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奇跡の鳥取県民

私は鳥取県生まれだ。ご存知の通り日本一人口の少ない県。取鳥と書かれる。島根県と混同される。鳥取県は右?左?暗い、地味。市は四つしかない。その中の米子市で生まれた。何年か前の町村合併で人口は14万人ほど。それでも進学や就職で毎年3000人が県外に出るらしい。
鳥取といえば鳥取砂丘。でもそれは鳥取市。
京都人が滋賀をディスると「びわ湖の水止めんで!」と言うのは定番だが、鳥取をバカにすると「甲子園にやってる鳥取砂丘の砂、止めるで!」というのは今考えました。

東西に長い鳥取県の米子市と鳥取市は遥かに遠い。だから米子市民と鳥取市民はあまり親和性というものがない。

そんな米子も著名人を結構輩出している。
ヒゲダンの藤原聡、K-1チャンピオンの武尊、直木賞作家の桜庭一樹、女優の山本舞香と松本若菜。カエルで有名になった東京オリンピック女子ボクシング金メダリストとか。
妻は神戸生まれ、娘は大阪生まれなのでテレビで鳥取が写ると、「ほれほれ、鳥取!」と思わず注意を喚起するのだが、「それがどうした」。
朝ドラの「ブギウギ」の作者は鳥取(倉吉市)出身やで、と言っても「ふ〜ん」と関心なし。
あんたら、何度も一緒に帰省したやろと叫んでも無駄である。いや、わかるよ。日本一の弱小県、何十年か後に人がいなくなって廃県になって島根県に統合されても痛くも痒くもないだろう(鳥取県民のみなさん、ごめんなさい、嘘です)。

鳥取県の人口は60万人を切っている。だいたい杉並区の人口と同じだ。あの広い鳥取県(といっても全国ワースト7位)に杉並区民が生活していると思えば駅前に人っこ一人いないのもうなずける。鳥取県以外で鳥取県民に遭遇するのはヤンバルクイナを見つけるのに等しい。
だが、その奇跡が起こったのだ。他ならぬこの私に。

それは忘れようとしても思い出せない遠い昔のことでした。
私は兵庫県の某所で30人くらいの集まりに出席していた。ある女性と話をしていると出身地の話になり、私が例の如く米子、全米が泣いたっていうあの米子ね。と言った。
看護師をしているというその女性は「あら、私、米子で一時期働いていたことがあるんですよ」
と言う。
それは奇遇だなあと思ったが、そんなこともあるだろう。するとその横にいた女性が「あの、私の父は米子出身なんです。あ、ごめんなさい。横から口出しして」と言ったのだ。
その女性が今の妻である。

義父は米子の高校を卒業してJRに採用されて神戸勤務になった。実父と同じ高校だった。調べてみると妻とは遠い親戚だった。

ちなみにこの話とは関係ないが、私の生家は文房具店兼模型店をやっていた。桜庭一樹(念のために女性、極真空手黒帯)さんのエッセイで「中高生の時は商店街にあるお店で原稿用紙を買い、隣の書店でマンガを立ち読みしていた」とあるのは生家である。

「ふ〜ん」

あ〜、もういいわ!

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