高校生を終えて
先日、3年間通った高校を卒業した。
入学したのが昨日のことのように思えるくらい、あっという間の3年間だった。いい事ばかりではなかったけれど、楽しかった。
卒業したときの想いはきっと時間が経つにつれて忘れてしまうから、ここに綴って閉じ込めておきたいと思う。
私は中学校生活をあまり楽しめなかったタイプの人間で、中学の卒業式では泣けなかった。
いじめられていたわけでも、友達がいなかったわけでもないのだが、先生や学校全体の雰囲気然り、どうも好きになれなかった。
地元での人間関係を断ち切って新しい場所で高校生活をスタートしたいという思いから、少し自宅から離れた高校を選んだ。
毎朝、満員電車で1時間。
最初の頃は「もう乗れないでしょ?!え、まだ乗ってくるの?!」と次々に容赦無く人が乗り込んでくる電車通学に恐怖すら覚えたが、3年も経てばもう慣れたものだ。
通学時間は、だいすきな音楽を聴きながら過ごしていたので苦ではなかったけれど、早起きは朝がめっぽう弱い私にはなかなか険しい壁であった。
都会の街中にあり、駅から徒歩2分という驚異のアクセスの良さ。珍しいデザインの校舎、個性的な制服、ハイレベルな行事。そのどれもが目新しくて眩しい。
すべてがキラキラと輝いて見えた。
私のことを理解し、必要としてくれる親友と呼べる友人が出来た。部活動では副部長をつとめ、共通の趣味を持つクラスメイトと意気投合して仲を深めた。大学受験にも成功した。成績はいまひとつだったが。
決して目立ってはいないけれど、平凡だけど、嫌な思いをすることもあったけれど。
月曜日の朝は憂鬱で、金曜日の放課後は幸せで、友達と他愛も無い話をする休み時間は楽しい。可もなく不可もない、それなりの高校生活。
だけど、それらを全て「なんとなく」で過ごしてきてしまったと、ある日突然気づいた3年生の秋頃。
キラキラと眩しく輝き、活躍し、周りから慕われる。そんな同級生らを見て、私は自分のことが嫌だと感じるようになった。パッとしない見た目、何も努力せず、誇れるものがない中身。私はこれが出来ます、と自信を持てることがひとつも無いと気づいたとき、とても悲しくなった。
虚しさで胸がいっぱいになって、苦しくなった。
私は空っぽだ、と。
自分は一体何が出来て、どんな人間なのか、いくら考えても探しても、どうも答えが見つからなくて、暗中模索する日々。
そんなとき、私に自信を与えてくれたのは担任の先生のある言葉だった。
卒業に向け、文集の原稿や卒業論文など、文章を書く機会が一気に増えていた。元々「言葉」が好きで、普段から人が書いた文章や本を読んだりしていたので、文章を書くことは苦でなかった。読み手に自分の想いを伝えるにはどうすれば良いのか、どんな言葉を選べば素敵な文章になるのか。
自分なりに、たくさん試行錯誤をして書いた。
私が書いた文章を読んで
「お前、文章を書く才能があるなあ。」
と、先生は言った。
それが凄くうれしくて、うれしくて。
「ありがとうございます」と冷静を装って返事をしたけれど、内心は飛び跳ねそうなくらいにうれしくて、胸の奥がぎゅーーーーとなったのを今でも覚えている。
書いては消して書いては消して、と何度も繰り返して、一生懸命書いたことが伝わったこと。自分の書いた文章を認めてもらえたこと。
あの言葉があったから、きっといま、私はこのnoteを書いている。
人って本当に不思議な生き物だなあ、と思う。
どれだけ何もない自分を見て不安になっても、ほんの少し誰かから肯定してもらえることでこんなにも気持ちの持ち方が変わる。
あの一言だって先生にとっては何気ない一言だったかもしれないが、私にとっては間違いなく自分を変えてくれた一言だ。正直、自分の書く文章に「自信があります!」とはとてもじゃないけど言えない。
だけど、「文章を書くことが好きです!」と胸を張って言えるようになった。手持ち無沙汰だった自分が、「文章を書くことが好きな自分」に自信を持てるようになった。
先生には本当に感謝している。
この先も、あの「うれしかった瞬間」をいつまでも忘れずにいたいなーーー。なんて思う。忘れたくない。
卒業式の日、最後のホームルームでクラスメイト全員の前で一人ずつ挨拶をする機会があった。
みんなの前で話すと先生から聞いた二日前から、何を話そうかずっと悩んでいた。ありきたりでもいいけれど、ありきたりじゃなくてもいい。
どうせなら誰とも被らない内容にしたい。
最後の悪あがき。
高校ではあまり目立つことなく、大人しく過ごしてきた。変に前に出て、陰で何か言われることが怖くて、前に出たくても出れなかった。人に合わせる自分がいつもきらいだった。最後くらい、自分が心から言いたいこと、伝えたいことを堂々と話そうと決めた。
出席番号順に話す順番が回ってきて、私の前の番号の子が話を終える。
至ってシンプルで、だけど他の誰も話していなかったこと。
「夢を叶えるために頑張るので、みんなも頑張ってください」
高校生活が楽しかったと過去を振り返る子が圧倒的多い中、あえて未来の話をした。私は絶対夢を叶えるんだ、とみんなの前で宣言をした。どんな反応をされるのか、少し怖かったけど。
不安な気持ちを吹き飛ばすように「がんばれー!」と応援してくれる声が聞こえてきて、本当に嬉しかった。
最後に思い切って、勇気を出してよかった。
この学校に来ていなければ、きっと全然違う自分になっていた気がする。何も無かった自分を変えてくれたのは紛れもなくこの学校と友人、クラスメイト、先生だ。こんな私と関わってくれた、全ての人に感謝です。
10年後に同窓会で再会する時には、思い描いた夢を叶えて、胸を張ってみんなと会える自分になっていたいと思う。
素敵な高校生活よ、本当にありがとう!!!
そして、私へ。
まだまだこれからだよ!
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