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学校教育におけるナッジとその作り方④【行動経済学×学校教育】


【学校文脈におけるナッジの作り方 第4話】
・ナッジ(Nudge)とは
・スラッジ(悪いナッジ)を知る 
・学校教育におけるナッジの目的
・ナッジを使う教師の心得 
・ナッジを作るまでの過程 ⇦ここから
・ナッジのフレームワーク 
・ボトルネック(悪影響)を見つける⇦ここから
・ボトルネックに対するナッジを選ぶ 
・シートを使って実際に考える 
・おわりに

ボトルネック(悪影響)を見つける

ボトルネックとは、いわゆる「瓶の首の細い部分」です。
言い換えると「流れの勢いが弱まる部分」になります。

子どもたちの気になる行動や活動には、
おそらくこの「ボトルネック」がどこかに存在しています。

瓶の上部分ですね。ワインのボトルには必要不可欠です。

例えば、先生方が子どもの活動を見守る中で、子ども一人ひとりが異なる背景や特性をもっているため、時には進行にブレーキがかかる「ボトルネック」が生じます。

これらのボトルネックは、行動経済学の視点から分析すると、様々な心理的特性に基づいていると理解できます。

いつもと同じがいいクセ (現状維持バイアス)

新しいことを始めるのはちょっと…と思うクセがあります。いつも同じ子が挙手をし、挙手をしない子がいるのはまさにこのバイアスの一例です。

失敗がこわいクセ (損失回避)

新しいことに挑戦するとき、失敗するのが怖いと感じるクセもあります。自分を守ろうとする心の動きです。しかし、これが強すぎると、新しいことを学ぶチャンスを逃してしまいます。

自分の考えだけが正しいクセ (確証バイアス)

自分が信じていることや考えを、他の人の意見よりも優先してしまうクセがあります。これがあると、クラスの話し合いで、新しいアイデアや違う意見を受け入れにくくなります。

選べないクセ (選択過剰負荷)

たくさんの選択肢があると、どれを選んでいいかわからなくなるクセがあります。たくさんの情報や選択肢があると、どうすればいいか迷ってしまい、進むのが遅くなることがあります。

これらの心理的特性を理解し、ボトルネックを特定することで、解消することが可能になります。

現状維持バイアスに対処するためには
徐々に新しい活動を導入して子どもの抵抗を減らすことが有効です。

損失回避に対しては、
失敗を学習の一部として捉え、安全な環境での挑戦を促すことが大切です。

確証バイアスには、
多様な情報源や視点を魅力的に提供することが重要です。

選択過剰負荷には
選択肢を絞り込み、意思決定を容易に行えるよう支援します。

先生方はどれも体感しており、すでに有効な指導をされていることと思います。これらを論理的に対処していけることがナッジの魅力の一つです。

ボトルネックに対するナッジを選ぶ

具体的に、どんなボトルネックに対して、どのようなナッジを選択するのか。私が作ったナッジの例を2つ挙げてみます。

① 子どもがそうじをしない
・ボトルネック
そうじをしなければいけないことはわかっているが、友達と遊んだり、おしゃべりしたりと、目先の利益獲得を優先してしまう。
ナッジの選択
そうじ活動をより良い意思決定をとる練習として価値づける。自己評価の中に悪い意思決定をあえて入れる。よい評価に着目し、フィードバックする。

②あいさつが少ない
ボトルネック
した方がよいが、恥ずかしい。褒められるから、叱られるからやるものという認識。挨拶の重要性や価値を理解していない。
ナッジの選択
挨拶が将来どのように役立つか、強制はせず、その価値だけを教師が説明したり、子どもの声で共有したりする。毎朝「家族・友達・担任・その他の人」などの項目で挙手アンケートを取り、挨拶をする初期値を設定する。また、難易度の低い選択肢を入れる。

ボトルネックを取り払う「ナッジ」を考える

まとめ

理論で説明しておきながら、小難しい理論は「知っているとお得」程度だと思っています。

重要なのは「ボトルネックは一体何かを考える時間」です。

どうしても思いがけぬ忙しさに追われてしまうのが教師の宿命だと思いますので、なかなかその時間を確保するのが難しいと思います。

ナッジを通して、その時間を自然な形で作れることが魅力でもあります。

今回はここまでとなります。
次回は最終話、
・シートを使って実際に考えるをご紹介したいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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