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甲状腺乳頭癌の話6 忘却の果てに 

癌宣告以前と、その後の10年と、私の生活はだいぶ変わりました。

癌になってもこれまで通りの生活は可能でしたし、理由は他にもありましたが、会社員を辞めすっかり専業主婦になりました。
おかげで、それまであまり時間が取れなかった健康に気を遣うことだったり、好きなことができるようになりました。

そして4ヶ月毎に検査に行く、ということも生活の一部となったのです。
病院に行き、受付を済ませ、各検査で長時間待たされ、その間スタバで本を読み、時には勉強したり、食事をして、そして検査結果で大きな変化は起こらず、引き続き経過観察でと言われて終わる、という繰り返しです。

この状態が永遠に続くような錯覚さえ起こしていたようです。
時々、4ヶ月のサイクルを忘れてしまい、半年開いてしまったこともあるくらい、緊張感のない通院生活。
こうして自分が癌にかかっていることを忘れる時間が増えていったのでした。

癌宣告から9年経ち、長く診てくれていた先生が病院を去った後、毎回違う先生に診てもらうことにも慣れてきた頃でした。

いつものように検査結果を聞くべく、診察を待っていると、やけに早く私の番が回ってきたのです。
癌宣告の時の診察順を後回しにされたことがよぎります。
今度は逆パターンとはいえ、何らかの理由があるのは確かです。
そこで私は、「他に後回しにした方がいい患者さんがいるのかな。それで順番が繰り上がったのかな。」と自分に都合のいい発想で納得したのでした。

診察室に入ると、初めてお目にかかるベテランと思われる先生。
挨拶をすませ、私が椅子に座ろうとして、まだ座りきれていないタイミングで、

「リンパ節に転移していますね。」

→続く

お読みいただき、ありがとうございました。

追記:見出し画像は、「みんなのフォトギャラリー」から選択し、1753さんからお借りしました。ありがとうございます!

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