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単文で書こう/作家の僕がやっている文章術001

みんながうっかりウソのある文章を書いている

<例文1>
彼は太くてたくましい手を私の肩に置いて「きれいになったね」と言った。

この例文は文法的にも正しいし、ウソなんかないように思われます。

しかし次のように書き直すと、どうでしょうか。

<例文2>
「きれいになったね」彼は私の肩に手を置いて言った。太くてたくましい手だった。

<例文1>のほうが、まとまりがあって<例文2>のほうが、とっちらかっているように感じます。

しかし<例文1>だと、この文章の主人公である女性は、はじめから彼の手が太くてたくましいと知っていたことになります。

時間は1秒も動いていません。時間軸がないのです。

「きれいになったね」とまず声をかけられて、彼女はハッとします。

肩に手を置くのはそれと同時か、声をかけられた一瞬の後のはずです。

彼女は視線を動かして、肩におかれた手を見ます。

そこではじめて、太くて、たくましい手だと気がつくはずです。

空間と時間が表現される文章

<例文2>は、時間軸と空間軸が描かれた文章だということになります。

時間軸とは(声をかけられてから、肩に手を置かれるまで)のことです。

空間軸とは(彼女の視線が自分の肩に移動して、太くてたくましい手だと気がつくまでの視線の距離)のことです。

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