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Essay Magazine「手帳の隣でコーヒーを」

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手帳とともに40代の「じぶん実験」を楽しむライター・矢島美穂によるエッセイマガジン。 日々の記録や記憶が詰まった手帳のひとかけらを、コーヒー片手にじっくり眺めてみます。 原稿用… もっと読む
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「好き」の定点観測

「お誕生日プレゼントは、当日もらえなくてもいいの?  だったら、今年は筑波山に上りたい!」 2月生まれの次女が、間もなく8歳になる。 数年前から、誕生日の前になると自分の希望をはっきり伝えてくるようになった。 近所のカフェのカウンターに張り付いて仕込みの様子を観察するのが日課だった5歳の誕生日は「スタッフさんが使っているのと同じレモン搾り器」。尖ったお椀を伏せたような突起に半分に切った果実の断面を押し付けて搾る、アナログなあれのこと。結局、1回搾っただけだった。お姉さんの

30秒後に叶う願い事

せっかくなら。 ――ついそう思ってしまう。 払ったお金の元を取りたい。 めったにない機会だから、無駄にしたくない。 初詣もその一つ。 1年のはじめという一瞬。 めったに行かない神社仏閣にわざわざ足を運んで。 身銭を切ってお賽銭を捧げたら、ここぞとばかりに拝み倒す。 * 今年も家族で、近所の大きな神社に初詣に行った。 1カ月前、同じ場所で次女の七五三のお参りをした。神社からの頂きものの中に絵馬があったことに気づいたのは帰宅した後。初詣でついでに奉納することにした。 自

恋ノチカラ

恋をしている。 人生8年目の、次女の話だ。 お互いに気持ちを確かめあった両想い。とはいえ、双方には2番手、3番手も控えている模様。きっと、光の速さで過ぎる恋の練習。軽い気持ちで見守っていた。 ――少し前までは。 2学期の終業式でのこと。 「がんばったこと・変わったこと」を尋ねた先生に、次女はこう答えたという。 「体育が嫌じゃなくなった。Aくんと外でたくさん遊ぶうちにできることが増えて、やってみようって思えるようになった気がする」。 そうなのだ。 校庭での鬼ごっこより、教

「これしかできない」の中にある自由

水が出ない。 エレベーターも動かない。 新年早々、マンションの貯水槽清掃とエレベーター点検。 寒風吹きすさぶ中作業してくださるみなさん、おつかれさまです。 感謝の気持ちはあれど、実際はなかなかに不便。冬休み中の子どもと一緒におでかけしようにも、ど真ん中の時間帯に長女の冬期講習。はて、どうしたものか。 家で上手に過ごせない時の最近の避難先は、もっぱらファミレスだ。安い。テーブルが広い。一人でも家族でも過ごしやすい。でも今回は子連れ6時間の長丁場。いくら分別をそれなりに身に

はじめに|手帳の隣でコーヒーを

1.2cmが、4cmに。 332gが、655gに。 ――手帳の話です。 厚みも重さも、たっぷり育った私の手帳。 * 手帳を書き始めて丸2年経ちました。 もう2年? まだ2年? いずれにしても、730回手帳を開いたと考えると、そこそこがんばったとおもえます。少なくとも、私にとっては難易度の高い数字でした。 手帳を書き続けたことで、人の輪が広がり、なにより、行きたい方向に遠く速く行けるようになりました。ライターとしてのチャンスにも、様々な形で恵まれつつあります。 そうや