憧れたブロガーさんがニセモノだった話
高校生の頃に、よく見ていたブログがあった。
彼女は20代後半くらいでロンドンに住み、私が好きなバンドの写真を撮ったりしているフォトグラファーということだった。
美しい写真と共に日々更新される、日記のような記事。
仕事の話や、友人と訪れた新しいレストランの様子、彼と過ごす休日のこと。
ロンドンを舞台に繰り広げられる、憧れが詰まった映画のような世界に、私は夢中だった。
その当時はSNSなんてものはまだ無くて、彼女にはブログについていた掲示板を使って時々話しかけた。イギリスの文化や人々の暮らしに興味津々な私の質問に丁寧な返信があるたびに、私は憧れの人に勝手に一歩近付いたような気持ちで、うきうきしたものだ。
ある日、彼女は突然消えてしまった。
あんなにたくさんの思い出が詰まっているはずのブログも、たくさんの読者がコメントを残していた掲示板も、跡形もなかった。
後に、私は他の読者の方の情報で、彼女がニセモノであったことを知らされた。
写真はすべて他の人が撮ったものを無断使用していたこと。
年齢も実はかなり年上で、若くはなかったらしいこと。
実はロンドンには住んでいなかったこと。
写真を無断使用されていた人が、自身のブログで告発したことが発端となり、彼女は逃げるようにインターネットの世界から姿を消したのだった。
なんだか裏切られた気持ちになった。
若くして憧れの国でイキイキと活躍する彼女の日記を読んで、私はいつか彼女のようにロンドンに暮らすのだと。そして私も彼女のように、自分の暮らしについて美しい文章と写真で発信したい。そう思っていたのに。
彼女の音楽を語るあつい言葉や、美しい生活を綴る文章は本物なのだと信じたかった。
あれから時は流れ、今の私は当時の彼女が演じていたような「ロンドンで暮らす20代後半の日本人女性」になった。
好きだからこそ、写真を撮っているし、好きだから書く。でも、発信する私のモチベーションに何の欲も無いといったらきっと嘘になる。
私は世界のステキなところを伝えていきたいし、生活の中のステキな物事を共有することで、「好き」が似ている者同士で情報交換ができたら良いと、心から思ってる。
何か学びがあったのなら、まだそのことを知らない誰かに共有したいし、好きな本があればもっと多くの人に読んでもらいたい。
高校生の頃、あこがれのブロガーさんに裏切られたように感じたあのときの気持ちは、ネガティブだけれど私の発信の原点。私は、私の視点から正直に言葉を紡ぎ、私の視点を切り取って写真に収めたい。そして、その景色や言葉が、誰かの心を動かしたり、ステキな時間を過ごすヒントになったり、「好き」が似ている者同士の和やかな関わりに繋がったのなら、こんなにも幸せなことってない。
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