神野美伽 とそのスタッフ

歌手神野美伽がFC会報で書き溜めていたエッセイやインスタをこの場をお借りしてそぉーっと…

神野美伽 とそのスタッフ

歌手神野美伽がFC会報で書き溜めていたエッセイやインスタをこの場をお借りしてそぉーっと少しづつ綴っていきたいと思います。

最近の記事

教える

本條秀太郎さんに邦楽の歌の稽古をつけて頂いているとき、 「力抜いても、気は抜くな」 という口伝があると教わった。 口伝……で芸が成立していること自体、スゴイことである。 歌を歌うとき、一つの言葉とその次の言葉の間が音楽的に切れる、即ち、多少の間ができる。しかし、その間ができたとしても、気持ちまで切るものではありませんよという教えなのである。 長唄、常磐津、端唄、小唄などの邦楽だけではなく、演歌に於いてもそれは全く以て同じだと思う。 気持ちは切らずに…… と

    • 不思議な手紙

      友人のお母様が先日、九十歳で亡くなられた。 私は、そのお母様と面識はない。 しかし、亡くなられたあと、お母様が生前に残された俳句や短歌や詩やエッセイをまとめた冊子が送られてきた。 読み始めた私は、スグにその一面識もないお母様の文章の力に打ちのめされた。彼女は、作家でも俳人でもエッセイストでもなく、ただただ一人の女性である。 友人は笑った。 「母が亡くなり、遺影にする写真を選ぼうと実家に帰ったら、母の持ちもの何ひとつなかったわ。さすが、お母さん。お見事!九十年もの長い人生

      • 真の国際人

        由紀さおりさんと、アメリカのジャズグループ、ピンクマルティーニが作ったアルバムが世界20ヶ国以上でCD発売、配信され、全米ジャズ部門のチャートで一位を獲得したことが日本でも評判になっている。 なぜ!なぜ! どうして! なぜ、今! そう思われた方も少なくはないだろう。 実際、この本人も 「嬉しいけど、何だろなと不思議な気持ち。世界が狭くなった」と、仰っている。 とても、素直な言葉だと思う。 1969年発売の由紀さんのファーストアルバムのレコードが、アメリカ、ポートランドの古レ

        • 「本」

           読書は「心の食物である」…そうな。   食事を欠けば肉体を養えないのと同じように、思索をする人にとって読書以上の養分はない。  子供の頃、もっと言えば若い頃の私は、特別、本を読む人間ではなかった。  その私が、本好きになったキッカケは主人との出会いである。  二十代半ばを過ぎた頃だったろうか。  年齢のわりに知識も教養も身につけていない私を可哀そうに思ったか、はたまた、ただのお節介からか、「とにかく本を読みなさい」と、主人は言った。  そして、惚れた弱みで、私は素直に

          それでも生きる

          二月五日の夜、我が家に三匹目の犬がやって来た。 私のブログのトップページに貼りつけてある「いつでも…里親募集中」(*1) これは、一日に約1000頭の犬や猫がガス室でもがき苦しみながら殺処分されているという、ニッポンのペット事情の中、ボランティアの方々が全国の保健所から引き出し、或いは、劣悪な繁殖場から救命した犬猫たちを家族として迎えてくれる人の元へ命をつなぐサイトである。 このサイトをご覧いただけると分かるが、今、この瞬間も里親との出会いを待つ犬猫たちが約6000頭、い

          そのうち慣れるかな

          12月29日 みなさん こんにちは 本日、 15時30分から NHK BSで「演歌フェス」の放送があります。 4時間の長丁場放送です! 私は、 【ブギー】と【春夏秋冬屋形船】を歌います。 11月半ばにNHKホールで収録が終わっていますが、 番組全体のどの辺りに自分の歌がO.Aされるのか... 私も分かりません(笑) お家にいらっしゃる方、 是非、テレビをつけてみてくださいませね。 さて、 今日の写真は、 わが家の、 まったりハナコさんと、 ハナコさんの写真

          「ケツ」と「ヤツ」

          私たちの仕事の打合わせや、音楽資料のやり取りといったもののスタイルも、時代とともに恐ろしく変わってきて、今やそのほとんどが郵送でも宅配便でも電話でもなく、PCのメールで済むようになった。 私などは決して得意ではないPCは持ち歩かず、代わりにスマホより少々大きめの、それでも片手にラクに乗っかるタブレットで歌番組の音資料を受け取り、ダウンロードしてあるキーボードのアプリで歌のキーを出し、メールで送信されてきたインタビュー用アンケートを記入返信し、ある時は、撮影した写真のチェック

          「それを言っちゃあ、おしまいよ」

          今日、母の付添いで関東中央病院の整形外科へ行って来た。  足の痺れがひどくなっているために先日MRIを撮っていて、その結果と治療の方法などを聞くために私も同行したのだ。  予約の時間より更に一時間ほど待って診察室に通されたとき、医者はすでにパソコンに映し出された映像を見ながら「第二、第三頸椎の狭窄です。神経がこんな風に圧迫されています。その為に起こる足の痺れです」と、抑掦のない早口で言った。  医学知識に乏しい私が見ても分かる、要するに見たままのことを無表情で一気に説明

          「それを言っちゃあ、おしまいよ」

          月とスッポン鍋 

           昨年の暮れの話になるのですが、ある方に「京都に熊食べに行こ」と誘っていただき、「ク、ク、クマ!?」と驚いてしまったのですが、よくよく聞くと、冬ならではの贅沢料理「熊鍋」のことで、もっとよーく聞いてみると、お連れ下さろうとしているのは、以前から「一度行ってみたい」と思っていた比叡山の奥の院「比良山荘」さんのことでした。  そちらは、夏の鮎料理や、秋の松茸料理も名高く、その美味しい噂をたびたび耳にしていたのに、残念ながら熊鍋のことは知らなかった私。 「熊を食すそのためにわざわざ

          すべきことより… 

           十代の頃より長年仕事をしてきた中で、自分なりに覚えたというか身に付いていた自論が一つありました。 「やりたいことをやる為には、そうではないことをその何倍もやらなければならない」  あまりにザックリとした言い方しか出来なくて、語弊があってもいけないのですが要するに、「やりたいことだけをやって生きて行くことは出来ないね〜」ということです。  様々なことに於いて当てはまると思っていましたし、例を一つ挙げてみると、今日も私は「カラダのために」とか何とか言って、ストレッチやら体

          1984年デビューの三人

          12月19日 みなさん こんにちは 一昨日 BS朝日 「人生、歌がある」の 元日5時間スペシャル特番の収録でした 午前中からスタジオに入り 23時まで 私たち総勢51組の出演も 体力勝負で大変一日でありましたが スタッフやバンドの皆さんは もっともっと大変 本当にお疲れさまでした でも 一年の終わりを象徴する 華やかで 活気溢れる現場は とても幸せでした 収録終了後に 来年 デビュー40周年を迎える 同期の 長山洋子ちゃん 荻野目洋子ちゃん と一緒に写真を撮りまし

          1984年デビューの三人

          出逢うべくして

           七月にインスタグラムにもアップしたのですが、 初めて訪れた神宮前にあるメガネ屋さんでアナログ盤のビートルズが流れていて、それがとても素敵で「いいですね!アナログ盤」と言うと、 30代くらいの彼は 「嬉しいです。レコードは僕の私物なんです」 って、本当に嬉しそうに仰ったので、メガネそっちのけでスグに音楽の話に花が咲きました。  こう言った時の典型的な会話の入り口で、 「ジャンルは何が好き?」 「音楽、なんでも好きです。家には沢山レコードがありますよ」 「ヘェー、そうなんで

          リスペクト

          コロナ禍で二年中止になってしまった東京でのコンサート。 今年は開催することが出来ました。 コンサートの模様は、別頁でご紹介させて頂いています。 会報の〆切上、この原稿はコンサート事前に書いているのですが、スタジオでのリハーサルを済ませ、改めて今歌えることの喜びに浸っております。 この二年余り、コロナ禍によって私達の生活は大きく変わり、その中で私自身は入退院そしてリハビリを幾度か繰り返すことになり、このことは前号の会報で触れさせて頂きましたが、今こうしてそんな二年余りの出来

          石原慎太郎さんのご逝去にあたって

          二月に入ってすぐ、石原慎太郎さんがご逝去なさいました。 芥川賞をはじめ多くの文学賞を受賞し、亡くなられる直前までじつに数多く執筆を続けられた作家であり、長きに渡り国政、都政に従事して来られた政治家でもあります。 当然!? 一度もお目にかかったことのない方ではありますが、ご逝去のニュースを聞いたときには、何故か淋しい思いがありました。 物事の好き嫌い、良し悪しをハッキリ仰る性分とその物言いには常に賛否が分かれた方ではありましたが、どこかチャーミングで、口は悪くても育ちの良

          石原慎太郎さんのご逝去にあたって

          保護犬のロン君

          7月3日の夕方、都内のホールで仕事をしていたとき、友人の杉本彩さんからSOSのメールが入りました。 トリマーのボランティアさんたちが保健所を訪問して面倒を見ていた8才のオスのラブラドールの殺処分が、もう、時間の問題で執行されてしまうのだと。 私は、本番までまだ一時間ほどありましたので、何とかその犬の里親になってくれる人を探そうと友人、知人にメールを送信し電話をかけ続けました。  この写真は、そのとき彩ちゃんから送られてきた一枚です。 痩せてあばら骨が浮き上がり、

          キョーダイ

          昼下がりの皮膚科の待合室に、突如、勇ましい声が響いた。 「よいしょ、よいしょ。」 なんと幼稚園のお帽子をかぶったお兄ちゃんが、小さな妹を負ぶって階段を上がって来たのである。 私の隣りに空いた席を見つけて、「あっ、ここ。ここに座っててね。」と言って、お兄ちゃんは背中からドスンと妹を下ろすと、安心したのか自分は床の上に座り込んだ。 妹は黙ってお兄ちゃんを見つめ、しばらくすると、お兄ちゃんのお帽子に小さな手を伸ばし、脱がせてあげた。 この兄妹はどこからやって来たのかしら。 汗