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だれかを”推す”人に読んで欲しい本

2022年も色んな本を読みましたが、中でも突出して感動を覚えた本があります。

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』です。

当書は、自分なりの視点で世界を捉え、自分なりの答えを探求するアート思考という考え方を説いた本です。

僕はアニソンファンを15年以上やってて、アニソンについて広く精通しているというわけではありませんが、それなりに深く、真っ当に、真剣にファンをやってきた自負はあります。

その経験をもって、僕はこの本を推し活のバイブルだと思っています。何かしら夢中になれる趣味がある方、普段推し活に勤しんでいる方には是非オススメしたいです。

特に趣味や推し活を娯楽だと捉えている方、それらを何となく楽しんでいる方…

今すぐに本屋に走ってください。

いきなり圧をかけてしまいましたが、別に著者からお金をもらっているわけではありません。心からオススメできるから言っているのです。

何故そこまでオススメできるのか、それがなるべく伝わるよう、僕が受け取った2つの教訓について、推し活に勤しむオタクの観点でお伝えします。是非最後までお付き合いください。

1. 自分の感想に自信を持っていい

 1-1. アニソン業界に求めていたこと

1つ目の教訓を説明するために、少しだけ僕が当書を読む前に思っていたことを少しお話させてください。

僕はアニソン業界に対し、楽曲制作者の露出を増やして欲しいと思っていました。

凄く大きな感動を覚える楽曲に出会えると、僕は「何故感動を覚えるのか」を掘り下げずにはいられません。何を意図して作ったのか、どういう工夫が施されているのか、神経を研ぎ澄ませて楽曲と対峙し、より多く、より深く、より明確に、楽曲の魅力を知ろうとします。

なので、僕は本当に好きな楽曲については魅力を詳細に説明することができます。

しかし、僕が感じている魅力を発信するのには正直抵抗がありました。何故なら、制作者が本当にそれを意図していたかわからないからです。

僕はバリバリの理系脳。誰がどう見ても正しいと言える証拠がないと、自信を持って断言できない癖のようなものがあります。これは推し活においても同様。むしろ熱量が高い分、推し活だからこそ強く意識してしまう状態でした。

だからこそ、僕の発信の根拠を示すために、楽曲制作者が想いや裏話なんかをもっと発信して欲しいと思っていました。

 1-2. 作品の価値の半分は客側が作る

このような想いを抱えていた僕に対し、当書は僕の考え・価値観を真正面から打ち砕くような、強烈な気付きを与えてくれました。

あなたが紡いだストーリーと、作者が意図していたこととは、まったく違ったかもしれません。しかしそれでも、「ああ、そうだったのか……。そこまでわからなかったなあ!」なんて思う必要はありません。
「作品とのやりとり」は、作者とあなたがフィフティー・フィフティーで作品をつくり上げる作業なのですから。
作者の「答え」と鑑賞者の「答え」、その2つが掛け合わさることで、「アートという植物」は無限に形を変えていくのです。

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考, 末永幸歩, P168, ダイヤモンド社

制作者は、あえて自分の込めた努力・工夫・想いを隠すことで、聴き手の想像の余地を残す。聴き手がそれぞれの観点で楽曲の魅力を読み取り、発信し、他者とシェアする。それぞれが読み取ったことを集結させることで、楽曲の価値は無限に広がっていく。

「ああそうか、だから制作者は皆多くを語らないのか」
「僕が求めていたことは、楽曲の可能性を狭めてしまうことだったのか」

自分の視野の狭さを大いに反省させられたと共に、

「僕のやってきたことは間違ってなかった!」
「自信を持って発信していいんだ!」

という救われた気分になりました。

自分の感想を自信を持って発信することが、アーティストや制作者のためにもなる。当書を通して、このことが本当の意味で腹落ちしたように思います。自分の価値観がガラッと変わるような、貴重な体験でした。

2. 推し活が自分の力になる

当書から学び取れることは、それだけではありません。趣味や推し活が自分の力になることも示してくれています。

先日僕が投稿した記事で、「尊い」「エモい」という言葉を使うのはもったいない、という話をしました。

この記事を投稿したのは、僕が推し活で抱いていた不満がきっかけでもあります。

それは、深く語り合える相手がいないこと。

容姿がいいから。声がいいから。そういう表面的な理由でファンになるのは、決して悪いことではありません。しかし、いつまでも表面上の魅力だけに留まっていては、楽しみも学びも一向に深く大きくなりません。

例えば、美女が出てくるようないわゆる萌えアニメにおいても、人気が出た作品に対して、「キャラが可愛いだけで中身がない!!」と批判的に捉える方もいます。実際そういう作品もあるかもしれません。

しかし、1クールに40本以上放送されています。大の大人が、自分の生活のために、本気で作っている作品が、たった1クールで40本以上も生まれているのです。そんな中で人気を勝ち取った作品が、表面的な浅い魅力しかないなんてことが、はたしてあり得るのでしょうか。

きっとそんなことはないはずです。人気が出ているということは、絶対に何か要因があるに違いありません。

一歩踏み込んだ先にある魅力を見つけてやろうという意識で作品と向き合うからこそ、楽しみも学びも深くなる。そして、それぞれの感想や考察を他人とシェアすることで新しい観点を知り、更に深く楽しみ、学び取れるようになる。

そういう風に活用するからこそ、趣味や推し活が本当に楽しく有意義なものになっていくではないでしょうか。

当書でも冒頭で同じような指摘をしています。

ビジネスだろうと学問だろうと人生だろうと、こうして「自分のものの見方」を持てる人こそが、結果を出したり、幸せを手にしたりしているのではないでしょうか?じっと動かない1枚の絵画を前にしてすら「自分なりの考え」をつくれない人が、激動する複雑な現実世界のなかで、果たしてなにかを生み出したりできるでしょうか?

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考, 末永幸歩, P7, ダイヤモンド社

ギクッとさせられるような、強烈に引きのある素晴らしい問いかけ。思わず心の中で「そうそう!!!それそれ!!!」と叫んでしまいました。

ベンジャミン・フランクリンの言葉に、次のようなものがあります。

経験というのは、莫大なお金に匹敵する価値がある。
ただ、ほとんどの人が、その経験を学びに使わない。

どんな経験にも学びはある。ましてや自分が好きでやっていることであれば、学びの宝庫です。

推し活は「浪費」「ムダ使い」というイメージを持たれている方もいるかと思いますが、それはその人の使い方次第。

当書の題材はアートですが、身の回りのもの全ての向き合い方まで改めさせられるような、大きな気付きのきっかけをくれます。そういうところも、当書の魅力だと思いました。

さいごに

物事への向き合い方を鋭い指摘で正し、美術作品を例に読みやすい語り口で主張の有効性を実感させてくれる。この本を推し活のバイブルと言ったのは、このような理由からです。

何事も好奇心の赴くままに頭をフル回転させて本気で楽しんでいれば、きっと自分の身にもなる。

ただでさえ不景気が続いている昨今、趣味にお金や時間を使うことに負い目や葛藤を覚えている人も多いと思います。そんな人を勇気づけてくれるような素晴らしい本だったと思います。

この本を手に取る人が一人でも増える手助けになれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!




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