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女性性と男性性の対話と統合

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女性性と男性性の対話と統合をお話にしたものです
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2022年1月の記事一覧

地を這う虫になった女の子の話

地を這う虫になった女の子の話

賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子はいつのまにか街外れまで歩いてきていました。黄金の穂が揺れる畑が広がっています。街の喧噪がかすかに聞こえてきます。騒音に聞こえていたこれらの音も先ほどの女の人のように心の重荷を抱えながら生きている人たちが生み出す音なのです。女の子は足下をじっと見つめます。

足下をうねりながらミミズが横切ろうとしていました。

「虫たちから見たら人間の営みはどんな風に見えるのか

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知らない女の人の中に入り込んだ女の子の話

知らない女の人の中に入り込んだ女の子の話

賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子は森の外へ旅立ちました。

風は街へ向かう女の子に質問をします。「どうして街へいくんだね?」

「私がやったことがないことをやるため、私が感じたことがないものを感じるため、私が考えたことがないことを考えるため」

風はため息をつきました。

「あなたの幸運を祈ろう」

「ありがとう」

東の街へ着いた女の子は大通りをずんずん歩いていきます。普段過ごしている森とは

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呪われた男の子に理不尽な災難が降りかかる話

呪われた男の子に理不尽な災難が降りかかる話

勇気があって純粋な男の子はあともう少しで癒しの泉がある山の麓へ到着するところまで旅をしてきました。
いろんな人が旅を助けてくれました。

年若い女が船乗りの恋人の無事を祈ってロバに乗せてくれました。

年老いたロバは男の子の体重でよろめきました。

「僕を降ろしてください。ロバがつぶれてしまいます」

「大丈夫です。見かけよりもこの子は強いのです」

年若い女はよろめくロバから自分の荷物を下ろして

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癒しの泉を求める男の子の話

癒しの泉を求める男の子の話

勇気があって純粋な男の子は病を治すための旅を始めました。かつての颯爽とした様子は見る影もありません。身体中が出来物に覆われ、しゃがれ声で、足を引きずりながら歩きます。

東の果ての森の賢い人に会えないかと森の端の村で1ヶ月粘りましたが無駄でした。あの日会えたのは本当に奇跡だったのです。

男の子は旅費にするために、あの日、森の賢い人に貰った薬を村の人に売りました。森の賢い人の評判はすごいもので、薬

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知らないことを知るために旅立つ女の子の話

知らないことを知るために旅立つ女の子の話

賢くて繊細でものがわかりすぎる女の子はなんだか不機嫌です。湧水のそばに行って地球の記憶を眺めましたがいつものようにワクワクしません。

大地が女の子に「どうしたの?」と尋ねます。

「わからないけど腹が立つの。私ってそんなに森の賢い人にしか見えないの? 単なる親切な女の子に見えないの?」

大地は言います。「そんなに単なる女の子に見られたいの?」

「私をよく知るとみんな人間扱いしなくなる。でも出

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理不尽な災難に苦しめられる男の子の話

理不尽な災難に苦しめられる男の子の話

勇気があって純粋な男の子はあっけに取られ、それから慌てて立ち上がって女の子を追いかけました。ですが、森が女の子を隠したのかのように姿は見えません。女の子は走っていた訳でもないのに不思議なことです。

男の子は日が暮れるまで女の子を探しまわりました。うっそうとした森の中では月光も届かず足元もよく見えなくなったので男の子は肩を落として森を出ていきました。

森の入り口の村に着くと、男の子は途方に暮れま

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