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noteでみつけたたからもの

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そっとのぞいてみてほしい。わたしのスキのライブラリー。いつかの、だれかの、珠玉のことばたち。
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#小説

私という輪郭を明確にしてくれる小説/吉本ばなな「キッチン」

揚げ物をしている時の、次々に浮かんでは消えていく小さな泡と、カラカラという小気味いい規則…

くじら
3年前
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ショートショート『ヨシダは死にました』

「ヨシダはいねぇのか、ヨシダを出せコラ!」 「ヨシダは、死にました。」 「…………!!!!…

野やぎ
3年前
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小説「あなたがここにいてほしい」

 これ、乗ってみてもいいすか?  それがはじめて、あなたがわたしにかけてきた言葉でした。 …

小説「ひかりとコアラといちまいごはん」

「あれ、乗ってきていい?」  ほぼひと月ぶりに会ったひかりは公園に着くと、小声でどこか遠…

カワセミカヌレ

オリーブの木。その傍に、お店の看板。看板の横に自転車を停め、学校鞄を提げ、歩き出す。 お…

小説「ふたりだけの家」13(全13話)

 また線路の鳴る音が聞こえてきた。今度は駅の方から走り出した列車だった。先ほどとおなじ、…

うちの前にはバス停がある

 うちの前にはバス停がある。低いポールに頭がついた、小さなバス停看板が置かれているだけで、本当にバスが止まるのか不安になるような作りではあるけれど、ある。  最寄り駅までは徒歩18分の住宅街だ。建物はひしめきあっているというわけではなく、お互いに適度な距離を保ち、そのあいまあいまに充分な量以上の緑や木々が茂っている。そういう場所ではあるけれど、駅まで歩けない距離ではない。事実、アパートの他の住人がバス停に立っているのを見たことはないから、きっと歩いているのだろうと思う。

遺言の下書き

遺言を作ることを、以前より考えている。 もちろん正式な書類の作成にはしかるべき過程、費用…

ぼくの指はきみのもので、きみの声はぼくのもの。

ある日、森の中でギターを弾いていた一人の「ぼく」の前を、一人の「わたし」が通りがかった。…

きしもと
3年前
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掌編「カッシアリタ」 みちづれ

※投げ銭制度ですので、記事は全文読めます。 第一話、二話は以下のリンクです。  きゃはは…

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色彩の海に還る

 水面が揺れている。きらきら、きらきら。  この街を出た8年前と変わらぬ色の海が、私の目…

碧月はる
3年前
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「 約束のエアハイタッチ 」

一面の窓ガラスに、たっぷりとした陽の光を浴びて木々の緑がきらきらと揺らめいている。 あぁ…

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いつも何度でも~ボウキョウによせて~

今から6年ほど前に、イベントで『いつも何度でも』をうたってほしいという仕事を引き受けた。 …

掌編小説 | routine.

「水、飲むか?」 「・・・んーん、へいき。」 それは、日付が変わった頃。 ふたりのいつもの会話、彼だけがシャワーに向かう足音、馴染んでしまった一連の流れ。 あたしはいつも決まって要らないと応えるのに、筒井は毎回必ず律儀に訊いてくれる。それはやさしさなのだろうか、それとも、あたしの返答なんて記憶に無いのだろうか。後者だと思う。そんなのはもうとっくに気づいている。だけど、それじゃあんまり哀しいから前者だと思うことにした。他人の感情なんてどうせ分かりっこないのだし、どう解釈しよ