【患者SNS「ミライク」リリースインタビュー 】新薬開発(治験)DXに取り組むBuzzreachが、患者SNSをやる理由。|代表取締役CEO 猪川 崇輝
患者SNSミライクは、新薬開発を効率化するための治験・臨床研究プラットフォーム事業を展開する株式会社Buzzreachが開発を行っています。
治験や臨床研究に関する企業が、なぜ患者向けSNSを開発することになったのか?ミライク開発にかける想いとは?
株式会社Buzzreachの代表取締役CEOである、猪川にインタビューを行いました!
Buzzreachが患者SNSアプリの開発に取り組む理由とは?
藤澤 まずはじめに、なぜBuzzreachで患者SNSを作ることになったのでしょうか?
猪川 構想自体は、創業当初(2017年)からありました。むしろ前職(治験の被験者募集事業)のときから、イメージしていたサービスです。
せっかく治験に応募してくれた人でも、8~9割の人は条件が合わずに参加できません。
治療中の人が治験に参加するということは、現状に何らかの不満があるということです。
その人たちの声を、無駄にしたくないなと思いました。
藤澤 治験の被験者募集を通じて、ミライクを構想されたということでしょうか?
猪川 Buzzreachが作ってきた、治験を効率化できるプラットフォームを通じて考えた面もあります。
猪川 今までは、治験終了後の患者さんに対するフォローが何もなかったんですね。
治験に参加するということは、既存の治療法よりも何かしらの期待を持って参加をしてくれます。
しかし、治験の仕組み上、治験期間が終われば、元の治療法に戻っていく。
治験を通じて携わった患者さんを、引き続きサポートできるシステムがあれば良いなと考えていました。
藤澤 治験に参加した患者さん向けのサービスを考えていたのでしょうか?
猪川 そこだけではありません。
私は、新薬開発には実際の患者さんの声が反映されるべきだと考えています。
20年ほど前は、製薬企業が開発する新薬は高血圧や糖尿病、脂質異常症など比較的患者数の多いプライマリーの分野が優先されてきました。
ですが、最近では「患者さんが本当に必要としている薬」を作る方向にシフトしています。近年の新薬開発は、希少疾患やがんの新薬の開発が中心に進んでいます。
そんな中で患者SNSを通じて、患者さんの生の声を製薬企業に届けて新薬開発に活かすことができればと考えました。
治験に参加した患者さんだけではなく、治験に参加しようとしたけど条件が合わずに参加できなかった患者さんの声も拾える場所が欲しいと思いました。
藤澤 様々な形で治験に携わる中で、患者さんの声をもっと活かしたいと思われたんですね。
猪川 治験に関する仕事をしていて、知人から治験について聞かれることがあるんです。「知り合いががんになったんだけど、参加した方が良い治験ってある?」と。
自分なりにSMTから治験を紹介するんですが、条件が合わなくて参加できないこともある。そうなると、それ以上してあげられることがない…
でも、治験が全ての選択肢ではないですよね。
SNSを通じて同じ疾患の患者さんに経験した治療法のお話を共有してもらったり、相談してもらったりできたらと思ったのも、ミライク開発を進めた理由の1つです。
患者さんがミライクを使うメリット。製薬企業に届ける声とは?
藤澤 ミライクのWebサイトには”患者SNSミライクに参加いただいた患者さんやご家族・介護者の方の声を形にし、製薬企業に届け、研究開発や臨床研究に活かしていく”と記載していますが、患者さんから、メリットがイメージできないという声がありました。
患者さんの声が製薬企業に伝わると、どんなメリットがあるのでしょうか。
猪川 患者さんの声が製薬企業に伝わることには、長期的・中期的・短期的なメリットがあります。
長期的なメリットは、患者さんの声が次の新薬開発に活かされることです。
患者さんの悩みを解消できる新薬の開発に繋がる可能性があります。
ただし、新薬開発には10年以上かかるのが一般的なので、患者さんが直接メリットを受けるのはかなり先のことになってしまいます。
藤澤 目の前の患者さんを、すぐに助けてあげられる話ではないのですね。
猪川 そうですね。未来の医療へ繋げる第一歩です。中期的なメリットは、すでに実用化されている既存薬に対する患者さんが感じていることを製薬企業に届けることで、現状が改善される可能性があることです。
例えば、薬が大きくて飲みにくいとか。飲む回数が多いとか。剤形の変更や改善は、新薬開発ほどの時間をかけずに実現できることが多いです。
三上 実際に、患者さんの声を元に剤形が変更されることはあるのでしょうか?
猪川 嚥下困難な患者さんに向けて、OD錠や液剤を追加した事例があります。
三上 現実的に困っていることが、改善される可能性があるのは良いですね。
猪川 短期的なメリットはいくつかありますが、1つは治験のプロトコル(治験実施計画書)に患者さんの声を反映させられるということ。
今までは、製薬企業目線を中心にプロトコルが作られてきました。つまり、患者さんの目線が全く入っていない。
ここに患者さんの声が入ると、プロトコルの問題点が改善されることがあります。
三上 例えば、どんな改善が考えられますか?
猪川 例えば来院回数が多すぎるなど。
「治療のために病院に通うだけでも大変なのに、それと別に月に2回も病院に行くのは難しい」という患者さんからの声が挙がれば、治験薬の承認にフォーカスしてしまう製薬企業のプロトコルに、患者さんの実情が反映される可能性があります。
三上 そのような患者さん視点での声が反映されることで、治験に参加できなかった患者さんが、条件に合致するようになり参加できるかもしれませんね。
猪川 実際に患者さんの声が反映されたケースがあります。
服薬管理が難しい患者さん向けに、当社のスタディ・コンシェルジュ(※)が導入されました。服薬管理が簡易化され、治験に参加しやすくなった患者さんがおられました。
新しい患者SNSアプリ開発の困難。
藤澤 ゼロから患者SNSアプリを作るまでに、猪川さんが1番苦労したことはなんでしょうか?
猪川 経営目線の話なんですが…
ミライクは、別のもうひとつの会社がやっていてもおかしくないレベルのプロジェクトです。
それを1社でゼロから立ち上げて、本当に成功するのかという問題。
投資家としては、成功しやすいプロジェクトを進めて欲しいですよね。納得してもらうのは、それなりに大変でした。
しかし、Buzzreachが行ってきた治験のサポートと、ミライクの事業には連動性があります。
もはや、ミライクは機能の一つと言ってもおかしくない。
Buzzreachが掲げるミッション「テクノロジーの力で一人でも多くの患者さんに新たな選択肢を」実現のために、これまでの事業と連動するミライクが必要であることを投資家に説明しました。
もちろんSNSアプリを作り上げる、技術的な大変さもありました。
三上 SNSアプリを1から作るということだけでも大変かとは思います。そこに患者さんが絡む大変さはあったでしょうか。
猪川 もちろんあります。ミライクの構想段階で、30ほどの患者団体に話を伺いました。
協力してくれる患者団体もありましたが「企業に患者の声なんて言っても、どうせ反映されないでしょ」という反応も多かったです。
これまで患者さんの声が、取り上げられて来なかった現状が見えました。
藤澤 ここまでくるまでにも、苦労は多かったですよね。それでも事業化し、サービス正式開始まで進めてきた。猪川さんのミライクへの原動力は何でしょう?
猪川 一つは、治験のイメージを変えたい、というところ。杉本さんのインタビューでも話されていますが、治験は「怪しい」「人体実験」というイメージが依然としてあります。
今までと同じように「治験は怪しくありません!」と叫んでも、イメージは変わらないと思います。
だから、ミライクを通じて、治験の本質を理解してもらい、まだ未承認の段階でも、新たな治療の選択肢の一つになりうることを伝えていきたい。
治験に参加した患者さんの声をミライクで拾えれば、治験は患者さんのために行われていることがもっと伝わると思います。
もう一つは、冒頭でもお話しした何かの病気と宣告された患者さんやご家族に「治験以外でも何かしらの選択肢」を提供したい、と言う思いです。
ChatGPTなどの新たなテクノロジーで、一定量解決していくことも出てくるとは思いますが、やはり今の自分と似ているシチュエーションの方(先輩患者さんや先輩家族)からの情報は、また別視点で安心感が違うと思います。
少し例えが医療から離れますが、Amazonや食べログのようなサービスで、写真や説明文だけで判断するのではなく、経験者の口コミが参考になるのと同じ考え方です。
藤澤 いま存在している薬も、治験に参加してくれた患者さんのおかげで、世に出ていますもんね。
猪川 そう。それがミライクを通じて伝わってくれたらいいなと。
ミライクは患者さんが主役のコミュニティ。より良いサービス実現のために。
藤澤 ミライクは、患者参加型のサービスであり、参加してくれるみなさんの声が欠かせません。”こんな人と一緒に作り上げたい”という思いはありますか?
猪川 当然、第一は患者さんです。
ユーザー(患者さん)の声は、サービスにしっかり反映させていきたい。
あとは有識者や著名人の方など、より多くの方に声が届きやすい環境を持つ方に、アンバサダーとして患者さんの声を製薬企業や国に届けるサポートをしてもらう構想があります。
実際にレゲエバンドの「湘南乃風」が、「ムコ多糖症」という難病の患者救済活動をしています。
湘南乃風のサポートは、希少疾患であるムコ多糖症治療薬承認の追い風となりました。
藤澤 そうなんですね。まさに、患者さんの声が届くことで患者さんに新しい選択肢が生まれた実例ですね。
5年後、10年後。ミライクはどんなサービスになっていて欲しいですか?
猪川 患者さんが困ったり悩んだときに、頼れるアプリであって欲しいです。多くの患者さんの声や経験が蓄積されれば、治療の参考になるツールになると考えています。
藤澤 最後に、ミライクのユーザーさんや、note読者さんに向けてメッセージをお願いします!
猪川 ミライクは、日本初の疾患横断型コミュニティであり、これから成長や進化をしていく必要があるサービスです。
皆様から様々な意見を伺い、ともに作っていかなくてはならないものと考えていますので、ご協力いただければ幸いです。
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