孔雀のスケッチブック

Die Eule der Minerva beginnt erst mit der e…

孔雀のスケッチブック

Die Eule der Minerva beginnt erst mit der einbrechenden Dämmerung ihren Flug. 目に映った風景を模写するように。 HP→https://imnkujaku.com/

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Sepiafarbe

世界は突如として色を失った。 海底に潜り、殻の中から泡の言葉を紡ぎ出していれば、この嵐は過ぎ去るかもしれない。 しかし私は想像する。 アレントをしてその陳腐さで愕然とさせた一人の小人を。 殻から這い出し、潮風を吸う時に私がその小人になっている事を。 ある決断を迫られた時、然るべき判断を下せるよう、私は準備を整えておかねばならない…… 本性的に人間は苦しみを避け快楽を求める。もっぱらこの意味でのみ歓びが善の表象となり、苦痛が悪の表象となりうる。かくて楽園と地獄の表象作用が生じ

      • Oshaberi #3

         ソクラテス やあ、ルートヴィヒ。  ウィトゲンシュタイン やあ、ソクラテス、どういう用件で?  ソクラテス 今日はね、君に紹介したい僕の友人を連れてきたんだ。  ウィトゲンシュタイン それは珍しいこった、君が連れてくるからには当然、大物なんだろうな。  ソクラテス それがね、なかなか拗らせた青年でね。なかなか面白いんだけど、やや僕には手に余るところがあってね。君と話してもらいたいんだよ。ほれ、おいで、ロージャ。  ラスコーリニコフ ……  ソクラテス こちら、ロジオン・ロマ

        • 実験的連続投稿 #2

          (承前)  第一の問いに対する1つ目の事例として、私は数学を挙げよう。数学とは明証的にことがらを説明する極めて優れた手段である。その昔、プラトンが私設した学園の門前に「幾何学を知らぬもの、くぐるべからず」[1] と掲げ、哲学を修める者に数学的認識を前提として要求したことは有名な話である。あるいはまたペンローズ氏が主張することには、物質的世界は「プラトン的世界の小さな部分」である数学によって全体を原理的に記述できるということである。[2]  彼らの言葉から分かるのは、この世界

          実験的連続投稿 #1

           ここに私は一つの実験の開始を宣言する。それは連載紛いの投稿である。やはりある程度「書く」ということに対してプレッシャーを与えていなければ、考えが捗らない。やがて「読む」ことの無為性に自己が圧壊してしまいそうになるのである。とは言っても、この実験はほんの先ほど思いついたものに過ぎないし、途中で気が変わってやめてしまうかもしれない。それにこれから書こうとしていることは、私が今まで書いてきたことの統一性を再度確認する類のものであり、目新しい論説にはあまり手を出せそうにない。全10

          実験的連続投稿 #1

          20231016

          昨日のこと、一本の論考を脱稿した。今は印刷待ちで、週末ごろには手元に届く。前回の「自己」に関する論考に続き今回は「芸術」について書いた。週末の読書会とコミティアでお披露目し、ネットでの公開もいずれやっていく予定である。 執筆には1ヶ月ほどしか使えなかったものの、それなりに私の中心に近いものを表す内容になったように思う。もともと私は科学や技術に関する哲学に興味があるのだが、今回の論考で芸術を経由地にして、技術と宗教を結んで考える筋が見えたような気がする。 今回は目標に間に合

          Chiramise #2

          本稿は2023年9月10日文学フリマ大阪の出品作品『「自己とは何か」をめぐる諸考察』からの抜粋です。本作について詳しくは以前の投稿をご参照ください。  こうして我々は、自己意識の運動を経て精神つまりは社会的共同体を形成しうる自我に到達することができた。ヘーゲルに言わせれば、「人類の歴史はフランス革命において完結した」。つまり彼の哲学は、近代の哲学の一つの結論である。では、歴史が一度完結されたのち、世界では何が起きたのか?ーー産業革命である。組織化された生産体制のもとに資本を

          20230915

          哲学カフェにて。 「人権を尊重しようというのは世界の合意なのに、内実それが蔑ろにされている。なぜそうなるのか私にはわからない。」 それはほろりと零れ落ちた。 ああ、なんて優しい人。 私は雨音を聞きながらそれを眺める。 雨樋を滴る水玉は地面に到達すると、弾けて消えた。 ――理想はそうだ、でも現実には…… 濡れたアスファルトは異様な匂いを放つ。一度たった異臭はなかなか消えない。 心の奥底から湧き上がる悲哀の叫びはあんなにも美しかったのに。一瞬で失われてしまったのだ。 その

          Chiramise

           先日、私がファシリテーターを務める哲学カフェで「自分とは何か」をテーマに、参加者の方々と議論を交わしました。まさに喧々諤々の議論で、興味深い視点も多々見つかりました。内容はさておき、私はやはり本読みですから、こうして集めた視点をもとにもう一度、本(もちろん哲学書)の頁をめくりながら持ち帰った議論の一部を一人で反芻するのです。すると、どうしたことでしょう、読めば読むほど沸々と書きたいことが湧き上がってくるではありませんか。そして、ここぞとばかりに書き上げたのがこの『「自分とは

          精神の鏡像性。 その投影先つまり媒体としての、自然、芸術、そして己の精神そのもの。 映し出された永遠の真理と美に我々は見惚れる。 死の淵に臨むナルキッソスのように。

          精神の鏡像性。 その投影先つまり媒体としての、自然、芸術、そして己の精神そのもの。 映し出された永遠の真理と美に我々は見惚れる。 死の淵に臨むナルキッソスのように。

          200

          2021年8月、社会人になってから読んだ本の冊数が100冊に達したことにワクワクしてnoteを投稿したことがありました。 それから19カ月、さらに100冊の読了本が増え、気がつけば計200冊を突破していました。 ええ、わかっています。読書は数で評価するものではないですし、200冊分の全てを理解しこの頭の中に叩き込むことができているわけではないことも。(そして何より古典的・芸術的な面で種々の価値を持つ本々を前にしながら、何と多くの活字を滑らせてきたことか!私は忘却的である前

          Karee wo Tsukutte

          カレーを作りながらハイデガーの技術論を思う 自然を挑発してかり立てる 質料因としての食材から香り・味・食感を引き出す これをかり立てる作用因としての私 スパイスの香りは親油性 油に浸して温度を上げていく過程でその香りを解放する 野菜・肉の旨味の秘密は糖分とタンパク質がカラメル化したこげにあるそうな この反応を促す酵素は高温で破壊されてしまうから低めの温度で時間をかけてやらないとうまくいかない 玉ねぎの皮もパセリの葉も煮ると出汁が出る じゃがいもの皮も牛乳で温めると香り

          die Dunkelheit

          部屋に篭ってひとり 雪の降る音を聞きます 賑やかさとは無縁の 窓の向こうの闇に 私は聞き入ってしまっているのです 私の部屋は小さくて 蝋燭の影は壁を舐めています 柔らかに生成流転する 瞬きの連続が 私から少しずつ命を吸っていくのです 私を囲う壁は相変わらず 先人の思想の香りを閉じ込めます テキストから揮発する 数々の言葉が 私を酒に酔うバッカスに変身させるのです ただひとり過ごす部屋で 神の体を弄ります 存在という不思議を 思い出してはこう

          Dia(Mono)logue #1

          「”……公式調査では、全国のホームレスは20xx年にxx,xxx人であったのが……”、いやだめだめ、こんな表現は差別だと上司に言われてしまう、ホームレスではなくて”路上生活者”と書き直しておこう。 ……いやしかし、私は表現を改めたが、果たしてその内実は蔑視的なものではなくなったと言えるのだろうか?」 「君、心の声が漏れ出てしまっているよ、悪いが聞かせてもらった。」 「ソクラテス先生!」 「君は表現を改めたのだから、立派に君自身の意識を変えたと僕には見える。君はそれでは不満足だ