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漢字熟語には助詞を補う/作家の僕がやっている文章術154

漢字熟語が続く文章は読みにくく、分かりにくくなってしまいます。

<文例1>
英国女王の逝去に際し、各国首脳は弔意表明のため葬儀参列予定だが、同時に国際的外交の場として各国間に存在する問題の協議機会だと想定している。

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漢字熟語の連続する文章には、助詞を補うと読みやすくなります。

<文例2>
英国の女王の逝去に際し、各国の首脳は弔意を表明するために葬儀へ参列の予定だが、同時に国際的な外交の場として各国の間に存在する問題を協議する機会だと想定している。

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漢字熟語の連続する文章を読みにくいと感じるのは、言葉の関係性をひもときにくいからです。

文例2のように助詞を補うと、漢字熟語と漢字熟語との間の言葉の関係性がはっきりします。

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文例2の漢字熟語を、大和言葉に入れ替えてリライトします。

<文例3>
イギリスの女王が亡くなったことに臨み、それぞれの国の首脳はお悔やみを表すために、葬儀へ列すると決めているが、その折りは国際的な付き合いの場として、それぞれの国の間にある問題を話し合う機会でもあると考えている。

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いったん文章を書いたら、まず漢字熟語に助詞を補って、言葉と言葉の関係をはっきりとさせます。

言葉の関係が明らかになると、書きたかったこと、言いたかったことを著者は客観的に自覚できるようになります。

本当に言いたかったこと、伝えたかったこと、表現したかったことが自分で分かるようになるのです。

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助詞を補って、文章の内容を自覚したら、次は漢字熟語を大和言葉に言い変えられないかを考えます。

すべてを大和言葉に換える必要はありません。

適度に大和言葉と漢字熟語を織り交ぜながら、書き直しをします。

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<文例4>
身体障害者の偏見差別は軽減傾向にあり社会参加は多く実現されているが、知的障害者、精神障害者の社会的阻害解消は未だ発展途上にあると言わざるを得ない。

文例4にも、助詞を補ってみます。

<文例5>
身体障害者への偏見や差別は軽減する傾向にあり、社会への参加は多く実現されているが、知的障害者、精神障害者が社会から阻害されることへの解消は発展の途上にあると言わざるを得ない。

文例5の漢字熟語を適度に大和言葉にリライトします。

<文例6>
身体に障害を持つ人への偏見や差別は減ってきて、社会への参加は多く実現されているが、知的な障害がある人、精神の障害を持つ人が社会からはじき出されることがなくなるには、まだまだこれからだと言わざるを得ない。

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文例6の段階まで、著者が言いたいこと、伝えたいことの内容が整理されたら、構文(文章の成り立ち)を整理して、書き直します。

<文例7>
身体に障害を持つ人への偏見や差別は減ってきて、社会への参加は多く実現されている。しかし知的な障害がある人、精神に障害を持つ人が、はじき出されない社会になるのは、まだまだこれからだと言えるだろう。

難しい表現の文章しか書けないと悩む人は、少なくありません。

たいていは、漢文調といって、漢字熟語の連続で書いてしまうクセが原因です。

とくに国語の成績が良かった人や、文学作品が好きな人、創作を志す人に、漢文調の書きグセは多いように見受けられます。

書いている本人は、読んでもらえる、分かってもらえるつもりです。

しかし読者からしたら、意味を読み取りにくい文章になってしまっている傾向が、強いように思います。

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漢字熟語を多用した文章は、概念が包括的なのです。

イメージの輪郭は広い範囲を含んでいて、著者の考えていることを、漢字熟語はすべて言い表せているように感じてしまうのです。

<文例8>
相互的解決法 → 夫と妻が納得する結果

相互的解決法 → AとBが同時に承諾する方法

相互的解決法 → 上司と部下が仲良く働くメソッド 

相互的解決法 → 政府にも国民にも不満が出ない結論

相互的解決法 → 対立する国家の利害が妥協できる方法

文例8は、すべてに「相互的解決法」という漢字熟語があてはまるというサンプルです。

このように漢字熟語は包括的な言葉なのです。

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いったん文章を書き上げた後で、漢字熟語に助詞を補い、文意をひもときます。

文意がひもとけたら、漢字熟語を大和言葉に換えられないかを考えます。

漢字熟語と大和言葉をバランス良く整えると、読みやすく、分かりやすく、伝わりやすい文章になります。

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