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コロナ禍のUXリサーチ @ Service Design Day 2020

こんにちは、メルペイでUXリサーチャーをしているmihozonoです。

本日SDN Japan主催のService Design Day 2020に登壇させていただきました。これは毎年6月1日を「サービスデザインの日」として世界で一斉に祝うイベントで、世界各国のSDNコミュニティで2016年から続いています。

わたしのSDNコミュニティとの出会いは2017年、マドリードにて開催されたService Design Global Conferenceに参加したのがきっかけでした。当時、ビジネスやテック業界だけではなく、海外で行政やNPOなど社会課題解決にサービスデザインを活用した事例が数多く紹介されており、サービスデザインの可能性に驚いたのを覚えています。当時の感想は以下noteにまとめています。

それ以降、SDNのイベントやコミュニティには積極的に参加してきましたが、インハウスやエージェンシー、実務家やアカデミックと多様なバックグラウンドの方が混じり合っていていつも刺激をもらえるコミュニティだと感じています。そのため今回登壇のお話をいただいたのはとても嬉しく、そして背筋の伸びる思いでした。事務局の方からは「エスノグラフィの話をしてほしい」とお題をいただきましたので、コロナ禍のUXリサーチというタイトルでエスノグラフィックアプローチを中心にUXリサーチ事例をご紹介しました。

メルペイではProject / Weekly の2つのタイプのUXリサーチを実施しています。Projectは問いから手法までリサーチプランをフルオーダーで作るもので、Weeklyは毎週曜日を固定してお客さまをお呼びして、複数案件のユーザビリティテストやコンセプト評価など仮説検証型を中心に実施しているものです。

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どちらもこれまでオフラインを前提にリサーチを行ってきたので、このコロナ禍ではどのリサーチ手法も軒並み難しい状況になってしまいました。そこで私たちがまず着手したのは、Weeklyの完全在宅化です。

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こちらの技術面のナレッジは同僚がnoteにまとめてくれましたのでご参考ください。

一方、Projectの特にエスノグラフィックアプローチなリサーチ手法はまだまだこれからで、例えば訪問調査はデジタルデバイスを活用したカルチュラルプローブ形式で出来ないか?など、私たちも模索していくところです。

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Withコロナである現在は、とことんオンラインUXリサーチの可能性を限界を探索する期間なのではないか?と考えています。私は正直リサーチに関してはオフライン>オンラインだと思いこんでいたところがあったので、このような状況にならなければこれだけオンラインでチャレンジする機会はなかったかもしれません。そしてAfterコロナはオンライン・オフラインのハイブリッドで手法の幅が広がり適切な選択ができるのでは?と考えています。

また、リサーチで扱うトピックスにも変化があるように感じています。これはコロナの影響だけではなくメルペイの事業フェーズや組織の影響も大いにありますが、Withコロナの今、市況や事業計画の変更などある中でお客さまの新しい生活様式や価値観を捉えつつこれからのサービスの本質を見極めるようなリサーチが増えてきました。ここでリサーチの力で事業を推進できれば、Afterコロナはサービス全体からUIまで扱う範囲をより広げていけるのではないか?と思っています。

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イベント中たくさん質問をいただきましたが時間の関係ですべてはお答えできなかったので、こちらでいくつか回答していきます。

オンラインとオフラインの使い分けでいま感じているポイントは?

やはりオンラインでは表情や声のトーンや持ち物・服装など非言語情報の面ではオフラインには劣るなと思いますが、オンラインではお客さまがホームでリラックスしているのも感じますし、リサーチ中にご家族が登場したり、家の様子がチラリと映ったりとホームならではのハプニングや偶発的な発見が起こるんだなという気づきもありました。そこは今後もうまく活用してみたいです。

オンラインで非言語情報を補う工夫は?

例えばユーザビリティテストであれば、目線に合わせてマウスを動かしたいただくことや、思考発話をしていただくことをこれまで以上にお願いしています。

オンラインリサーチで対象者にIT面のサポートを行っている?

いまはGoogle Meetが使えることを条件にリクルーティングしており、さほどサポートは必要なく実施ができています。但し、イベントでも触れたとおりITツールに日頃から触れている方ばかりに偏り見誤ることを懸念しており、対象者を広げるためには今後サポートとセットで実施することが必要となりそうです。

リサーチ結果の分析、構造化はオンラインでどうやっているか?

簡易的なデブリーフィングはJamboardを使ってみたり、がっつりした質的分析はDovetail、結果の構造化と共有はFigmaで行ったりとあれこれツールを使ってトライ中です。

エスノグラフィー調査で得た知見はどうやってサービスに適用するか?

現在はサービスの機能などに直接活かされるというよりも、戦略の方向性や次のリサーチの問いにつながるような形が多いです。ここは自分自身大学院で研究したいテーマでもあるので、実践しながら研究していきたいと思っています。

オンラインで地方の方にもお話が聞けるようになって新しくわかったことは?

やはり生活圏が違えば移動方法も行動範囲も行く店も全然違うというのが大きな気づきでした。これまでも地方の調査をしたいと思いつつ、なかなか着手できていなかったで、この制約下でやらざるを得ない状況になったのは結果として良かったです。

UXリサーチャーの組織的な位置づけの変化は?

これはコロナの影響だけではなくこれまでのメルペイの組織風土も大きいですが、新規事業立ち上げ期やグループ全体での横断的な動きなどにお声がけいただく機会が増えました。

人類学とビジネスエスノグラフィーの接点は?

これは絶賛勉強中&これから研究していくことなので、こちらもnoteやイベントなどでお話ししていければと思っています。

それでは皆さん、Happy Service Design Day!

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