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30秒後に叶う願い事

せっかくなら。
――ついそう思ってしまう。

払ったお金の元を取りたい。
めったにない機会だから、無駄にしたくない。

初詣もその一つ。
1年のはじめという一瞬。
めったに行かない神社仏閣にわざわざ足を運んで。
身銭を切ってお賽銭を捧げたら、ここぞとばかりに拝み倒す。

今年も家族で、近所の大きな神社に初詣に行った。
1カ月前、同じ場所で次女の七五三のお参りをした。神社からの頂きものの中に絵馬があったことに気づいたのは帰宅した後。初詣でついでに奉納することにした。

自宅から神社までは2キロほど。普段の静かな参道とは打って変わって、神頼みのために連なる人の波を前に「早くしないと混んじゃうね」と足早に進む。小柄な次女は自分の準備が不十分で出発が遅れてしまったと思ったようで、「混んじゃったね、ごめんね」と健気に足並みを揃えてくる(顔色伺わせて、こちらがごめん)。

いざ到着すると人の流れは想像以上にスムーズだった。「急がなくてもよかったね、ごめんごめん」と声をかけながら手を合わせた後は、絵馬の時間。

「ママ、すきなことかいていいの?くだらないことでも?」
「もちろん!」

すると「ぜったいみないでね!」とこそこそ願い事をしたため始めた。

とっても頑なに隠すものだから、気になる。
「○○くんとの恋愛成就?」
「ほしいもののことかな」
みんなでしつこく聞い続けて、ようやく見せてくれた。

そこには、

早く水がのめますように

え、かわいい!切実!

「いいね!命の叫び!」
「隠すことなかったのに!」
「だって、くだらないかなっておもって」
「思わないよ!今から叶えに行こう!」

――すぐ隣の自動販売機の前で、あっという間に願いを叶える姿を見届けた。大笑いしながら。

せっかくなら大きな願い事を、ってなんだろう。
30秒後に叶う願い事は、こんなに幸せ。それを連ねて「うれしいね!」って顔を見合わせながら歩くのも、なかなかよさそうだ。

20240103

▼ Essay Magazine「手帳の隣でコーヒーを」
手帳とともに40代の「じぶん実験」を楽しむライター・矢島美穂が綴るエッセイです。日々の記録や記憶が詰まった手帳のひとかけらを、コーヒー片手にじっくり眺めてみます。

原稿用紙2枚程度の、ささやかな文章を不定期に更新中です。
お読みいただく時は、ぜひあなたの隣にも一杯のコーヒーを。カップの底が見えるころ、あなたの景色が少しだけ新しいものになりますように。


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