祖母、パンストを穿く
30年前のお話。
親戚から「おばあちゃんの調子が悪い。もう危ない」と連絡がきた。
慌てた私たちは、連絡を受けたその日の夕方に熊本から祖母の暮らす神戸まで車で会いにいくことにした。
車で神戸まで。これがなかなかハードだった。「祖母が危ない」という情報のもとに出発しているため、我々に楽しい旅行の感覚はなく、車内は重苦しかった。
夕方に熊本を出て、神戸の家に着いたのが朝方。
くたくたで、家の戸を開けると、
祖母が慌てて短いパンストを穿いている最中だった。
チラッとこちらを見て「いや〜ちょっと!ホンマに来る、思わんかった〜。ちょっとこれぐらい穿いとかなー」
祖母は元気だった。
不義理な父をおどかすために親戚がちょっとオーバーに連絡をよこしたらしい。
力が抜けた。
足もとだけよそゆきになった祖母を見て、寧静な空気が私たちを包んだ。
「寧静」(ねいせい)・・・世の中が平穏なこと。心が安らかで落ち着いていること。
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