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台湾 藺草と生きる人々を訪ねて(後編)

【藺草編みの伝統をいまに伝える「藺子」】

お店の扉を開けると店員さんの挨拶よりも先に藺草(いぐさ)のいい香りが出迎えてくれました。
思わず「いい匂い!」と口々に話していると、店員さんもにっこり。

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苑裡駅から歩いてすぐのところにある藺子。
伝統的な藺草編みを現代的にアレンジした帽子やカバンを始め、藺草を使った様々な小物を取り揃えているブランドです。


若手デザイナーと60~90代までの地元のつくり手の方が中心となって製品をつくる一方、若手の育成も行なっています。
店員さんも働きながら技術を勉強されていました。


ひと編み、ひと編みていねいにつくられた製品は、まるで細密画を見ているような美しい模様で目を惹きます。よく見ると様々な種類の模様がありました。

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昔から編まれている帽子に可愛らしい色とりどりのリボンが良く似合う


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編み方によって様々な模様が生まれる


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美しい模様を生かした小物は台北のセレクトショップなどでも人気の商品


つくり手の方がお店の片隅で作業をしていたので、見学させていただきました。

細くて長い藁を巧みに操りながら、カバンの片面を編んでいる最中でした。およそ一日で片面が編み上がると言うので驚きです。

無駄のない美しい手しごとを夢中になって見ていると「母親の編む姿を見ながら6歳から始めたの」と教えてくれました。

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おばあさんが手編みでつくっているところ


苑裡の藺草は茎が正三角形で、弾力があり吸湿力に優れています。そして草の香りが長く残るのも特徴です。
そのため藺草の帽子は、夏でも涼しく、清々しい気持ちで過ごすことができます。

藺子のつくり手によって、ていねいに編まれた帽子は、編み目がきれいに揃い、髪に引っかかることがないのでとっても被りやすいです。

そのほかの製品も手に吸い付くような藺草の質感がとても心地よいです。

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どんな場所にも一緒に行きたくなる帽子


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ちょっと変わった帽子をご紹介。バイクを乗る人が多い台湾ならではのアイテム。ヘルメットの中にかぶると藺草が湿気を吸って蒸れを防いでくれる


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時代とともに藺草編み製品のカタチも変化を歩む。けれども、これらの製品が暮らしの中で人と日々を歩むカタチは変わらないだろう


藺子
苗栗縣苑裡鎮天下路127號
https://www.sunnyrush.com/
◎台北市内でもセレクトショップなどで取り扱いもありますが、ぜひ本店を見てほしいです



【藺草編みができるまで】

材料の藺草(いぐさ)について少し紹介します。

藺草は稲と同じように田植えを行い、成長すると120~160cmまで大きくなり、苑裡では年に3回収穫ができます。収穫時期によって春草、秋草、冬草と呼び名が変わり、つくる物によって使い分けされています。

成長した藺草は手作業で収穫したのち、乾燥のため天日干しを行います。このとき青々とした藺草はうす茶色へ変化します。乾燥が終わると、今度は藺草編みに使用する藁づくりが始まります。

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◎藺草編み藁づくり
①根元部分の余計な皮を取り除く「わらすぐり」
②針を用いて一つの茎を2~3本に裂く「わら切り」
③柔らかくするため小槌でわらをたたく「わら打ち」
④色を統一させる「わら揉み」
⑤製品づくりに必要な本数を計算して竹竿とレンガで固定する「わら敷き」
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このように多くの工程を経てようやく藺草編みが始まり、製品へと加工されます。
小さな苗から始まり、たくさんの人の手によって大切につくられた藺草の帽子やポーチを見ていると、愛着もひとしおです。


◎台湾藺草学会HP
藺草編みについての映像を観ることができます
http://www.taiwanlin.org.tw/zh-TW/industry-content/id/43/
私が現地にが行った時は、残念ながら施設はお休みだったので、次回リベンジしたいです。



ちなみに日本の藺草の産地は熊本県八千代市で、国産藺草の9割が生産されています。日本では冬に田植えを行い、初夏に収穫を行うそうです。

◎熊本県地産地消サイト いぐさ・畳表
http://cyber.pref.kumamoto.jp/Chisan/imgkiji/pub/detail.aspx?c_id=10&id=492&pg=3

読みに来てくださったり、お友達になっていただけると、とってもうれしいです。