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元気が取り柄の私は摂食障害のことを誰にも話せなかった

2012年春、私はトイレにいた。

膝まずき、便器に顔を埋めて、吐いたばかりのパンを見つめるのが日常だった。

外から聞こえてくるのは花見で賑わう人たちの声。

そうだ、私の20歳の誕生日、来週だった。

私が生まれたことを祝う日が近づいてくる。
吐く前に急いで束ねた髪をほどき、水で口を洗ってるうちにふと冷静な思考が戻ってきます。

「ねえ、こんな私の人生に意味あんの?」


◆パワフル女子、摂食障害になる

小学生で剣道、中学でバスケ、高校でテニスに没頭して『スポーツ万能』がアイデンティティだった私は、19歳で人生で1番ドン底を経験します。

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今日は、一見こんな元気モリモリ底なしハッピー星人の私にもドン底の時期があったんだよ、という話です。
(写真はプレゼントで炊飯器もらった時)

私が身体のことを気にし始めたのは18歳ごろ、思春期と大学受験で体重が増え出した頃のこと。

「ふっくらしたね〜」と言われることが増えてきたある日、男の子に「すげぇ脚!お前どうしたの?」と言われます。これが刺さった。すごく深く刺さった。言った本人はたぶんもう忘れてるけど、私は今でも覚えてる。

こうした言葉は「この子ならイジっても大丈夫」という周囲の憶測とは裏腹に、何度も何度も私の心に刺さっていきました。

小さなショックは本人も気付かないうちに積み重なり、大学に入ってから崩れます。それが私の猛烈なダイエットの始まりです。


◆極端な生活・思考

当時は極端な選択をしているとは思っていませんでした。自分ができる精一杯のことをしている感覚。

1日1食に減らしてみたり、嫌いなランニングを毎日1時間半してみたり、ファスティングを試してみたり。
それがだんだん友達とのご飯も断るようになり、食べに行ったとしても少食のフリして自分だけ食べる量を減らしたり。
少し食べれば罰として次のご飯抜いたり、ノルマを科して走る量を増やすようにもなりました。

今思えば栄養不足でむくんでいるだけだった身体を見ては、あの時言われて嫌だった言葉「すげぇ脚...」を自分自身に投げるようになっていました。

太ったと思われるのが怖かった。ずっと人目を気にしていました。

細くなることを優先するがあまり、必要な栄養を取らず、大学で部活をやっていた私はケガだらけ。
それでも「太るくらいなら多少病気になってもかまわない」と思っていました。生理も止まってた。

必死だったんです。必死なあまり視野が狭くなってた。腕と脚とお尻、嫌いな身体のパーツしか見えてなかった。自分の身体が嫌いで嫌いでしかたなかった。

しかも私は周囲の『元気でなんでもできる子』という期待を裏切りたくなくて弱さを見せられずにいました。

「努力で痩せてやる...!」「頑張れば痩せる!」「痩せないのは頑張りが足りないからだ!」と毎日2回乗る体重計の数字に一喜一憂する日々

自分の気持ちを無視して世間の目のために生きていたんです。

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(ダボダボの服で体型を隠すのに必死な時期)


◆痩せても幸せにはならなかった

ネットで情報を漁る日々。簡単にできるお金のかからない方法でも体重は5kg落ちました。

でも心も身体もボロボロでした。ボロボロになりながら痩せてもまだ満足できなかった。
痩せても痩せても「まだここも太いし、ここもたるんでるし」と『嫌いな部分探し』ばかりしていました。
朝から夜にかけて200g増えた体重を見てはがっくり肩を落とす日々。

でも誰かの「あれ?痩せたねえ!」って嬉しいじゃないですか。それを餌に生きていた。それだけが報いを感じる瞬間。

人の言葉を軸に生きていた。
自分で自分を褒めることはなかった。

反対に、ルールを作っては破ってを繰り返す自分に嫌気がさしてばかり。気合いが足りない、努力が足りない。やりたいこととやってることの溝は深まる一方でした。

その後は前述の通り、トイレと向かい合う日々。
心と身体の摩擦に耐えきれず、暴食に走っては嘔吐を繰り返し、栄養不足のまま運動をし、私の体質に合っていない『即効で足が痩せる運動』を繰り返し、食べた罪悪感で下剤を飲む日々です。

朝から夜にかけて増えた200gが胃の中に入った食べ物や水だったとも知らず、脂肪が1週間で1kg増えるのは人体の構造上ほぼ不可能なことも知らないまま、私は体重計の数字とにらめっこばっかりしてたんです。


◆問題は私の身体ではなくて「環境」と「考え方」だった

エステに数ヶ月通ってスッキリとさせた体型がやめて1ヶ月で戻り、36回払いの領収書だけが残った時に、私の中でプツンと何かが切れました。

「もうこんなんやめにしよう」

たくさんのお金と時間を無駄にし、健康を害してまで欲しがっていたあのモデルさんみたいな細い身体。

そもそも私はモデルになって稼ごうとしてる訳じゃないじゃんか。

問題は、私の身体ではなく私を傷つける言葉を投げつけてきた人たち。それから自分に骨格を無視した体型ばかり目指して自分の生まれ持った骨格を活かそうとしてこなかった考え方にありました。

世間の目ばかり気にして、自分の心が1番キラキラする方法を見つけようとしてこなかった。自分の人生なのに人の目ばかり気にして生きてた。

いくら身体が変わってもこの『環境』と『考え方』が変わらなかったら私は満足できないと気が付いた。


◆大変革

まず関わる人を変えました。

人の身体を卑下するようなコメントをするのはボディシェイミングといってハラスメントに当たります。私はそれを笑って受け流していたんです。痴漢されてそのまま笑って受け流すのと一緒。

立場上言い返せないこととか、雰囲気を壊さないように笑って流さないといけないこととかあるじゃないですか。それは立場や雰囲気を自分の尊厳よりも優先しているということ。

自分の尊厳を無視した関係構築に何の価値がある?

言い返して空気が悪くなっても、「嫌です」って相手に伝えて相手の気分を害しても、悪いのはハラスメントをした人です。やった方が絶対悪

それを知らなかった。
そういう環境からは逃げていい。
それを知らなかった。

私は言い返す勇気がなかったので、逃げることにしました。

それから自分の体質や骨格に合った正しい知識を学ぶために勉強したり、自分の生活圏から抜け出して視野を広げることにしました。
(※このプロセスはすごく大事でまた詳しく書きたいので、来週の記事でまとめます。)


◆私の経験を活かす番

今こうして私がパーソナルトレーナー&フィットネス教育者としてニュージーランドの第一線で働くことができているのも、このドン底期の経験と学びのおかげです。

エクササイズだけじゃなくて栄養や生活習慣もカバーした指導をするようになったのも、やり方だけじゃなくて解剖・行動心理・運動生理・姿勢について仕組みから学べる指導をするようになったのも、最新科学をヒントとして使って個人差にあった方法を見つける方針を立てたのも、

全部「私の人生に意味あんの?」と思って生きていたころの経験が軸になってる。

私があの時の経験が今の誰にもなれない私を作っています。

だから、今トンネルのど真ん中でお先真っ暗だと感じている人も、そこまでじゃないけど鏡見るとガックリしちゃう人も、一歩下がって自分の身体と向き合うきっかけを探してほしいと思います。

医者に相談するでもいいし
知識の豊富な専門家に頼るでもいいし
負の環境から身を引くでもいいし
専門的な勉強を始めるでもいいし
信頼できる人に自分の経験を話すでもいい。

体重計は捨てていい。

自分の気持ちをプラスにさせてくれない物・人は捨てていい。

私はこの経験をこうやって公に伝えるのにはすごく勇気が必要でした。元気モリモリ底なしハッピー星人な私のイメージでいたい。弱みを見せるのは怖いものです。

でも私の経験を人に話せるようになってやっと「摂食障害から抜け出したんだな」と感じます。

この感覚を世界の隅っこで泣いている過去の私みたいな人にも届けたい。そういう思いでこのnoteを書いています。


◆被害者も加害者も周りにいる

医者には行かずに診断を受けなくても摂食障害にはなります。英語ではdisordered eatingとも表記されることがあるんですが、これは「乱れた食事」という意味。

医療診断はくだっていないけど食事との関係が乱れている人はこの世の中にたくさんいます。すっごく多い。アジア圏でも西洋圏でも多い。

私が初めて公にした時、私の大学の友人だけでも3人が「実は私も今考えたら摂食障害だった」って彼女達の経験をシェアしてくれました。

ある研究では10代の女の子の94%のが一度はボディシェイミングを経験すると言っています。大人でも半数以上が経験があるとの報告がある。

私は環境のせいでこんなにも苦しんだのに、私に「すげぇ脚!」と矢をぶっ刺していったあの男の子は今でも揚々と人生を送っていることでしょう。こんにゃろめ、と思います。

そういうことをタブーとする教育の機会が少ないのも、無慈悲な矢から自分の身体や心の守り方を学ぶ機会がないのも、この世の中の問題点です。

だから私は私みたいな経験をする人が減るように教育・指導を続けるし、みなさんにも新しい気付きを与えられるように発信を続けたい。

あなたの周りにも、元気そうに見えてるけど実は苦しんでる人がいるはずです。大人の半数、子供の大多数です。大丈夫そうに見えるから大丈夫とは思わないでほしい。

誰にも気付かれないように叫んでいる人にも届くように、この内容を大切な人との世間話に織り込んでください。

そうした小さな優しさで救われる人がいるはずです

この記事の最初の3章で太字にしている文は、食事や身体との関係が歪んでいる可能性を示しています。普通だと思ってやってることが普通じゃないかも。あなたや、あなたの身の回りの人の気付きにつながりますように。


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