樹木との交わり3

樹木との交わり|自然の愛撫

  散歩に行きました。
  小川が流れる森の小道です。

  夕暮れの薄暗い森は何かしら艶めかしく。
  桜は散ってしまい、新芽もすっかり青々と生い茂り
  葉っぱの重みで枝はたゆんでいます。
  樹木たちは風に揺られながら私を誘います。

  最初の右側の大きな桜の大木の幹は、
  美しい滑らかな肌で、
  しなやかな筋肉を見せびらかすように
  私の前に立ちはだかります。

  私はその美しい肌に欲情し、
  私はその桜の木に抱かれます。
  センシュアルな微細さは、
  私の肉体を通り抜けていきます。

  左側のヒマラヤスギは私が大好きな木です。
  垂れ下がり、ゆらゆら揺れる葉で、
  私を追い込み囲み捕まえて、一瞬の抱擁で通り過ぎます。

樹木との交わり1

  次々と現れる様々な男たちに貫かれ抱かれるように、
  私は通りすぎる樹木たちと一つになり、
  静かなエクスタシーを感じて流れていきます。

  川の中にアオサギが立っています。
  一心に水面を見つめ、狩りをしています。
  私は野生特有の激しい集中に感応し、
  抱かれるために自分から近づきます。

  風は私の身体を震わせて
  もっと大胆になるようにと囁きます。
  私はアオサギに対して全身を開きます。
  サギと一つになった瞬間に
  サギは素早い動きで身をかがめ、
  水の中の魚を捕まえます。

  私は捕まえられた魚です。
  あなたの体の中に入っていくことが無上の喜びです。
  あなたの中で小さく刻まれ溶かされ消えて、
  あなたと一つになります。

画像3

  
  サギは何かに気が付いたように、
  突然方向転換して歩き始めます。
  私はあなたによって踏みつけられる泥です。
  あなたの水かきで搔きまわされ、
  散り散りになり、自分がわからなくなる。

  そして、
  すれ違う人の気配に私は自分の中に戻ります。

  それでも、目が合う花は私にすべてを開き、
  そこから発する濃厚な香りが、
  もっと開いてもいいよ、と私に伝えます。

  私は目にするものすべてと交わることができます。
  自然はあまりにも誘惑的で、
  感じずにはいられないのです。

  そして、私はこの地球にどんどん開かれていくのです。

樹木との交わり3

(Photo: Red Wood National Park, Shasta, California ©MikaRin)



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