見出し画像

吉原木工所 吉原敬司 (前編)

※以前やっていたウェブマガジンからの再掲載です

島根県浜田市三隅(みすみ)は島根県西部の日本海に面する場所。2005年には浜田市と合併となった。
三隅エリアの中に室谷(むろだに)に今回インタビューを伺った吉原木工所がある。

室谷は棚田でも非常に有名な場所でもあり、日本の棚田百選にも選ばれている。
かつては4,000枚の棚田が耕作されていたが、現在は約1,000枚が耕作されており、遠くに見える日本海と山の美しさを楽しむことができる。

自然あふれる中で吉原木工所は島根県の西部地域の石見(いわみ)エリアにはなかった「組子細工」(くみこざいく)を取り入れ、まるでアート作品のような建具などを制作している。
組子細工とは、細く挽き割った木を釘等を使わずに1本1本組みつけて様々な模様を描く建具の伝統技術なのだが、石見エリアにはなかった組子細工を取り入れたのはなぜだろう?
吉原木工所の吉原敬司さんにお話を伺った。

組子細工を始めたきっかけ

今回お話を伺ったのは、吉原木工所の吉原敬司(よしはらけいじ)さん。
生まれも育ちも島根県浜田市の室谷。

2012年に結成された島根県の出雲鍛造、石州和紙、白磁、吹きガラス、木工、組子細工の若手職人6人からなる「シマネRプロダクト」のメンバーの一人だ。
父親が木工職人で、父のすすめがありました。

この石見エリアにはそういう細工をする方がいらっしゃらなかったので、「人のできないことのできる職人になれ」ということで富山県に6年間修行に行きました。

どんなにきつくとも辞めるという選択をしなかった

初は技術もなく、なかなかお客様からの注文もないということからコンプレックスも多かった。
何度も「辞める」という選択はあったんです。
でも、それを選ぼうと思ったことは一度もなかった。

高校卒業後すぐに弟子入りして、師匠が厳格な方で、すごく厳しかった。技術も精神的にもすごく鍛えてくださって。
良い先輩にも巡り会えたし、すてきな人も沢山いたし、そういうことが沢山あって出会いと別れもあって、その中心にいつも「職人」というのがあった。
やっぱりそれを辞めてしまうというのは、信じてきた6年間を、技術を身につけるんだという全部否定してしまう気がして、続けるという選択しかそこにはなかったんです。

僕はある意味不器用なのかもしれない。

そして、修業先から島根県に戻ってきてからも色々なことがありました。
楽しいこともそうでないことも。
石見神楽を始めることもできたし、逆に売れないことできつい時間を感じることもあった。

挑戦するから転機が訪れる

父が言ったこのエリアにはそういう職人がいないから、組子細工の職人になるべく修行してきたのですが、逆をかえせば需要がなかったということだった。
そういう文化のない中で自分が習ってきたことを活かす方法、活路を見いだせなかった時もあった。
でも、父を慕ってくださるお客様に支えてきていただいてここまで来れました。
きつい時期は・・・今もですが・・・。だいたい10年くらいでしょうか。
ある意味、何も知らなかったから続けてこれたのかもしれません。
色々と知っていたら、逆に続けてこれなかったかもしれない。
続けることによって様々な機会を得ることができました。
自分の知らないもの、知らなかった世界を知るようになったのはすごい転機でした。
展示会なども出させていただくことになって、毎回本当はちょっと怖くて。

でも、した方がいいから無理してでもやっていたんです。そういったことを続けてきて、どんどんと転機が訪れた感じです。
最近では国際見本市とか出展していますが、なかなか同業者さんは少なくて。
違う場所で見た、感じた経験と出会った人との縁はまた転機なんだと思います。

出会いがあるからこそ

仕事で大事にしていることは「クオリティ」でしょうか。
製品としてつじつまの合わないものは出したくないっていうのがあるんです。
仕事は本当に続けていてよかった。これからも続けていくんでしょうね。
僕は運も本当に良かった。 実は日本の建築はもうダメだと思っていた時期もあって。
様式も変わって、だから組子が売れないんだとか。
でも、洋風の部屋に合うようなプロダクトを作ってある日見本市に出展したときに、ある設計士さんに出会ったんです。
広島や鹿児島の現場などがある方で、そこに建具一式納品させてもらいまして。 
それが一番の転機だったのかもしれません。
県外の現場とか設計士さんの意見とか、この現場に吉原木工所の製品を入れるんだという設計士さんの意気込みもあって、その方との出会いは非常に大きかった。

出会いの場が作れるように

生きている以上は誰かにお世話になっているし、僕も沢山の人にお世話になっているし、憧れる人もいるし、師匠にも鍛えてもらって。

これからも色々な人に出会って刺激を受けていくと思うのですが、自分も誰かのそういう人になれたら良いなと思っています。
僕ができることは、建具を作るということしかできないですから。
それを通して、出会いの場が作れたら良いなと思っています。

協力:吉原木工所
2014.4.19

建具職人 吉原敬司(Keiji Yoshihara)
吉原木工所
シマネRプロダクトメンバー。島根県出身

高校卒業後組子細工の技術を得るべく富山県に修行へ。
故郷の島根県浜田市に戻り、組子細工を石見エリアに取り入れ、クオリティの高い商品を作り続ける。
吉原木工所Web http://yoshiharawoodworks.com


未経験の中からスタートしてプロモーションコーディネートの会社をやっています。子育てや働く女性の日常や気づき、思ったことを書いています。チャレンジしていくためのサポートよろしくお願いいたします。