葉っぱ

葉っぱ|自然の愛撫

  散歩をしながらふと目が留まった
  逆光に光る二枚の葉っぱ

  ただの葉っぱ

  ふと思う

  私はこの葉っぱ一枚さえも
  創ることが出来ない

  周りの葉っぱを見る

  枯れていたり
  元気だったり
  萎れていたり
  欠けていたり

  ひとつひとつの微妙さを
  完全に見分けることもできない

  そんなことなどすっかり忘れて
  まるで世界を自分で作ったかのように
  鼻高々になってみたり
  あの人と自分を比べてみたり
  孤独だと泣いてみたり 

  そんな体験があるからこそ
  ある日
  完全に負け切ることが出来る

  大いなる存在によって
  全てが創られ
  自分もその一部であることに

  自然はもはや他者ではなく
  同じ御手に貫かれた
  ひとつの命

  雲ひとつない無限に思える夕闇
  遠くに見える優雅な富士の稜線
  風に乱舞する薄の群生
  たったひとつ浮かぶ遥かな一番星

  三百六十度

  私が創ったものではなく
  勝手に顕れたものでもない


  指先の爪さえも
  私は創ることが出来ない

  その事実に
  呆然とし

  世界の美しさに
  涙する

葉っぱ2

(Photo: ©MikaRin)



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