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母と娘とノーサイド。【中3の総体】

6月は総体のシーズンである。気候の暑さにも負けず、中学3年生のがんばる姿はアツイ。

自分の勤める学校で女子ソフトテニス部の総体が行われていたので、その様子を少しのぞいてみた。

コートでプレーする選手たちを応援する中学生の声があちらこちらで響き、グラウンドは熱気で溢れている。対戦する両者のそれぞれのチームメイトが 同じテントの下で、自分のチームの選手にエールを送る。まるで応援合戦だ。

中学生たちの後ろのひな壇では、保護者が日傘を片手に娘たちを応援している。言うまでもなく、主役はコートに立っている選手たちであり、会場には100人以上の人がいるが、注目はコート上の選手たちに向けられる。

内緒で見に来たお母さん

試合観戦前に2年間担任をしていた生徒の保護者(両親)にお会いした。挨拶後、その母親は「私が来ていること娘に内緒にしてくださいね」とおっしゃった。娘は「お母さんが試合を見に来たときに負ける。」と言っているらしく、現実そういう傾向があるみたいだ。

そのため、母は日傘で顔を遮り、隠れるように遠目で試合を観戦していた。”我が子のがんばっている様子を見たい"と思う親の気持ちは中学生にはあまり分からない。でも、主役である娘の主張を飲み込んでくれる両親は、優しいと思った。

泥だらけの顔になった娘

日差しが強く地面の砂もサラサラと渇いていた。

あろうことか先ほど挨拶した保護者の娘(僕が2年間担任をもっていた生徒)がプレー中に足をすべらして、こけてしまった。

数秒立てずにいた。試合中だが、僕はコートの中に入って声をかけようとしたとき、テントの中にいた中学生たちが、こぞって こけた生徒のもとにかけよったのだ。自分の学校の生徒もだが、対戦相手の学校の生徒も、こけた生徒に近寄って「大丈夫?」と励ましていた。

その光景を見て感動した。その子は顔も服も泥だらけで、目には少し涙があったが心を折らずにプレーを続けた。ノーサイドの精神を間近で見た瞬間だった。

結局、その生徒はフルセットの末に勝利した。
試合後に濡れタオルで拭いた顔は爽やかだった。女性の顔にすこしの擦り傷ができることも痛々しいことだとと思うが、カッコよかった。

試合を見終えて、会場を離れようとしたとき、試合を隠れて見ていた母親がその娘と会話している様子が見えた。内緒で と言っていたが、娘が泥だらけでプレーをしている姿を見て、母は たまらず声をかけたのだろう。親も子も内緒ではなく、堂々と今日の話ができるようになって良かったと思った。

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