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陰っていくファストファッション

 どうしたものか。ショッピングモールに並ぶようなファストファッションに魅力を感じなくなってしまった。
 あの模様もこの模様も、記憶が知っているものばかり。あの形もこの形もみんな私の体が覚えているようなものばかり。ここに並ぶものはその知っているものを組み換えて作られたバリエーションに過ぎない。私たちはこの服が良いと言うが、実のところは、この組み合わせがいいと言っている。自分らしさを出そうとかいシャレにこだわっているとか言いながらファストファッションに触れる人がいるが、そこにはこだわりも何もない。自分らしさのかけらもない。
 山本耀司がファストファッションは全て同じに見えると言っていたことがわかってきてしまったような気がしてとても悲しい。一時期はファストファッションのネット通販の一覧を見ていたのが、今では人の名前がブランドに刻まれた服を検索することが楽しみになってしまっている。彼らの作る服には熱を感じる。今までどんな経験をしてきたのか、どんな意思で作ったのか。
 同じ生地であっても、あの六千円のシャツは高いように感じるが、彼らの作る6万円のシャツは安く感じる。
 私の目も肥えてきたのだろうか。


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