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地獄の3丁目編

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#9 1秒の重み

#9 1秒の重み

とってもとっても大変な銀座時代。
常に恐怖が隣りあわせの日々でした。

シェフの特徴を改めてご紹介したいと思います。
料理に対してはとても真剣で、妥協が大嫌い。
義理人情に厚く、武闘派である。
喧嘩が強いのが自慢。

まあ当時のシェフは暴力をふるう人ばかりでしたので、
よくいるタイプの人でした。
仕込みが間に合わないとぶちぎれる人も珍しくありませんでした。

とにもかくにも怖いわけで、キレたら大猿

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#8悪夢のまかない

#8悪夢のまかない

銀座に移動して2年が経ち、3年目になるとなんだかんだ仕事もできるようになってきました。

すこしだけ伸びた鼻を折られたり、定期的にシェフにキレられて無視されたり、いろいろありますが、少しずつ仕事ができるようになってきた実感もありました。

包丁を捨てようとしていた私からすればおそろしいほどのV字回復です。

もちろん仕事はディナー営業のみににもかかわらず激務です。
メニュー構成も明らかにキャパシテ

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#7鳩の内臓がないぞう

#7鳩の内臓がないぞう

この事件は私の中でも屈指の悲惨エピソードです。
結論からお話すると、鳩のレバーを廃棄して殺されかけた話です。

鳩とはもちろん食材でありまして、
フランス料理ではピジョンとよばれております。

基本的に胸肉と腿肉を食すのが一般的ですが、内臓も美味しくて
レバー、心臓、砂肝などを一緒に提供することもあれば、
レバー等をソースの調味料として使ったりもします。

普段は内臓を使うことが無かったわけで、

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#5本当の地獄

#5本当の地獄

ここでお肉を焼くということを簡潔に私なりに説明します。

フランス料理のメインは一般的にお肉が多いです。
煮込み料理はとても時間がかかるのであらかじめ作っておき、
オーダーが入ったら温めなおして提供します。
かたや肉を焼いて提供する場合、
オーダーが入ってから調理するのが一般的です。

20年前はお客側が料理を選ぶプリフックススタイルとういのが多く、
メインディッシュも5種類ほどから選ぶというお店

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#4 お肉が焼きたいんや!

#4 お肉が焼きたいんや!

どんな世界でもそうですが、上の人間が辞めないことには、
なかなかチャンスはめぐって来ません。
プロスポーツは成績の下降にともない、ポジションの入れ替えなどが
ありますが、料理の世界では衰えるどころか、
やればどんどん成長していきます。

ある程度学んだだら、お店を移るのが一般的なので、先輩が退職するということは、後輩にとってはまたとないチャンスであったりします。

今回は2番手の退職ということでい

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#3悪夢の海の幸

#3悪夢の海の幸

銀座に来てもう3か月、相変わらずシェフはとても怖いですが、
なんとか食らいついていました。

今思えば仕事に対する責任感が弱かった私を、シェフの厳しい目線が私を追い詰める中でも、責任感が芽生え始めた気がします。

それなりに忙しい毎日ではあったのですが、売り上げは下がっていたようで。ほとんど満席でしたので以前はそれ以上に忙しかったそうです。

当然会社からはもっと売り上げをと言われるわけで、
シェ

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#2~序章~悪夢のゴールデンウィーク

#2~序章~悪夢のゴールデンウィーク

落ちるところまで落ちた私も、いい意味で開き直ることができ、
一度死んだつもりで働くことにしました。

銀座店にはランチが無く、夜のみの営業です。
17時にオープンして、閉店は26時でした。

ランチが無いのでだいぶ楽そうですが、とんでもありませんでした。
最初は余裕だと思ってましたが、
ランチが無い分仕込みの量はすさまじかったです。

とにかくキッチンが以上に狭いです。
若い子は他の人が来る前にオ

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#1 地獄の釜の底 銀座編

#1 地獄の釜の底 銀座編

私の料理人のスタートは恵比寿にあるビストロからスタートしました。
胃カメラをのむところまで追い込まれて退職したわけですが、
3か月の療養をへて商業施設にあるレストランに勤務することになります。
ラストチャンスだと心に決めて挑みました。
結果完全敗北となります。

毎日のように殴られ蹴られ、後輩にも馬鹿にされて、
身も心もボロボロになり退職することを決めます。
というか料理人をやめることにしました。

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