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言葉をさがす旅のはじまり

新型コロナウイルスによる感染が世界を騒がせている。ホテルに携わる者として、このことについて目を背けることができない。本当はnoteを使って、オープンしたばかりの「miss morgan hotel」の魅力について、今すぐにでも全世界の人々に発進していきたい。でもこのnoteでは少し踏みとどまって、ホテルとウイルスの関係について考えを巡らせてみようと思う。

ウイルスは言うまでもなく「感染・接触・移動」に関係している。そしてわたしたちの文明もまた、感染・接触・移動によって「叡智」を広め発展してきた。これらを助長するために、過去の偉人たちによって発明されたのがホテルや交通機関であったと思う。人々が自由に行きたい場所へ移動し、触れたい文化や人に出会う、この権利を得たことが「すべてを良い方向に導いた」とは歴史を振り返ると、そう言い切ることはできない。そこには数々の争いごとや差別によって命を落とした人々が存在した。しかしその苦難や反省を乗り越えながら「感染・接触・移動」を推し進めることで、今わたしたちが手にしている「叡智」が築かれたことは忘れてはならない。まさに今、この叡智を振り絞って様々な対策に頭を抱えている人たちがいる。彼らの努力によって新型コロナウイルスの問題が一刻も早く終息することを祈りながら、わたしはその片隅で「未来」について考えている。

今回の経験が、この先どのように社会をつくり変えていくのだろう。わたしは今以上にバーチャルリアリティが進むと思う。ウイルス問題がそれを加速させるだろう。そもそも、インターネット以降加速したバーチャルリアリティの反動として、アクチュアリティを見直す動きが盛んになっていた。直に人や物に触れること、現代人は身体性を取り戻すべきだと、多くの人が声高に叫んでいたと思う。その通りだと思う。しかしそれはウイルスに感染することでもあった。ウイルスから逃れるためにはバーチャルな世界に逃れるか、もしくはプライバシーを完全に監視された世界に住むか、この2つしかない。おそらくこの2つは並行して進む。今のようなアクチュアリティを取り戻そうとする動きやプライバシーを守ろうとする考えは遠ざけられるだろう。多くの人は安全を手にするためなら進んでプライバシーを受け渡し、進んでバーチャルリアリティに浸るだろう。未来の人が選ぶであろうその選択を否定するつもりはない。

それでもわたしは今までのように、外を自由に歩きまわりたい。たとえそれが古いタイプの人間だと非難されても、わたしの喜びの大半は「いくつもの旅の記憶」からできている。それを簡単に捨ててしまえるほど、わたしは機械のようにできていない。とはいえ事態は深刻だ。今までのように、感染・接触・移動を「共感・繋がり・広がり」のようなマイルドな言葉に置き換えて、旅することの価値を伝えることは困難になることも分かっている。またいつか現れるであろう新型ウイルスへの恐怖に目を背けることのできなくなった時代のなかで、、、わたしは新しい言葉を創造する必要に迫られている「共感・繋がり・広がり」これらに代わる新しい言葉を。

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