ドリアン長野

1961年生まれ。高校生の時にセックス.ピストルズを知って衝撃を受け、怠惰な生活から足…

ドリアン長野

1961年生まれ。高校生の時にセックス.ピストルズを知って衝撃を受け、怠惰な生活から足を洗う。50歳で父親になったパンクと読書と極真空手を偏愛する元リーマンパッカー。

最近の記事

ケアンズへの道⑨

フードコートを出て、少し歩くとマクドナルドの前にプレスリーの格好をした全身金色の人形が金色のギターを抱えている。 じっと見ていると、突然動いた。なんだ、人間か。観光客だろうか。ツーショット写真を撮っている人もいる。 彼らの後ろには昼間泳いだプールがあり、近くには観覧車がまばゆい光を放っている。 街を歩いていると、woolworthsを見つけた(ショッピングセンターとは別の)。 今度はバナナではなく、りんごが置いてあり、同様に「お買い物中、お子様に果物をどうぞ」と書いてある

    • ケアンズへの道⑧

      テレビをつけるとCNNでトランプとバイデン候補者討論会をやっていた。娘は興味があるらしく熱心に観ている。1時間休んで街に繰り出す。まずはwoolworths(そればっかりやん)。 スーパーは何度行っても楽しい。 同じフロアにあるCOLESという、これも大きなスーパーに行ってみる。「OLD GOLD」というチョコバーが安売りをしていたので妻のお土産として買ったのだが、日本に帰って食べてみたらこれが今まで食べたチョコの中で断トツに美味しかった。日本のチョコは私には甘すぎるのだけど

      • ケアンズへの道⑦

        ペットボトルの水は250円から600円くらい。 オーストラリアは乳製品が美味しいと聞いていたのでチューブ入りのヨーグルトを買う。 娘はスーパーを裸足で歩いている人に驚いていた。街中を裸足で歩いている人もちらほら見た。 「日本だったら靴を履いてないと貧しい人だって思われるけど、オーストラリア人は気にしないんだなあ」と娘。 woolworthsの近くにはアジア食品店があり、娘はケアンズにアジア人が多いことにも興味を示していた。 非白人の移民を禁じた白豪主義を経て、1960年

        • ケアンズへの道⑥

          オープンカフェのテーブルの上には「鳥に餌をやらないでください」と表示がある。金曜日の朝だけどお客さんがひっきりなしにやって来て、黒の半袖半パンのスタッフがキビキビと働いている。オーダーはテーブル上のQRコードから。 注文したアサイーボウルはシリアルと様々な果物が満載。 美味しい。 通りがかった女性スタッフに「This acai bowl is excellent!」と言うと、満面の笑顔を返してくれた。 娘にはハンバーガーとスムージーを注文。ちょうど日本にいる妻から「どう?」

        ケアンズへの道⑨

          子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から

          中1の娘はイギリス好きの英国王室好きである。英国の現代史を語る時にパンクは外すことはできない。過日NHKで英国現代史の番組をやっていた。番組が1970年代の高失業率、スタグフレーションについて言及したので、この不況が一因でセックスピストルズは誕生した。彼らはイギリスのアンセムと同様のタイトルで女王は人間じゃない、とこきおろした等と言うと親の仇(って親は自分なのだが)に対するように眉間にシワを寄せ、「わたし、その人たち嫌い」と吐き捨てるように言うのである(ちなみに娘が好きなのは

          子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から

          ケアンズへの道⑤

          会社を4時前に退社し、自宅で娘を引き取って難波からラピート(初めて)に乗り、列車内で妻の作ったタコライスを食べているうちに関空には40分で着いた。 ジェットスターのチェックインカウンターは長蛇の列。多分日本を満喫してオーストラリアに帰国する人が大半。五千円だけオーストラリアドルに換金する。 私は海外は20年振りである。たび慣れている人にとっては噴飯物だろうが、出国審査官にパスポートを渡して写真と本人を見比べてスタンプを押す、なんてことはない。機械にパスポートを入れて写真撮

          ケアンズへの道⑤

          ヤクザの幹部をやめて、うどん店をはじめました。

          「元暴五年条項」は佐賀県に初めて制定され、全国的に制定されたのは2011年7月のことです。これは暴力団を離脱しても五年間は暴力団関係者とみなされ、組員同様に銀行口座を開設すること、自分の名義で家を借りることができないというものです。当然ながら元組員の家族も不利益を被ります。 銀行口座を開設できないと就職ができません。私は暴力団員を擁護するつもりは毛頭ありませんが、「カタギ」になろうとする元暴力団員の社会復帰を妨げ、金を得るために再び悪に手を染めることになることは容易に想像で

          ヤクザの幹部をやめて、うどん店をはじめました。

          ケアンズへの道④

          「アバター」って3時間半もあるのか。ちょっとしたランナーなら32.195キロを走れるんじゃないの。プライムビデオで娘と一緒に観た。惑星のジャングルのなんと美しいことか。あのような景色をスカイレールから見れるのか、と胸を踊らせていると、娘は開始40分で「つまらない」とリタイヤ。 おい、なんだよ、「ターミネーター2」は面白いって最後まで観てたじゃないか。仕方なく一人で最後まで観た。ストーリーはいたってシンプルだ。ベトナム戦争や湾岸戦争を想起する人も多いだろう。 そういえば関係

          ケアンズへの道④

          ケアンズへの道③

          「豪雨ってオーストラリアに降る雨のことですよね」とは知人のT君の名言だが、ケアンズ観光と言えば熱帯雨林とキュランダ鉄道である。熱帯雨林は世界最古らしい。 調べてみたらアマゾンのジャングルより八百万年古いという。 現地のツアーは熱帯雨林を上空から眺めるスカイレールと観光列車のキュランダ鉄道がセットになっている。これに乗らないのは熱海で温泉に入らずに帰ってくるようなもんではないか。 さらにキュランダ鉄道はあの「世界の車窓から」というテレビ番組のオープニングを飾っていたという。

          ケアンズへの道③

          ケアンズへの道②

          ケアンズってオーストラリアの都市なのか。今の今まで知らなかった。私は結婚するまでアジアの国をフラフラとリーマンパッカーをしていたが、オーストラリアは眼中になかった。 娘は大喜びである。はっきり言って私はあまり乗り気ではなかった。大自然とかカンガルーとかコアラとかあまり興味ないしな〜。映画「クロコダイル・ダンディー」はよかったけど。ラストのニューヨークの地下鉄のシーンはよかったよな。何十年も前に見たのにまだ覚えているくらいだ。その映画がきっかけで主演の二人は結婚したんだ(のちに

          ケアンズへの道②

          ケアンズへの道①

          娘は小学生の頃から海外に連れて行けと連呼していた。いつだったか、先生が「海外に行ったことのある人?」と聞いたら、クラスのほとんどの児童が手を挙げたと言う。 ほとんどっていうのは普通少なくとも8割だろう。まさか4割じゃないだろうな。水増ししてんじゃねぇだろうな。この地域は割と富裕層が多い。だからか。 言っとくけど、うちは富裕層じゃないからな。たまたま中古マンションが安かったから買っただけだけど、それが15年で1.5倍に跳ね上がった。マンション自体は古いが、立地場所がよかったので

          ケアンズへの道①

          『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

          著者は貧困家庭で育ち、福岡の名門高校に進学したが同級生たちは親が医者や弁護士や社長ばかりで疎外感を感じていた。ある時パンクロックを知り、労働者階級の自分を誇りに思う人がいることに感銘を受け、バンドを組み、セックス.ピストルズのファンクラブ会長になる。 試験の答案用紙の裏に大杉栄のミニ論文を書いたところ(セックスピストルズ の「アナーキー.イン.ザ.UK」の影響だろう)、それを読んだ現国の教師に大学に行って本を読み、物を書け、と熱心に勧められる。その一方で他の教師からバイトを

          『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

          『大丈夫、私を生きる。』トリーチャー・コリンズ症候群 山川記代香

          著者はトリーチャー・コリンズ症候群という五万人に一人という難病を持って生まれました。 顔の変形だけでなく、この病気は死の危険と隣り合わせなので見た目をよくするためではなく、生きていくために何度も手術を受けてきました。 彼女は小さい頃から「視線の凶器」を受けてきただけではなく、心無い言葉をぶつけられてきました。 「おばけ」「怖い」など。あまつさえ、指差して笑う人もいました。 彼女は生まれつき耳が完全に形成されなかったので、8回の手術によって両耳を作りました。マスクをつけられる

          『大丈夫、私を生きる。』トリーチャー・コリンズ症候群 山川記代香

          『君とパパの片道列車』

          娘が今年、中学受験をしたので灘中の算数の過去問を見たことがありますが驚きました。 こんな難問を小学生が解くのか!という驚きでした。演算でも数式が延々と続き、かなりのスピードで解かなければならないのです。 ちなみに小学生の時にIQ185だと診断された中島らもは灘中に入学した時の成績が学年で8番目だったのですが、本人は俺の前に7人もいるのか、と思ったそうです。 本書の主人公は小学生三年生で入塾します。そして目指すなら、と灘中受験を決意するのですが、塾の先生に聞いてみると「灘コー

          『君とパパの片道列車』

          『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

          小五の娘が珍しくマンガではない本を読んでいる。家にある「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」だ。 娘は自分自身を内気で自分で陰キャ、という。友だちも少ないが、その娘にも親友がいる。親友は日本で生まれたが、お父さんはリバプール生まれのイギリス人でお母さんは日本人だ。 この本を読んで、共感するところがあり、よかったと言ったらしい。 著者は福岡の進学校に通ったが、周囲が医者や弁護士の子女ばかりで浮いていたという。通学定期代を捻出するためにスーパーでバイトしていたのを見つか

          『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

          USJとオッペンハイマーの恐怖とは

          私は爆音が苦手だ。いやパンクなんか大音量で聴かないと聴いた気がしないので正確に言うと、「爆音がするとわかっていて、その時が来るまでが恐怖」である。 いや爆音に限らず、びびらせることが起こるとわかっている時間が怖いのだ。 例えば、ユニバの「ジョーズ」。小船に乗ると運転人兼案内人が「皆様、ようこそ。私がこのツアーを案内させていただく鈴木です」とか言う。 しばらくすると「皆様、申し訳ございません。航路を間違えてしまいました」とか言う。 私は二回目だからわかっているのだ(妻や子ど

          USJとオッペンハイマーの恐怖とは