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ありむら
2022年3月14日 00:03
外国に住み始めて、あっという間にひと月が経った。最初の2週間はホテルでの隔離生活だったのだけれど。 小さい頃、「外国」に住むのが夢だった。けれどその「外国」という場所は、「誰も自分を知らない遠いどこか」と言い換えられることに、成長の過程で気がついた。ひとり暮らしを始めた東京の端っこも、ひとりで行った京都も、カンボジアもタイも「外国」だった。そして、そこに滞在して少し経つ頃には「外国」で
2021年11月20日 21:20
気づいた時には本が好きだった私の頭の中で、空想の人物たちが動き出し、それを文章として紡ぎ出したのは、ある意味当然のことだったかもしれない。 初めて物語を書いたのは10歳の時。夢は当然小説家だった。でも、結局は書くのをやめた。 物語を書かなくなった、いや、書けなくなったのは10代も終わりの頃。オブラートに包まずに言えば、セックスを知ったせいのように思う。 子孫繁栄のために我々は生きて、
2021年11月17日 09:17
目が覚めるとまだ部屋が暗い。思い出すのはいつも同じバスルームだ。私はまだ子供で、父と旅した時のこと。まだ日が登らない朝。ロンドンの湿気を孕んだ空気。くすんだ水色のタイル。白い枠の窓。外から聞こえてくるのは、たまに通る車の音。巻き戻しすぎて所々ノイズが混ざるカセットテープのように、繰り返し繰り返し思い出しその記憶は、事実とはかなり異なる形で私の海馬に収まり、いつしかその異国のバスルームから外を