現場レポート:「今の若手はマネジャーになりたがらない」は本当か?調査結果から考えてみたこと
事業拡大中のITテック企業(創業数年目)からこんな相談を受けました。
「ここ数年でどんどんマネジャーを増やさなければ事業拡大に体制が追いつかないのだが、マネジャーになりたい、と言ってくる社員がいない。ついては、若手のリーダークラスからマネジャーになりたい!と手が挙がるようになる、そんな研修を企画したいと思っている。」
きたー、若手がマネジャーになりたがらない問題!いま、多くの企業が同様のことを抱えていらっしゃるのではないでしょうか?
「マネジャーになりたい!と手が挙がるようになる研修」とはなかなかの難題!そして、私の中では「なぜマネジャーになりたいと手が挙がらないのか」「解決策は研修なのか、他にもあるのか」など頭がぐるぐるとしてきました。そこでプロジェクトメンバーを集め、調査を開始しました。
今回は、この調査結果から見えた以下のことについて2回にわたってお伝えします。
若手は意外とマネジャーになりたがっている?
大事なのは「いつ」「どこで」「どんなふうに」
キーワードは「成長」!
あくまでもこのクライアントでのお話のため、広く一般的にどこまであてはまるかわかりませんが、どの企業にとっても示唆のある話だと思いますので、がんばって書いてみます。
6割が「マネジャーになりたい」
調査は、若手メンバーに対して、「マネジャー志向」に影響を与えそうな組織への感情や、本人のキャリア志向について把握するためのアンケートを実施しました。
アンケートの結果はこうでした。
マネジャーになりたい人 約60%
なりたくない人 約15%
わからない人 約25%
予想に反して「なりたい人」が6割で、「なりたくない」層が一番少ないという結果に!これはとても嬉しい誤算!世の中の若手はマネジャーになりたがらない、ではなかったのか・・・?
(「マネジャーになりたいですか?」という質問を直接したのではなく、自由回答なども使い、なりたいかどうかわかる質問を複数した結果です。)
「マネジャーになりたい層」がそれなりに厚いことがわかったので、ここで調査終了!研修不要!めでたしめでたし!かとも思われたのですが、ここで疑問が出てきます。
「マネジャーになりたい」のに、「マネジャーになりたい」と手を挙げない=自分で言わないのはなぜなのか?ということです。そこで、インタビューもしっかり行うこととしました。
その前にこの企業の採用状況について少し補足します。
・20-30代のキャリア採用が中心
・大手企業から転職してくる人も多い
・明確な企業理念に惹かれてジョインする人が多い
ということは、転職時に自身のキャリアをしっかり見直し、自分の方向性も明確で、かつ、会社へのコミットメントや貢献意欲も高いから、積極的に「マネジャーになりたい」と思っているのだろう、と思いますよね!
ところがインタビューをすると違う面も見えてきて、そこに、若手社員の本音が透けて見える気がするのです。
「マネジャーになりたい」本当の気持ちとは
数名の社員の方へのインタビューを行った結果、「マネジャーになりたい」層の方々は、こんなふうに考えていることがわかりました。
転職をするときに、やりたいことや今後のキャリアをしっかり考えた上で、この会社に魅力を感じて入ってきた。
↓
入社後も良い会社だと思えていて大きな不満はなく、仕事も楽しい。おおむね期待した通りの知識やスキルが得られている。
↓
とはいえずっとここにいるかはわからない。他にやりたいことが見つかったら転職する可能性もある。マネジャー経験はあったほうが転職もしやすいとも思う。「やりたいことが他に見つかる」か「ここでマネジャーになる」かどちらが先か。
↓
この会社が成長して仕事の領域が広がり、ここで自分も成長ができると感じたら、マネジャーになって長く続けるかもしれない。
全員が全く同じというわけではありませんが、まるっとまとめてみると、こんな流れのことを語っていました。
「マネジャーになりたい!」と積極的な意志と感情を持って言っているわけではなく、「自分の成長やキャリアに必要だからマネジャーになる」と語っており、それがいつ、どこでなのかは、「自分の成長」にとって何がベストなのか考えている様子がみられたのです。
一方で、「今すぐなってほしいと言われたらやる!」とか「もっと会社から期待を伝えてもらいたい」とか「自分の感情として"なりたい"と思えるようになったら」などなど、「いつかマネジャーに、とは思っているけども、自分から周りから、もっと心を動かされてなりたいのだ!」という欲求も感じられました。
必要だから=needsではなく、心から思う=Wantsということでしょうか。
「わからない」理由は「イメージできない・今じゃない」
次に「マネジャーになりたいかはわからない」という社員の意見についてです。この層は約25%で「なりたくない」と考える人よりも10ポイントも高く、また、20代もしくはキャリア入社1-2年の社員の割合が高くなっていました。
具体的にはこんな感じです。
自分のキャリアにマネジャー経験は必要、とは思っているものの、今はまだ自分の業務で精一杯で、今後のことを考える余裕がない。まずは仕事を覚えて一人前になりたい。
マネジャーの業務がイメージできないのでわからない。マネジャーと交流する機会がもっとあって、実際どんなことをやっていて、どんなスキルや経験が必要なのかなど、イメージが明確になったらなりたいと思うかもしれない。
「目の前の仕事で精一杯でキャリアについて考える余裕がない」というのは、他の企業でも「キャリア入社1年目」もしくは「違う職種への異動1年目」の方に多くみられる意見です。まずは目の前の業務を1年回す経験してみないと、キャリアなど視点を広げる「土台」みたいなものができないというのは、私の感覚としても理解できるところです。
「今は考えられない」「まだイメージができない」という社員のためには、マネジャーの業務についてイメージできる「しかけ」を用意しながらタイミングを待つ、ということなのかも知れません。
ここまでのまとめ
ここまでをまとめると
キャリア採用などでキャリアををよく考えた上で転職をした方であれば、「自分の成長のためマネジャーを経験することは必要」と考えている人は一定数いそうだが、
それがゆえに、いつ・どこでマネジャーになるかは決め切れていないため、自分から「マネジャーになりたい」とは手を挙げにくい。
よって、マネジャーになって欲しいと会社が思う社員には、その期待を伝え続けたり、マネジャーの業務が見えるような働きかけや関係づくりをして、「なりたい」気持ちを徐々に醸成していくことが必要なのではないか。(早くからその取り組みをしていないと、知識・スキルを得て育ったところで辞めちゃうかもしれないから。)
ということでしょうか。やはりこの問題はそれなりの時間と労力がかかりそうですね・・・。でもそれがこれから大事になってくるのだと思います。
次回は、もうすこし考察を進めてみます!ここまでお読みいただきありがとうございました。
(よかったら「スキ」してね!私からのいろんなメッセージが出るよ。)
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