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就職活動を振り返る/仕事観・人生観

新卒で都内の大手IT企業に就職し、ITコンサルタントとして働いて3年目となる。

内定者時代は難関企業内定者(?)として就活生向けのイベントでパネリストとして登壇、入社後はOG訪問の対応、採用活動のフォロー、と経験しているので、就活生と接する機会はHRに関わっていない身としては多い方だろう。

就活生の悩みを聞いていると「就活は運と縁だ」という言説は正しいのだなと感じる。私が就職活動をしていた時期は超売り手市場だった。通っていたのは学歴フィルターで篩い落とされるような大学ではなかった。研究室配属前に就職活動を終えたので俗に言う教授ブロックに苦しんだことはなかった。人見知りを一切しない性格なのも就活を有利に進める一因になっていただろう。対面でのインターンや各種イベントばかりで、友人を作ることだって容易にできた。こういった数多くの幸運に恵まれたからこそ今こうして働けているだけなのだから、就活生に対してドヤ顔で内定を取るためのアドバイスをしようなんていうことは全く思っていない。

ただ一つ、就活軸の選定についてはかなり吟味できていたと胸を張って言える。当時の努力や先輩方によるサポートのおかげで、入社後に「こんなはずではなかった」と悔やむことなく、今もストレスフリーな人生を歩むことができている。というわけで、本記事では就活軸の選定について自分語りしていく。例によって例の如く7000字弱とかなりの長文なので、適宜読み飛ばしながら読んでいていただければと思う。

◆就職活動を振り返る

・前提

就活軸は自己分析しながら整理していくものである。働く上で自分が大事にしたい価値観をどうやって言語化するのか、といった点については自身でワークをこなすことや信頼できる大人に相談することによって解決できる。

基本的にESでも面接でも、will・can・mustで言うところのcanを見せておけば良い。そこで私は面接用の就活軸(=企業が私を採用する材料になるもの)と企業分析用の就活軸(=私が入社企業を選ぶ基準になるもの)を別で用意した。

・面接用の就活軸

面接用の就活軸は3つ。ITコンサルという職種での就職活動を前提として、矛盾が生じないように後付けで作成したものである。インターンシップは乱れ打ちしていたが本選考では総合職一括採用の制度が好きではなく職種別採用の企業の選考しか受けなかったこともあり、職種を選ぶための軸がメインである。

①自身の強みであるリーダーシップを活かせる職種
ビジネスにおける上流フェーズが向いているということをアピールする意図での軸である。グループディスカッションでもインターンシップでもゴリゴリにリーダーシップを発揮していた自覚があった。性格的にも、泥臭く努力するよりいかに要領よく物事をこなせるかを念頭に置き方針を考える方が得意なタイプなので、ビジネスの上流フェーズに関わりたいというのはもちろん本音でもあった。

②様々な立場の人と関わることができる職種
自分より上の立場の人とも臆せず接することができる、ということでクライアントの偉い人やベンターのベテランエンジニアとも上手くやっていけますよ、というアピールする意図での軸である。学生時代に力を入れたことのエピソードとして、学生NPO団体で役職なし非最高学年のときにルール改変の提案をしたネタを使っていたので、その関連付けでもある。

③変化を厭わない企業文化
先にも述べた通り、ルール改変の話をネタにしていたのでその関連付けである。Webテストとセットで行われる適性診断の類でも、伝統軽視かつ未来志向の傾向が強く出ているのは知っていたので、ある意味では弱みと見られがちな要素を強みへ変換する意図もあった。

以上である。面接は企業が私を雇う理由を整理する場なので、間違っても「ビジネスの上流に関わりたい」「色んな人と接するのが好き」といった言い方はしないようにしていた。察してもらうのではなく、ストレートに「私を雇う積極的な理由がこんなにありますよ」というのを伝えるやり方の方が私には合っていた、というのもある。

・企業分析用の就活軸

こちらの軸も3つである。そもそも仕事を人生の中心に置く気のない私は、仕事についてというより人生について考えることによって軸を選定した。これに関しては就活対策だけを目的とした自己分析ワークでは言語化するのが難しいので、インターンシップや各種イベントに参加して社員と話しながら自分の理想の人生の送り方について考え整理していった。これらの軸は面接の場では触れず、社員との座談会や相談会の場でその企業に自分が勤めたとして幸せになれるのかどうかを見極めるために使用した。

①東京勤務で転勤可能性がゼロであること
地方中枢都市も無し。絶対に東京の住み良い街で暮らしたい。ショッピングが趣味の私は気軽に百貨店に行けないと精神的に死んでしまう。オンラインショップでは物足りない。試着ももちろんそうだが、お気に入りのブランドのショッパーを提げて上機嫌で帰宅するまでが買い物なのである。他にも、六本木ヒルズや百貨店の一角で開催されるような期間限定の展示会を訪れたり、少々高くても確実に美味しいレストランで日常的に食事をとったりすることを趣味とする私には、都内に住んでいるのが最も好都合なのだ。

転勤可能性ゼロという点において、情報産業であり東京以外にオフィスを持つ利点が少ないIT業界はもってこいだった。


②勤務時の服装の自由度が高いこと
中高時代は制服だったので気づかなかったが、私は服装へのこだわりがかなり強い。大学時代は実験を行うにあたり「汚れても良い服装」「肌を露出しないようフルレングスのパンツのみ可」「動きやすいスニーカーで」等の指定がある日があったが、見事なまでに普段の服装の趣味から逸脱していたため、実験のある日はそれだけで気分が沈んだ。研究室を選ぶときも実験なしで卒論を書けるか否かを基準にしていたほどだ。なお、オフィスカジュアル、というふわっとしたワードには釣られなかった。協調性がなく空気を読むのが苦手な私には、上司や顧客の目を意識しながら無難なOL服を買い揃えるなんて苦痛すぎる。男性はジャケット着用で女性は服装が緩い、という企業にも惹かれなかった。オフィスの空調を男性基準に設定され、温度調整のためだけに服装を考えるのが嫌だったからだ。

オフィスワークでの服装制限に関しては、主に外部の人からの見え方を気にして制定される。だからこそ、100%自社オフィスでの内勤であり、外部からの訪問者が少ないような職種を選んだ。もしテレワーク環境下での就活であれば、社内外の会議においてカメラONの文化が無いことも条件に加えたかもしれない。


③収入や福利厚生が充実していること
見かけ上の収入が多いだけでも、謎の福利厚生がたくさん用意されているだけでも、不十分だ。大事なのはどんな生活を送ることになるか、である。付き合いでの飲み会や接待ゴルフは私にとっては非プライベートなので無償労働としか感じないし、使いもしない誕生日休暇制度なんて何の意味も為さない。プライベートの時間を最大化しつつ、金銭的にゆとりのある生活ができそうかどうかを気にしていた。社員に質問をするときは、ストレートに額面年収をきくだけでなく、入社何年目くらいから大きな買い物(100万円以上かかるもの、たとえば自動車など)を抵抗なくできるようになるか、節約志向の人であれば月に何万円ほど貯金できるのか、などの具体的な生活イメージを教えてもらった。

以上である。ワークライフバランスという抽象的な言葉を私なりに具体化したらこうなった、という解釈もできるだろう。基本的に労働への意欲がないので、仕事を通した自己実現(興味関心ややりがい等)については全く重視しなかった。面接用の軸もそうだが、いかにストレスなく稼いでプライベートを楽しみ人生を充実させるか、を大まかな方向性としていた。今でもそれは間違っていなかったと言える。

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◆仕事観・人生観

自身が就活をしていた時も、社員として就活生と会話する今も「よく聞くがいまいちしっくりこない仕事観」に触れるシーンというのがかなり多い。これは私が、仕事は稼ぐ手段であり人生の中心に据え置く物ではなくあくまで人生の一部分だ、と割り切っているからかもしれない。というわけでここからは「よく耳にするかつロジックがいまいちわからない仕事観・人生観」について、いくつか触れていく。

・よく聞く仕事観・人生観

「興味のある分野の業界/職種に就職したい」

→興味関心があるだけなら、大学院や専門学校への進学を検討してみては、と思う。そもそもなぜ働きたいのか、という点が整理できているのなら何も問題はないが。

「好きなことを仕事にしたい」

→趣味で取り組めば良いのでは、と思う。好きだが苦手なことを仕事にしてしまうと自分自身も辛いし関係者にも迷惑がかかる。好きでありなおかつ得意でもあることを仕事にしたい、という意図で言っているのならばそれは天職となる可能性を秘めているのでぜひ応援したい。

「成し遂げたいことがあるので、それを実現できる会社に入りたい」

→さっさとビジネスを立ち上げてしまえ、と思う。会社勤めを選ぶ理由が明確にあるのであれば良いが、そうでないなら自分で事業をした方が早いし組織運営上のしがらみも無くスムーズに事を運ぶことができるだろう。

「自分にしかできないことをしたい」

→さっさとビジネスを立ち上げてしまえ、と思う(2回目)。会社勤めで自分にしかできないことをしたい場合、未熟な組織であれば各スキルは属人化しているだろうが、それは失敗した際のフォローをしてもらえないことや休暇で不在にする際に自分の関わる仕事が全てストップすることと隣り合わせになる。そのあたりを把握できているのか心配になる。

「人生において仕事をしている時間は長いのだから、仕事内容を重視すべきだ」

→この「だから」は必ずしも成り立つとは限らない。人生において睡眠時間が長いからと寝具にお金を注ぎ込んでいる人や、中高時代の思い出は部活でもなく修学旅行でもなく放課後の寄り道でもなく最も時間の長かった授業である、という人であればこのロジックは当てはまる。しかしながらほとんどの人はそうではないだろう。数字は嘘をつかないが数字を使って嘘をつく人はいる、という話の良い例のように思える。

「柔軟な働き方を推進する会社は全て先進的で、そうでない会社は遅れている」

→これは必ずしも正しいとは限らない。業界特性を加味する必要がある。一見理不尽に思えるルールについてはその会社そのものというよりは顧客の存在がネックとなっているケースが多い。金融機関を顧客とするならマーケットの開始と合わせた早い時刻が定時とされて当然である。東南アジアをターゲットとする会社では女性が責任者として現地企業と交渉すると現地の男尊女卑の文化から敬遠されてしまうが故に女性の役職者が限定される、なんてこともあるだろう。企業の努力だけではどうしようもない部分を無視して勝手に優劣をつけてはいけない。

「年収は◯◯万円ほしい」

→数字にこだわる意味はあるのだろうか。親の年収を超えたい、等の事情があるのだろうか。物事は定量的に〜、という指導を丸呑みしているだけで年収〇〇万円の暮らしが想像できていないのではないかと疑ってしまう。定量データももちろん必要だが、多くの人にとって大事なのは額面年収ではなくどのような生活を送ることができるか、だろう。定量・定性の双方の観点から自分の理想を整理した方が良い。

「月残業時間は少ない方が良い会社である」

→よっぽどのブラック企業なら話は別だが、しっかりと残業代を払う普通の会社であれば、残業時間だけで良し悪しを判断はできない。若くて体力のあるうちに働けるだけ働きたい、という人は好きなだけ働ける会社が良いだろう。また、社会人サークルで活動したい人にとっては特定の曜日に定時退社できる会社が向いており、繁忙期の有無や業務量調整の可否を気にしなくてはならない。年収同様、月の残業時間よりも何時に退勤してどんな生活を送るのかという視点を持った方が良い。

「残業をたくさんする人は優秀ではない」

→残業をする人を優秀だとする考え方が前時代的で意味不明なのはもはや周知の事実だ。だがもう一歩踏み込んで、そもそも残業量を基準として優劣をつけようとすることの正当性を疑った方がいい。若くて体力のあるうちにたくさん働いて稼ごうとする人は皆仕事のできない人なのか。そうではないだろう。望まぬ残業を強いるマネジメント層は確かに優秀ではないかもしれないが、プレーヤーとしては絶対的な残業時間よりもこなしているタスク量や周囲への影響を評価の基準とするのが妥当である。

・企業にも就活生にも優劣は無い

就活の場では往々にして業界内順位や強み弱みといった言葉が使用されるが、基本的にそこに優劣は存在しない。存在するのは特徴と向き不向きのみだ。表面的には企業が就活生に優劣をつけているように見えるかもしれないが実際は自社の求める人物像にマッチするか否かを判断しているだけである。同様に、就活生側も自分の入る会社を選べば良いだけで、各企業に優劣をつけようなんて考える必要はない。たまにこの大前提を失念しているであろう口ぶりでモノを語る人がいて、つい冷ややかな目線を向けてしまう。

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◆就活時代に読んだ本

自分語りばかりしてきたが、ここまで目を通してくれた人の中には実際にこれから就職活動を始める方もいることだろう。個人の体験談なんて他の人に当てはまるとは限らないし、ただのサンプルにしかならないので、私の自分語りに関しては適当に流してくれればそれで良い。

というわけで、ここからは私が就活時代に読んで良かったと思える書籍について紹介していく。世の中にはたくさんの胡散臭い就活対策本があるが、小手先のテクニックでもなんでもない、真に人生の役に立つまともなものもあるので安心してほしい。

・自己分析用

『ハーバードの自分を知る技術』

就活のための自己分析に気乗りしない人、自分の黒歴史と向き合うのが怖い人にぜひ読んでほしい。過去は変えられなくても過去の振り返り方や過去の表現の仕方は色々ある、ということがわかりやすく書かれている。何より、この本を読んでワークを実践するとなんだか自分が素晴らしい人物であるように思えてくるので、自信を失いがちな就活生におすすめである。

『絶対内定2023 自己分析とキャリアデザインの描き方』

定番の就活対策本である。タイトルは薄っぺらいが、ワークの質も量も申し分ない。この1冊を1〜2周して自己分析の勘所を掴んだら、あとは日常生活でも自分について考える習慣が自然とつくようになる。

・就活対策用

『採用基準』

就活初期に読むと良い。そもそも企業はどんな人材を求めているのか、ということが気になる人向け。良い意味でのタイトル詐欺が素晴らしくて感動した記憶がある。

『新卒採用基準:面接官はここを見ている』

内定を得るためには別に熱意も忠誠心も理念への共感もなくて良い、ということがこの本を読めばよくわかる。自己分析によって浮き彫りにした自らのアピールポイントを、企業へ提示できる状態まで整形したいタイミングで読むと良い。

・番外編

『異文化理解力』

外資系企業に行くわけじゃないから、国際色の強い仕事をしたいわけじゃないから、というのは、この本を読まない理由にはならない。立場の異なる人と接しながら仕事をする全ての人が読むべき1冊である。立場の異なる人である採用担当者と接する就活生ももちろん例外ではない。無意識のうちに染まっている価値観を可視化し、認識のすり合わせを行うことができれば、大抵のコミュニケーションはうまく行く。この本を通して、そのことを学んでほしい。

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◆あとがき

大学受験の話をいつまでも引きずる大学生、就職活動の話をいつまでも引きずる社会人、いずれも地雷である。この意味で、私も地雷なのかもしれない。ただどうしても「バリキャリ志向でもなく仕事が好きなわけでもなく会社の人とプライベートでも仲良くしているわけでもない人間でも、満足度の高い人生を送ることができる」というのは声を大にして言いたかった。いま苦しんでいる就活生のためというよりも、やりたいことも好きなことも見つからず、労働への意欲の無さからか最終面接で5社連続お祈りを食らって絶望していた過去の自分のために、兼ねてより就活振り返りの記事は書きたいと思っていた。価値観は可変であり、もしかしたら転職したいと強く願う日が来るかもしれない。それでも、少なくとも就活時代の私はよく考えを練っており20代半ば時点での生活はなかなか悪くなかった、という事実は忘れずにいたい。


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