動機を一貫させると物語は書きやすい/作家の僕がやっている文章術043
『ONE PIECE』のような、『ハリーポッター』のような、『鬼滅の刃』のような、壮大な物語を書きたい。
そう考える人が陥りやすいのは、いきなり壮大なストーリーを書こうとして、キャラクターをたくさん登場させて、エピソードをふんだんにちりばめて、書き進めるうちに収拾がつかなくなる事態です。
まず設定するべきことは、次の3つです。
1/主人公(メインキャラクター)の成長
2/主人公の動機(モチベーション)
3/主人公への試練
前回は『主人公の成長』についてお話ししました。
今回は『主人公の動機』についてお話します。
ONE PIECEのルフィーの動機は
「海賊王になりたい」
ハリーポッターのハリーの動機は
「魔法使いになりたい」やがて「両親を殺した魔法使いを倒したい」
鬼滅の刃の炭治郎の動機は
「鬼になってしまった妹を人間に戻したい」
壮大な物語でありながら、じつにシンプルな動機です。
このシンプルな動機を解決する(目的を果たす)ために、物語は次々と主人公に試練を与えて、主人公がそれを乗り越えることで、壮大なストーリーはつむぎ出され、そして続いてゆくのです。
この動機を基軸として、舞台は設定され、キャラクターが性格づけられ、ストーリーは繋がってゆきます。
物語の始まり(発端)もまたシンプルです。
ルフィーは、ゴムゴムの実を食べてゴム人間になってしまったが、それが幸いして山賊を倒し、海賊を志す。そして冒険を経て成長してゆく。
ハリーは両親を亡くし、親戚の一家に冷遇されて孤独な日々を過ごしていたところ、11歳の誕生日に魔法の世界から手紙が届き、ホグワーツ魔法魔術学校へ入学する。そして魔法使いとして成長してゆく。
炭治郎は町へ炭を売りに行った帰りに、自分の一家が人食い鬼に惨殺された光景に遭遇し、かろうじて息がある妹の禰豆子(ねずこ)を医者に運ぶために山を下りる。やがて鬼を斬る鬼滅隊の1人として成長してゆく。
ここでは1例として『鬼滅の刃』を追ってみましょう。
山を下る炭治郎の背中で、禰豆子は鬼の本性を現し、炭次郎を襲います。
そこへ冨岡義勇(とみおかぎゆう)が現れ、禰豆子を鬼滅しようと刃を抜きます。
この段階では、炭治郎の他には、禰豆子と義勇しか登場していません。
町の人々、帰り道の家にいた爺さん、そして殺された竈門一家。
これらはキャラクターではなく、背景として描かれています。
「さわり」としての登場です。
回収不能な伏線は張られていないのです。
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