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恋ノチカラ

恋をしている。
人生8年目の、次女の話だ。

お互いに気持ちを確かめあった両想い。とはいえ、双方には2番手、3番手も控えている模様。きっと、光の速さで過ぎる恋の練習。軽い気持ちで見守っていた。
――少し前までは。

2学期の終業式でのこと。
「がんばったこと・変わったこと」を尋ねた先生に、次女はこう答えたという。
「体育が嫌じゃなくなった。Aくんと外でたくさん遊ぶうちにできることが増えて、やってみようって思えるようになった気がする」。

そうなのだ。
校庭での鬼ごっこより、教室でのおしゃべり。
できないことへの挑戦より、今のままの安心。
ちょっと上手いきそうもない運動があると自主申告で体育を見学にしていたあの子が、「どうやったら上手になるか、Aくんに聞いてみよう」と言うようになった。

つい数日前、迎えに行った放課後の校庭で「ママ、見てて!」と次女が披露してくれたのは、どれだけおだてても1ミリたりとも向き合わなかった雲梯だった。背の順の先頭争い常連の彼女が、体の隅々まで伸ばしてようやく届く高さの横棒をギュッと掴んで、2本目、3本目と進んでいく。少し離れてボールを蹴り始めたAくんの気配を感じながら。

「人間が変わる方法」について話していたのは、確か経営コンサルタントの大前研一氏だった。曰く「時間配分を変える、住む場所を変える、付き合う人を変える」の3つしかないという。

次女は恋で、付き合う人が変わり、時間配分も変わった。
マメができて真っ赤になった手で、新しい自分への扉を開いている。
これはもう、練習ではない。「めちゃめちゃいい恋」だ。

私はどうだったかな。
できない自分も知らない自分も見せたくなくて、でも近づきたくて。好きな人の好きなモノを、付け焼刃のごとく裏側で勉強しまくってたな。それでも知ったかぶりしかできなくて、ちょっと後ろめたかったな。私も「知りたいから教えて」って、素直に言えばよかったな。

20240109

▼ Essay Magazine「手帳の隣でコーヒーを」
手帳とともに40代の「じぶん実験」を楽しむライター・矢島美穂が綴るエッセイです。日々の記録や記憶が詰まった手帳のひとかけらを、コーヒー片手にじっくり眺めてみます。

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