「マネジャーになりたい/なりたくない」という声をどう捉えるか〜背景にある心理と施策の考え方
前回の続きです。
ある企業において30代前半までの若手を調査したところ、6割が「マネジャーになりたい」って回答したよ、ということを書きました。その続きで、そこから考えたことについてもうちょっとお話してみたいと思います。
社員側の「マネジャーになりたいか」に加えて、企業側の「なってほしいか」も大事だよ
回答者側は必ずしも正直に回答するわけじゃないからアンケート設計と読み込みは大事だよ
前職を辞めて転職してきた人の声からも考えるべきことが見えるよ
企業側の「マネジャーになってほしいのか」の視点も必要
「事業が急成長しているが、このままだとマネジャーが不足して成長できなくなる。若手がマネジャーになりたい!って自然と手が挙がって、無理なく充足されるようにしたい。」
そんなご相談からこのプロジェクトは始まりました。
その話はこちら
そこで、まず、若手に調査を行ったところ
マネジャーになりたい約60%、わからない約25%、なりたくない約15%
と、予想に反して、なりたい層が一番多くて、なりたくない人がたったの15%だった、ということは前回書いた通りです。
ところで、わが師匠の中原淳氏はブログの中でこのように述べています。
おっと!
どういうことか、その後に書かれていたことを要約します。
実はこの企業では、以前、「マネジャーになってほしい人」をアサインした結果、その人が辞めてしまった、ということがあったそうなのです。
会社側が「マネジャーになるスキルや能力があるから是非なってほしい」と考える人と、「マネジャーになりたい」という人のアンマッチがあったのですね。このようなことは二度と起きてほしくない、ということでした。
このブログをプロジェクトメンバーで読み、このように考えました。
個人の「マネジャーになりたい度」:なりたい・わからない・なりたくない
✖️
企業側の「マネジャーに今すぐなれる度」:なれる・なれない
この6つの象限にわけ、優先順位を決める
象限ごとの各施策の内容は、インタビューからわかった「なりたい理由」「わからない理由」「なりたくない理由」を踏まえて検討する
こんな感じです!いい感じで整理されてきました。
施策(解決策)の詳細については現在検討中ではあるものの、クライアントも、私たちメンバーも、進むべき方向がとってもクリアになりました!
浮かび上がってきた"声にならない声"
解決策を考える上で、もうひとつ、重要だなと思っていることがあります。
人事からのアンケートで
「あなたはマネジャーになりたいですか?」
たったこれだけ聞かれたら、あなたはどのように答えますか?
私なら「人事はこの結果を使って何をするつもりだろう?」といぶかしみ、「わからない」につけるだろうと思います。
あるいは「こんな会社でマネジャーなんかになるかよ!」と思ったら「なりたくない」につけます。「人事にアピールしといた方がいいな!」と思ったら「なりたい」につけます。
このように、
組織や人事に対してどんな感情を持っているかで、回答は変わるのではないか、と思ったのです。
よって、調査設計は慎重に行いました。組織や職場に対する意識も入れて、目的、設問数、設問の仕方、回答順、自由記入をどこでどう入れるか、クライアントとも検討を重ねました。
この企業でも年に1度組織サーベイは実施していますが、いわゆる一般的な調査で質問数も大量。ここではクライアントの現状を踏まえて、個人のキャリア志向に影響を与えそうな組織・職場の項目に絞りました。
設問の仕方や順番にも注意しました。
たとえば「マネジャーになりたいか?」といきなり聞くのではなく、
組織の中でチームメンバーをまとめ、成果を出すことに興味があるか?
マネジャーになることはあなたのキャリアにとって大事だと思うか?
などの質問と、自由コメントによりその人の思いが把握できるようにしたのです。
その結果、自由コメント欄には「アンケートをとってくれてありがとうございます」「こういうアンケートは毎年やってほしい」という意見もあり、たくさんの記述が見られました。(ここには企業の社風も影響していると考えられます)
回答を読みこむうち、社員のみなさんが感じている組織への課題感や満足感、マネジャーになることへの思い、そしてその間の関係が、ぼんやり浮かび上がってくる気がしてきました。社員の職場に対する満足度は高くて、コミットメントも高いこともわかったのですが、同時に、
もっと社員同士のつながりを感じたいな・・・
経営層と、マネジャーと、そして他の部署のメンバーと、もっと交流したいな!
こんな声が聞こえてくるような気がしたのです。声にならない声、というか、
実際にはちょいちょいこの手の発言があったので、
「みんながなんとなく思っていてそこに漂ってはいるけど、ちゃんと見ていない空気」
といったらいいでしょうか。
前回書いたように、「マネジャーには自身の成長のためになりたいとは思っているものの、本当はもっと、感情を動かされてなりたいのだ」と思っているらしいことと、どことなく、つながっているような気がしたのですよね。あくまでも「気がする」というレベルですが。
社員は、会社の実施するアンケートに本音で答えるかわからないし、
答える方だって本音がわかっていないこともある。
だから、なにか本人が言葉にできていない思い、漂う空気が浮かび上がってくる調査にしたいし、なんとかそこを読み取って、解決策に活かしたい、と思うのです。
(設計も読み込みもめっちゃくちゃ大変なんだけど。)
「前の会社ではマネジャーになりたくなかった」理由が気になる
最後にちょっと気になったことを。
この企業には、大企業から転職してきた方々も多くいらっしゃいます。
急成長中のスタートアップ企業には最近その傾向が顕著かなと思うのですが、その方々がおっしゃったことで気になったコメントがあります。
「前の会社(大企業)ではマネジャーになろうとは思わなかったです。
!!!
その理由は、
がんばってもマネジャーになるのに10年以上かかる(15年以上かも)
得られるものがその企業でしか通用しないスキル、すなわち、さまざまな部署や人を「調整するスキル」が大半で、それを身につけたいとは思わない
そもそもマネジャーがちっとも楽しそうに見えない
(すべて真実とも思わないし誤解もある気がするものの、若手がそう思うのもわかる気がするので)なるほど。
それに比べて今の会社は、ポータブルスキルが身につけられるし、マネジャーが楽しそうだから、なってもいいな、というふうに思えます。
というのです。
自分の「成長」とかキャリア、得たいスキルを真剣に考た人が、大企業から去っているかもしれない、というこの現状を大企業側はどう捉えるのでしょうか。
そういう人には辞めてもらっていい、というのもあるでしょう。いろんな捉え方があると思うのですが、今後の人事施策の重要な視点になりそうです。
ということで、2回にわたってお伝えしてきました。2回目はこんなことを書きました。
社員側の「マネジャーになりたいか」に加えて、企業側の「なってほしいか」も大事だよ
回答者側は必ずしも正直に回答するわけじゃないからアンケート設計と読み込みは大事だよ
大企業を辞めて転職してきた人の声から大企業が考えるべきことが見えるよ
ちょっとまとまり悪かったけど、お読みいただきありがとうございましたー!
気に入ったら「スキ」してね。運が良ければ「大吉」が出ます笑
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?