モンゴルをもっと知る | ミュージック・ジャーニーvol.63
皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。
今回は、ユーラシア大陸の西部に位置するモンゴル国へ、駐日モンゴル国大使館の皆様とともにご案内いたします。
モンゴルは広大な国土の80%が草原に覆われた「草原の国」です。海の影響を受けない内陸性気候のため、昼と夜、夏と冬の寒暖差が激しく、冬はマイナス40℃台にまで下がる地域もあります。
また、1年のうち300日は晴れると言われているカラッとした気候が特徴です。
日本とは「第3の隣国」として良好なパートナー関係を築いており、2022年は両国の外交関係が樹立して50周年になる記念の年でもあります。
現代と伝統文化が共存する首都 ウランバートル
首都ウランバートルは、国内総人口の約半数が暮らす政治・経済・社会の中心地です。モンゴルの年齢分布(2020)は24歳以下が42%、25〜54歳が45%、55歳以上が13%と全体的に若いのが特徴ですが、そのなかでもウランバートルは特に多くの若者が集まる活気にあふれた都市です。
2021年に開港された「チンギスハーン国際空港」をはじめ、市内にはデパートなどの近代的な建物が並び、周囲にもオシャレなカフェやセレクトショップが軒を連ねています。
一方、少し道を外れると、チベット仏教の古い寺院や宮殿博物館といった歴史的な建造物も多く見られるのが特徴です。
圧倒的なスケールの大自然と世界遺産
モンゴルの広い国土は大きく4つのエリアに分けられ、それぞれに違った顔を持っています。各エリアの特徴的な自然と世界遺産を巡りましょう。
満天の星空を眺められる草原地帯
首都ウランバートルを含む中央の草原地帯は、起伏が少なく、短い草丈の草原が広がる典型的なステップ気候です。ウランバートルから一歩外へ出れば、すぐに見渡す限りの青々とした大地が広がります。夜になれば、灯りのない真っ暗な大草原には満天の星空が広がり、多くの観光客を魅了します。
ウランバートルの西方には、「オルホン渓谷の文化的景観」として世界遺産に登録されているオルホン渓谷があります。ここは、2000年以上にもわたって築かれてきた遊牧民の文化が数多く残る史跡群であり、なかでも「カラコルムの遺跡」は、チンギスハーンが築いた都市として有名です。
トナカイが放牧されるタイガ地帯
雨量の少ないモンゴルではめずらしく、北部は豊かな降水量に恵まれるエリアです。世界第2位の透明度を誇る「フブスグル湖」や永久凍土の「ダルハド盆地」など、他の地域とは違った自然環境を持っているのが特徴です。
寒さの厳しいタイガ地域では、トナカイを放牧する遊牧民族「ツァータン」が独自の生活を営んでいます。
めずらしい動植物が生息する山岳地帯
西部は標高4,000mを超える山々がそびえるアルタイ山脈系の山岳地帯です。ここでは、万年雪を頂く荘厳な山々と、隣国のロシアにまたがる世界遺産「オブス・ノール盆地」が、特に見逃せない観光名所となっています。
オブス・ノール盆地はモンゴル最大の湖「オブス湖」をたたえる世界遺産であり、「世界でもっとも北にある砂漠」と「世界でもっとも南にあるツンドラ」が共存する特殊な自然環境を持っています。ここには絶滅危惧種のユキヒョウやアルガリなど、めずらしい哺乳類が生息しています。
乾燥した大地が広がるゴビ砂漠
モンゴルの南東部には、「ゴビ」と呼ばれる砂や小石でできた大地が延々と広がっています。ゴビ砂漠とも呼ばれるため、不毛の大地がイメージされることも多いですが、地下水は豊かで草がまばらに生えています。
穀物や野菜の栽培には向いていないため、人々は乾燥に強い羊やヤギを家畜として育て、エサとなる草を求めながら移住する生活を送っています。しかし、1992年のモンゴル民主化にともない、「土地私有化法」(自由に居住地を選択できる法律)が制定されたことで、近年では遊牧をやめてウランバートルなどの都市部に移住する人も増えています。
モンゴルの伝統的なライフスタイル
モンゴルでは伝統的に遊牧民族が暮らしてきたことが広く知られています。前述のように、現在では都市に移住する人口も増えていますが、長きにわたって培われてきた遊牧文化は、今でもさまざまな形で残っています。
機能的で快適なゲル
組み立て・解体・運搬・修理が簡易に行えるゲルは、遊牧民の生活を支える重要な住居です。素材は木やフェルトの素材でできており、気密性が高くて雨風も防ぐことができ、厳しい自然にも負けない高性能なつくりになっています。
馬と遊牧民の暮らし
「モンゴル人は馬上で育つ」ということわざがあるほど、馬は遊牧民にとって生活に欠かせないパートナーです。モンゴルのツアーには、馬に乗って広い草原を巡るホーストレッキングができるプランも多くあり、ゲルでの宿泊体験と併せて高い人気を集めています。
民族衣装の「デール」も乗馬に最適化されたつくりになっており、温かいように裾や袖は長くとられていますが、足を広げやすいように作られているのが特徴です。
夏の祭典「ナーダム」
ナーダムとは、モンゴル語で「遊び」を意味する言葉であり、毎年6月後半から8月にかけて各地で行われるスポーツの祭典です。具体的な競技は、古くから「男の3つの遊び」とされてきた相撲、競馬、弓射です。
しかし、現在では女性も相撲以外には参加するようになっており、モンゴル全土が夏のひとときに情熱を傾けます。草原を疾走する子どもの姿に、成長を感じて涙する大人の姿も見られるなど、モンゴルの人々にとってとても重要なイベントとなっています。
雄大な自然と遊牧生活に紐づいたことわざ
遊牧を伝統文化としてきたモンゴルでは、日常生活で1人ひとりがさまざまな決断を迫られる環境にあったため、気高く力強い個人主義的な価値観が根付いていると言われています。そうしたモンゴル人の人柄や価値観をわかりやすく示しているのが、さまざまなことわざです。
「何かやるならば恐れるな、恐れるならば何もやるな」
「甘えを学ぶより困難を学べ」
「干ばつのときに春の素晴らしさを知り、困難にあったときに真の友情を知る」
このように、モンゴルのことわざには、大自然との向き合い方や生活の真理をまっすぐに表現したものが多いのが特徴と言えます。
モンゴルの音楽文化
モンゴルの音楽文化も、遊牧民の生活に強く関連しています。たとえば、モンゴルを代表する伝統的な弦楽器「馬頭琴(モリン・フール)」は、ネックのてっぺんに馬の頭がモチーフになった独特な彫刻があしらわれるのが特徴です。弓と2本の弦は馬の尻尾の毛から作られ、素朴で温かみのある乾いた音色は、他の弦楽器にはない独自の魅力となっています。
モンゴルの音楽文化と言えば、1人で2つ以上の音階を同時に発生する独特な歌唱法「ホーミー」も特徴的です。モンゴルを含む中央アジアの山岳地帯に住むいくつかの少数民族に伝承されており、そのなかでもモンゴル民族によるものがホーミーと呼ばれています。
民音では、1977年に第1次民音シルクロード音楽舞踊考察団を現地に派遣して以来、モンゴルとの文化交流を重ねてきました。今回は2010年に招聘した「モンゴル国立民族歌舞団」の演奏で、モンゴルの雄大な自然をテーマにした2つの楽曲をお届けいたします。
1.天馬
天を駆ける馬を表現した馬頭琴の代表曲。
2.アルタイ山を讃える歌
神聖なアルタイ山を讃える儀式・祭りで歌われている楽曲。山に住む動物や森、川などのすべての名前を讃えて歌い、祭りでは三日三晩休むことなく歌い続けられる。
大使館推薦の音楽家
最後に、駐日モンゴル国大使館が推薦する音楽家の演奏をお楽しみください。
1.Yuve Yuve Yu-The HU
<The HU(ザ・フー)>
2016年にウランバートルで結成されたロックバンド。バンド名はモンゴル語で“人類”を意味し、馬頭琴やモンゴルギター、ホーミーなどの伝統音楽とロックを組み合わせた独自の演奏を特徴としている。北米やヨーロッパ、アジアなど世界各国でコンサートを行い、彼らの代表曲の1つ「Yuve Yuve Yu」はYouTubeの再生回数が1億400万回を超える。(2022年12月現在)
2.Two Mongolian folk songs. Throat singing.-Ikh Tatlaga
<Ikh Tatlaga(イフタタラガ)>
日本を拠点に活動するモンゴル民族楽器グループ。馬頭琴やホーミー、揚琴、ヤタクなどの演奏を通じてモンゴルの文化芸術を世界に広めている。
3.Courtiers, vil damned race, Rigoletto-Amartuvshin Enkhbat
<Amartuvshin Enkhbat(アマルチュヴシィン エンクバ)>
ウランバートル出身のバリトン歌手。2008年からモンゴル国立オペラ・バレエ劇場でソリストを務めている。
3.Yeletsky’s aria (I Love You) from “The Queen of Spades”,Pyotr Tchaikovsky,-Ariunbaatar Ganbaatar
<ARIUNBAATAR Ganbaatar(ガンバートル・アリウンバート)>
ウランバートル出身のバリトン歌手。2015年にサンクトペテルブルクで開催された「第15回チャイコフスキー国際コンクール」での優勝をはじめ、国際的な賞を多く受賞している。
皆さん、モンゴルへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。
協力、写真提供:駐日モンゴル国大使館
Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-
ご案内
この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/14041/min-on-music-journey-no-63-mongolia/
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