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本物らしく見えるように

写実的に描いた動物をどんどんデフォルメして、どこまで「その動物」に見えるかという実験をしたことがある。

・犬だとわかる限界
・猫だと認識できる特徴
・犬と猫の臨界

※ 人間が持っている「まとめる」能力
※ 肉眼の視覚と脳の情報処理の限界
※ 記憶が作り出す幻想と予想

そんなことが体感できる。おもしろい実験だった。

絵画は特定の時代に写真の役割を担っていた。その流れが主流だった頃、本物そっくりに描ける画家がとても重宝されていた。

写真を手軽に誰でも撮影できる現代社会では、本人そっくりの肖像画を依頼する人は稀。そのかわりにアイコンとして頻繁に使われる似顔絵やシンボルマークを作成する仕事が激増している。

さらに特徴的なパーツを組み合わせるだけで、自分のアイコンやアバターを作ることができるアプリがあちこちで普及している。

写真や映像加工の技術もどんどん進化し、理想的な自分像をつくりあげ、それを表の顔にすることも日常茶飯事になった。蛇足だけれども、実際に肉体に手を加えて理想を形にする分野も同時進行で発展している。

さてタイトルに戻る。

本物らしく見えるために絵やイラストを描く人が操る技術のなかで、最も大切なのが陰影。色と形も大事ではあるけれど、人間の瞳を通して本物っぽく見えるかの鍵を握っているのは光と影。

モノトーンで描いても対象物を変形しても色調を変えても、人間脳の限界値を超えない描き方であれば、なんとか〇〇だとわかる。

奥行きのないのっぺりした感じの手法もあるけれど「本物みたいに見えるか・見えないか」の大きな違いを生み出すのは、光や影を描くことで生まれる立体感。点や線または色味や濃淡で、人の脳内での情報変換を促し奥行きを感じることができる。

具体的には、明るい色を後からのせたり最初から塗り残すという方法で、光があたっている場所を明るく見えるようにする。影を描くときは全体のトーンより濃く深い色をのせて、周りの色彩が明るく見えるように特定の部分に重さを与える。

人生にも通じているな、と思う。

生きていることを実感しやすいのは、明るい感覚や重苦しい感情と平穏な日々のコントラスト。

色と形は
「なにをどうやるか」
光と影は
「なにをどう感じるか」

に変換できるかもしれない。こういう例え話も、言葉を操る人間ならではの楽しみのひとつ。

薄曇りの土曜日の朝。
本日も色・形・光・影と言葉を使って
ワタクシの人生を描きます。

素敵な週末をお過ごしください。

Grazie 🎶