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いつだって『当たり前』になってしまうのは『今』

人はどうして、無くしてからでないと気付けないのだろう。

どうして、それを持っている時、その最中にいる時には、それが当たり前だなんて愚かな勘違いを起こしてしまうのだろうか。

そんなこと、今までだっていろんな人が言っているし、ありふれた言葉のようにさえ思えていた。

それでも人は、それを身を持って思い知るまで、やっぱり何度でも忘れてしまう生き物なのかもしれない。



我が子がまだ小さい時、年配の方たちからよく『今が1番いい時やねぇ〜』などと言われることがあった。

頭ではわかっていた。子どもはすぐに大きくなり、私の手を離れていく。

今を大事にしよう。
こんなにも私を求めてくれる、この愛しい時間を大事にしなければ。

そう思っていても、ついつい日常の中では、“今”目の前にいる娘たちの姿がどうしても“当たり前”の光景になってしまうのだ。

そして、少し前の娘たちの写真や動画を見ると、今よりあまりにも幼いことに驚く。

今はもういない、今より幼かった頃の娘たちの姿を恋しく想う。

と同時に、目の前にいる娘たちを見て『大きくなったなぁ〜』なんてしみじみしている。

その『今』が、また少ししたら、もう二度と戻らないかけがえのない『過去』になることもわからずに。


我が子に、『ママ、抱っこ〜!』と、抱っこをせがまれた最後の日がいつだったか、覚えていますか?

外で手を繋いで歩いた最後の日を覚えていますか?

いつだって、私たちはそんな“当たり前”が突然終わることを想定していない。

聞き飽きるくらい、聞いたことがある事実なのに、やっぱり自分の身をもって経験するまで、本当には気付けないのだ。





自分の親が、いつまでも若くて元気だなんて思っていたわけではないけれど、そんなことはまだ先の話で、リアルには想像できていなかった。

いつまでも、自分の中で頼れる存在。

それが当たり前だったあの頃、初めてハッとなった出来事があった。

家族で遠出する時は、父の運転で行くのが当たり前で、自分たちはいつも『連れて行ってもらう側』だった。

子どもの頃からの感覚のまま、それが当然のこととしてきたけれど、その時初めて、父の運転が少し覚束なくなっていることに気が付いた。

そこから私が運転を変わり、それからは遠出をする際は運転は私の役目になった。



それから何年も時は流れ、父が病気で今の状態になるまでの間に、それまでの“当たり前”は、一つずつゆっくりとなくなっていった。

病気がわかっても、今自分の目の前にいる父の姿からは、これから色んなものがなくなっていくだなんて想像がつかなかった。


会話できるのが当たり前だった。

メールを送り合えるのが当たり前だった。

私の誕生日には毎年、車で一時間もかけて買いに行ったケーキを届けてくれた、それも当たり前のように、来年もまた持ってきてくれるんだと思ってしまっていた。


父と最後にやり取りしたLINEを久しぶりに見た。

日付けを見ると、今から5年前。
私が父にUSJのお土産でミニオンのパンツをあげたことへの、父からのお礼のLINEだった。

あのLINEがまさか、父との最後のLINEになるなんて、やっぱり想像ができなかった。



“当たり前”だったことがなくなって初めて、なくなったことに気付く。

そうやって、なくなったものに想いを馳せている今もまた、今あるものが“当たり前”だと思ってしまっているではないか。


今は寝たきりになってしまった父も、明日も明後日もずっと、同じように寝たきりで居てくれると思っていない?

毎日父の介護を頑張ってくれて、私たち娘や孫たちのためにも、元気に走り回ってくれている母のことも、明日も明後日もまだまだ元気でいてくれるに違いないと思っていない?

母とLINEしたり電話したり、一緒にご飯を食べて話して笑って、それができなくなる日のことなんて、全く想像ついてないんじゃない?



今、あるものが『当たり前』だなんて、甚だしい思い違いをしては絶対にダメだ。

何度同じ勘違いを繰り返せばわかるの?

今、改めて自分に言い聞かせる。




いま一度、そう強く思わせてくれたのは、2人の友人の言葉のおかげ。


私のnoteのこの2つの記事を、お母さんと一緒に読んで、自分が持っている幸せと向き合うきっかけになったと言ってくれた友人と。






この記事に書いた言葉をくれた友人。


『人は、 何か辛いことが起きたりしないと、自分が幸せだったってことに気付けなかったりする。
幸せじゃなくなってから、自分が持ってた幸せに気付くなんてもったいない。
だから私は、いつも今の幸せを噛み締めて生きたい。』



同じ時代を、同じ想いを分かちあって共に生きられる友人がいて、私は幸せだ。






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