数以上が自分より年上のなかで、自分が仕事の手本を見せなければ。と強く思っていましたし、それ以外の方法でチームを引っ張っていける気がしませんでした。

メンバーには、自分の言う通りに動いてほしいと思うあまり、細かいことが気になって、指示も多くなり、チームの雰囲気が少しずつ悪くなっていることにも気づきませんでした。そのうち年上のメンバーの退職が続き、チームの成績も落ちていって、最初の管理職経験は、本当に反省だらけでした。今でも当時のメンバーには申し訳なく思います。

このときの自分を思い返すと、「弱さを見せたらいい」とアドバイスすることはとてもできません。本人にそんな余裕はとてもありませんし、チームメンバーも、それまでエースだと思っていた上司から急に弱さを見せられて頼られても動揺するでしょう。

もし今の私が、昔の自分にアドバイスするとしたら、「メンバーの話をよく聞いて、いつも感謝しなさい」と言います。単純なことですが、これだけで、メンバーとの関係は大きく変わってきます。

管理職を長く経験する中で私はこの方法を学び、部下や社員との関係のつくり方を覚えました。部下があっての上司であり、組織である。と考えるだけで、あえて弱さを意識しなくても自分の言動は変わっていき、自然と部下に頼ることもできてきます。

弱みよりも感謝を見せる

私のリーダー育成トレーニングでは、いろんな方法で「感謝を伝える」ことを学んでいきますが、たとえ、部下が上司の意にそぐわないことや、期待していないことを言ったときでも、必ず一言目に上司から「ありがとう」と返すのは、できているようでほとんどの人ができていません。

いま、部下とのコミュニケーションに行き詰っている上司の方や、チームでの仕事でコミュニケーションに悩みがある方は、とにかく、誰かに何か言われたら、一言目に「ありがとう。」と心を込めて返すことだけ心がけてみてください。

最初はストレスに感じたり、つい忘れることも多いと思いますが、だんだん慣れていきます。私もこれができるようになるまで、実際少し時間がかかったのですが、習慣化してくると、自然と言えるようになります。ただ、自分で気づかないまま忘れていることもよくあるので、できればチーム全体で取り組んで互いにチェックするほうが早く定着します。

私もこれからも続けていきますので、もし、大学院や、グロービス、能率協会など、どこかで私を見かけて、私が「ありがとう」を忘れていたときには、「忘れてる!」と(優しく)声をかけてください。

ビジネスの現場は厳しい場面も多いですが、そんな時でもお互いに「ありがとう」を自然と言い合えるような世界になればいいなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?