見出し画像

No.148 旅はトラブル / オランダ・アムステルダム&イングランド・コッツウォルズ訪問ひとり旅2012(1)

No.148 旅はトラブル / オランダ・アムステルダム&イングランド・コッツウォルズ訪問ひとり旅2012(1)

連れ合いの由理くんが亡くなって翌年2010年8月下旬から、ほんの少しの下調べだけでの「イタリア再訪ひとり旅」(No.133 No.135 No.136 No.137 No.138 No.140 No.141 No.142 No.143 No.147)を、半ばそれから生きる上での何かを掴みたいような心持ちで、半ば塾の生徒や保護者の方々との約束を果たすような気持ちで履行した後に「後悔」の言葉は浮かばず、日常生活に戻る時空にじわりと「思い出」がもたらす「充実」の言葉の広がりを感じていた。

イタリアの風土と新旧の数々の出会いは、良き気晴らしをも与えてくれた。前年の自分の活動を長々と記した「年賀状代わり」を書き、封書で友人たちに送るのを毎年の恒例としている。「イタリア再訪ひとり旅」の様子を書き進めると、思い出が頬を風のように吹き過ぎて、ひとり旅のゆえでもあったであろうか、日常生活では味わえないような事項の一つ一つが次の旅へと僕をいざなった。

何かと忙しかった翌年2011年は、長期の休みを取らずに2012年を迎えた。趣味であるマジック、映画、読書、映画、グルメの話に溢れるも、旅の話が無いこの年の「年賀状代わり」は、一抹の寂しさを含んでいるように僕自身が感じてしまい「漂白の思い」が、心のうちに一枚一枚と、そこに書くべきものがある白紙が重なるように募っていった。

ジュンク堂の旅行本コーナーに足を運び、写真の美しさやお洒落な雰囲気が気に入り「Figaro Japan Voyage フィガロジャポンヴォヤージュ」を数冊購入して、空の青さの深さを推し量り、街の香りを嗅ぎ取ろうとして、未訪の地への想いを膨らませた。そう、旅の高揚感は準備の段階から始まっているのだ。

購入した「フィガロ」の一冊「イギリスの田舎町へ」を見て、イングランド中央部「羊の丘」を意味する「コッツウォルズ」地方に惹かれた。古い田舎の街並みを残す村が数多くあり、ガーデニングを愛するイギリス人が退職後の住まいとして憧れる土地らしい。築300年とかの建物を利用したり、かつての豪商の屋敷を改装したホテルなども魅力に溢れていた。

「コッツウォルズ」のみの旅程も考えたが、10泊の予定を考えると他に一つか二つの都市を訪れることは十分に可能だったので、行きの到着地と帰りの出発地を変える「オープンジョー」と呼ばれることもある航空券の購入方法を、2012年の旅でも選択した。

運河や中世時代の建築物で知られるベルギーの小都市ブルージュ訪問には以前から惹かれていた。ベルギーへの直行便はないので、まずオランダ・アムステルダムに行き2泊と観光、そのあと様子を見てレンタカーか列車でベルギー・ブルージュに移動、3泊してから、イギリス・ロンドンへ飛行機で移動、初めてのイギリスだが大都市ロンドン観光よりも、田舎の街並み「コッツウォルズ」を優先、レンタカーで移動、イギリスで合計5泊、帰りの飛行便はロンドン・ヒースロー空港からという日程を組んだ。

2012年8月30日成田出発の一週間前、「2010年イタリアひとり旅」で始めの2泊のみローマ市内のホテルをネットで予約したのと同じように、到着日と翌日のアムステルダム市内の宿泊ホテルを決めるべく、ネットで検索を開始した。残りの宿泊は現地での調達となる。

「旅の印象は宿泊する場所で大きく変わる」と言う意見に、僕は与(くみ)する。ネット検索でアムステルダムのホテルを見ていくと日本の老舗「ホテルオークラOkura」があり、他の五つ星ホテルの半額ほど、かなり安い値段となっていて間違いではないかと何度か見直したほどだった。

イギリス・コッツウォルズは雑誌からの情報があるが、オランダ・アムステルダムはさっぱり調べていなかった。ブルージュへのアクセス方法もあやふやな身としては、ヨーロッパで唯一の「ホテルオークラOkura」が世界に誇る「日本のサービス精神」は魅力であり「ホテルオークラOkura」のコンシェルジュの頼もしげなな笑顔を思い描きながら「2泊宿泊」をエンターキーで確定させた。

8月29日夜、成田までマイカーで移動。成田空港近辺のホテルのいくつかは、二週間ほど無料でマイカーを預かってくれるサービスがあり、一泊のホテル代金のお釣りがくるほどである。「ホテル日航成田」のベッドでゆっくりと過ごした翌朝、ホテルの外に出ると湿気を伴った夏の暑さが恨めしい。

成田空港に向かうシャトルバスの中で「2010年イタリアひとり旅」を思い返していた。何日かは日本に負けず劣らずの暑い日があったが、東京の熱帯夜は忘れて過ごせた。今回の予定訪問地オランダ、ベルギー、イギリスはいずれもイタリアよりも高緯度になる。「暑さ」でのトラブルは無さそうだが、旅には「トラブル」がつきものだ。

僕の旅は特にそうなのだろうか、新たな「トラブル」に期待してニヤついている自分自身の顔がシャトルバスの窓に微かに映っていて、さらに苦笑してしまった。

・・・続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?